化粧品・健康食品を定期購入で契約させるときの注意点

 化粧品や健康食品においてネット通販を行っている事業者様が注意すべき法律である「特定商取引法」ですが、定期購入の手法を導入する際には特に規制がされています。

 定期購入は、ネット通販の事業者側にとっては安定した収益が計算できる手法である反面、購入者側からすると、「お試し購入だと思って、申し込んだら定期購入だった。」「複数回購入が条件とは知らなかった。」というような消費者トラブルとなってしまうことがあります。
 このような消費者トラブルに対応するため、平成28年に特定商取引法が改正されて、定期購入の申込みページには必ず表示しなくてはならないルールが定められました。

 今回は、定期購入のネット通販を行う事業者様に、特定商取引法で定められた定期購入の申込みページに記載すべき内容を解説していきます。

1 特定商取引法の説明

 まずは、定期購入のネット通販における消費者トラブルの実態とそれに対応するため改正された特定商取引法のポイントについてみていきます。

1-1 定期購入における消費者トラブルの増加

 消費者庁の発表によれば、健康食品や化粧品等のECサイトで「1回目90%OFF」であったり「初回実質0円(送料無料)」など通常価格より低価格で購入できる広告を見た消費者が、数か月間の定期購入が条件となっていることは知らなかったという相談が増加しているとのことです。

化粧品・健康食品を定期購入で契約させるときの注意点
(引用:消費者庁「平成28年改正特定商取引法について」)

 上記の表によれば、2016年より相談件数が大幅に増加していることがわかります。また相談の内容となっている商品も健康食品が9678件(73%)と圧倒的に多く、次いで化粧品が2173件(17%)となっています。
 なお、この傾向は、2017年に入っても同様で、特に化粧品の消費者トラブルが増えているとの報告もあります。

1-2 消費者トラブルの原因

 それでは、定期購入の手法において、このような消費者トラブルが増えている原因はどこにあるのでしょうか。
 問題のある定期購入のECサイトでは、初回購入は通常価格より大幅な値引きで販売し、2回目以降が初回より大幅に高い設定になっています。
 さらに、初回価格の文字は消費者に訴えるため大きく目立つ表示にしてある半面、2回目以降の価格は表示が小さかったり、定期購入の解約条件や違約金の表示はさらに小さいか、またはランディングページをかなり下にスクロールしないと表示されない場所にあるケースがあります。
 このようなECサイトでは、消費者側が「お試し購入だと思って、申し込んだら定期購入だった。」「複数回購入が条件とは知らなかった」などと誤解して、消費者トラブルに発展してしまうという実態がありました。

1-3 特定商取引法の改正

 このような事態に対応するため、平成28年の特定商取引法の改正では、定期購入契約に関して、通信販売の広告やインターネット通販における申込み・確認画面上に、次のようなルールを課すことにしました。

    【ルール①:申込み・確認画面上に次のような表示をすること】
  • ・定期購入契約であること
  • ・定期購入の金額(支払代金の総額)
  • ・契約期間
  • ・その他の販売条件(商品の引渡し時期や代金の支払い時期)
  • 【ルール②:確認・訂正機会の提供をすること】

     改正特定商取引法では、上記ルールを事業者側に守らせることにより、消費者が意図せず申し込みをさせる行為を禁止して、消費者トラブルを防止することを意図しています。
     なお、この改正は平成29年12月から施工されています。

    2 ルール①:表示の具体例

     それでは、具体的にどのような表示にすべきなのか見ていきましょう。

    2-1 OKとされる具体例

    最終確認画面に、契約内容が全て表示される場合

     消費者庁の記載例としては、申込みの最終確認画面に、申込者が締結することとなる定期購入契約の主な内容が全て表示され、その画面上で「この内容で注文する」といったボタンをクリックしてはじめて申込みになる場合とされています。

    化粧品・健康食品を定期購入で契約させるときの注意点
    (引用:消費者庁「平成28年改正特定商取引法について」)
    「注文内容を確認する」ボタンをクリックすることにより契約内容がすべて表示される場合

     もう一つの例として、契約内容が最初から全て表示されていなかったとしても、「注文内容を確認する」ボタンが配置されていて、これをクリックすることにより契約内容が全て表示されるケースもOKとされています。

    化粧品・健康食品を定期購入で契約させるときの注意点
    (引用:消費者庁「平成28年改正特定商取引法について」)

    2-2 NGとされる具体例

     今度は、定期購入がNGになる場合も見ていきましょう。
     定期購入として禁止される表現には、当然定期購入契約の主な内容の全てが表示されていない場合も含まれますが、全てを表示していたとしても、文字が小さかったり、その一部が離れた場所に表示されていたりして、定期購入契約の主な内容の全てが容易に認識できない場合は、NGとなってしまうので注意してください。

    化粧品・健康食品を定期購入で契約させるときの注意点
    (引用:消費者庁「平成28年改正特定商取引法について」)

    2-3 表示上の注意点

     期間の定めを設けていない定期購入契約の場合、購入者が支払うこととなる金額について総額を表示することができません。
     このため、例えば、半年分や1年分などでの購入価格を目安として表示するなどして、当該契約に基づく商品の引渡しや代金の支払が1回限りではないことを購入者にわかりやすく記載する必要があります。

     また、期間を定めていたとしても自動更新となる契約の場合には、自動更新となることや更新後の契約期間や総額についてもわかりやすく記載する必要があります。

    3 ルール②:確認訂正の機会の具体例

     ルール②として、特定商取引法は、消費者側に最終の購入意思決定の前に、確認訂正の機会を与えることを求めています。
     具体的には、「変更」「取消し」といったボタンが用意され、そのボタンをクリックすることにより訂正できるようになっている場合や「修正したい部分があれば、ブラウザの戻るボタンで前のページに戻ってください」といった説明が見易く表示されている場合になります。

    化粧品・健康食品を定期購入で契約させるときの注意点
    (引用:消費者庁「平成28年改正特定商取引法について」)

    4 まとめ

     このように定期購入の申込ページには、特定商取引法におけるルールが規定され、表示すべき内容が細かく指定されることになりました。これらのルールに違反する場合、特定商取引法における指導や罰則も規定されていますので、定期購入を導入する事業者様においては十分に注意してください。

     定期購入は、販売側にとってはリピーターを安定的に増やすために是非とも取り入れたい手法ではあります。そして、定期購入は全面的に禁止されているわけではなく、ルールをしっかりと守れば今後も継続できるのです。

     確かに、総額を表示することにより初回申込みの数は以前より減ることは想定されますが、消費者側にとっても安心でわかりやすいサイト構築を行い、消費者にとっても信頼される優良な事業者が増えることが美容・健康ビジネスの発展につながると思います。

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    弁護士法人ピクト法律事務所
    担当弁護士茨木 拓矢
    美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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