製造者の責任!?販売した商品・製品に欠陥があった場合の製造物責任

 “茶のしずく石鹸”の小麦アレルギー問題や、カネボウ化粧品の白斑問題など、美容業界では、これまでも社会問題化するほどの大規模な消費者被害を発生させた例があります。
 このような事案で特に取り上げられのが「製造者の責任」であり、大企業に限らず、化粧品・健康食品・美容機器を販売している事業者様すべてに関係する問題です。
 前回の記事では、販売した商品や製品に欠陥があった場合に、直接の売主と買主の責任はどう考えるかについて説明しました。今回は、販売した商品や製品に欠陥があった場合に、エンドユーザーである消費者に対して製造側がどのような責任を問われるかについて解説していきます。

1 製造物責任とは

 製造物責任法(PL法)という法律の名称は、ニュースなどで聞いたことがあるでしょう。
 通常、商品や製品は、メーカーから卸売業者を経て小売に卸され、それがエンドユーザーである消費者に販売されます。製造物責任法では、商品や製品の欠陥により消費者が損害を被った場合、消費者がメーカーに対して、損害賠償責任を直接追求できると定めています。この場合、メーカー側に過失があるか否かは関係ありません。

 例えば、購入したテレビが欠陥により発火し、家が燃えて購入者がケガをした場合を考えてみましょう。この場合、損害を被った購入者は、購入した店舗である販売業者だけでなく、テレビメーカーにも責任追及することが可能ですし、メーカーは賠償金を支払う等の義務を負うことがあります。これが、いわゆる「製造物責任」です。

2 責任を負う主体

 では、製造物責任法で「責任を負う」ことになるのは誰でしょうか。

2-1 製造業者・加工業者

 製造物責任法というくらいですから、製造業者や加工業者は責任を負うことになります。化粧品、健康食品や美容機器などの製造元の会社がこれに当たります。

2-2 輸入業者

 製造物責任法では、輸入業者も責任を負うこととされています。
 「輸入業者は、自ら商品や製品を製造していないのだから製造物責任法とは関係ない」と誤解している事業者の方も少なくありません。
 しかし、製造物責任法は、「被害者が海外の製造業者に直接責任を問うことは困難であるから、とりあえず輸入業者に責任を負わせる」と考えます。つまり、外国から部材を輸入していれば、自分で製造や加工をしていない企業であっても、消費者から責任追及されるリスクを負う場合があるということになります。

2-3 販売者、販売元

 製造業者としての「製造元○○」というような肩書をつけずに、会社名や商標などを商品に表示した場合でも、それによって「製造業者と誤認」されるおそれがある状況ならば製造物責任を負うリスクがあります。
 「誤認」される状況にあるかどうかを決める明確な基準はなく、様々な事情を総合して、消費者の立場から見て製造業者と勘違いされるかどうかという視点で判断されます。

 化粧品や健康食品は、プライベートブランド(PB)製品やOEM製品で作られることが多く、「製造元」の記載の他に、「販売元」として自社名を記載したり、自社のブランドやロゴなどを商品に表示したりすることも往々にしてあるでしょう。
 このような表示をする場合には、「製造業者と誤認」されて責任を負う可能性があるので、注意が必要です。

 過去には、フィットネスクラブなどに設置される日焼けマシンについて、機器本体と取扱説明書の表紙に販売者A社の商標がつけられ、取扱説明書の裏面に「発売元A社」として販売者の表示がなされていた事案で、「A社=製造者」と誤認されるおそれがあると判断し、責任を負うとされた裁判例もあります。
 実はこの事案では、取扱説明書の裏面に、「製造元B社」として本当の製造者B社の会社名も記載されていました。しかし、日焼けマシンを使用する人が取扱説明書の裏面を見るとは限らないため、「本当の製造者B社の記載があるからといって、A社が製造業者であると誤認されるおそれがないとはいえない」という判断もされています。

3 商品・製品に欠陥がある場合とは

 次に、「商品・製品に欠陥がある場合」の内容を詳しく見ていきましょう。ここには、化粧品や健康食品に特有の問題があります。

 

3-1 欠陥とはどのような場合か

 製造物責任を負う場合の欠陥とは、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」とされています。
 つまり、欠陥に該当するかどうかは、製造物の特性、通常使用される方法などを考慮したうえで、「安全性」に着目して判断されるということです。
 健康食品の例でいえば、食品加工の過程で異物が混入し、そのせいで喉にケガをした場合や、有害な細菌が発生して食中毒を起こしたという場合には、安全性を欠いているといえるでしょう。

3-2 化粧品や健康食品の場合の注意点

 化粧品や健康食品を扱う際、忘れてはならないのは、その商品に有害な物質が含まれていなくても、摂取方法や用量などによっては人体に影響が出るという場合です。
 具体例として、アレルギーを引き起こす成分が含まれている化粧品や健康食品をイメージすると分かりやすいでしょう。アレルギー反応がない人は使用しても問題ありませんが、アレルギー反応がある人には命にも関わりかねない重大な事態を引き起こしかねません。
 このような事案では、アレルゲンとなる成分が含まれていると明示されていたかどうかや、アレルギーを引き起こす危険性についての警告が十分だったかどうかという、表示や注意喚起の程度なども、「欠陥」があったかどうかの判断に影響を及ぼします。

4 まとめ

 美容業界で販売されるものは、化粧品や健康食品のように直接体に取り入れたり、美容機器のように人間の身体に触れたりするものが多いため、残念ながら、消費者に重大な結果を与える商品・製品を販売してしまうことも十分あり得えます。
 このような事態を生じさせないためにも、販売前の製品の自主検査はもちろんのこと、消費者に対しては説明書きなどで情報提供をすることが、これまで以上に求められてきます。

 また、仮に問題が起きた場合にそれを放置すると、その企業はもちろん、その製品ジャンルそのものの信用を失墜させ、大きなダメージを与えることにもなりかねません。問題が発生した後は、速やかな情報公開や、商品・製品の自主回収などの対応が必要なことを認識しておきましょう。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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