エステサロンが歯のセルフホワイトニングを導入する時の注意点
数年前からエステサロンで歯のホワイトニングを導入する店舗が増えていて、私のところにも相談があります。
セルフホワイトニングは、歯科医院で行うホワイトニングよりも、安くて手軽に利用できるということで利用者のニーズに合ったサービスかと思います。
ただ、エステサロンでホワイトニングを行う場合は、法律のルール上、お客様自身の手で行ってもらう「セルフ」ホワイトニングしか行うことができません。
また、歯科医院で行うホワイトニングとは使う薬剤や機器も異なってきますので、当然にその効果も違ってきます。
さらに、効果も違うことから、セルフホワイトニングでは広告の記載にも配慮が必要です。
このように、セルフホワイトニングには法律面で注意しなければいけない点があるので、エステサロンで安易にメニューを導入してしまうと危険な点があります。
今回は、美容事業に特化している弁護士の視点から、
- ・エステサロンでホワイトニングを導入しようと考えている方
- ・現在導入しているが本当に適法なのか不安に思っている方
に、エステサロンでホワイトニングを導入する店舗の注意点を解説していきます。
【目次】
1 エステでホワイトニングはできるのか
まず、ホワイトニングをメニューで導入することの適法性について。
1-1 お客様の口に触るのには資格が必要
エステサロンで、ホワイトニングを行う場合には、「セルフホワイトニング」でなければなりません。
その理由は、法律のルールとして
と定められているからです。
このため、無資格でお客様の口に手を触れれば、歯科医師法という法律に違反することになります。
無資格で歯科医の診療行為を行うと、悪質な場合には刑事罰として逮捕される可能性もあるので注意が必要です。
1-2 セルフなら資格は不要
このように、無資格でお客様の口に触れることはできないとしても、お客様自身が自分で口の中を触れることは、当然問題ありません。
そこで、エステサロンにおいて、「セルフホワイトニング」という、サロン側は薬剤や照射するライトだけを提供して、お客様自身がホワイトニングするというスタイルにしているのです。
この「セルフホワイトニング」は国としても違反ということができず、実務上も適法という扱いになっています。
1-3 セルフホワイトニングの注意点
法律のルールに違反しない「セルフホワイトニング」ですが、どんな場合でも適法ということではありません。
具体的には、次の条件を守る必要があります。
- ①ホワイトニング剤は、無資格者でも扱えるものを使うこと
- ②照射するライトは、医療機器ではないこと
このように、エステサロンのセルフホワイトニングは、医薬品ではなく市販品と同様のレベルのホワイトニング剤を使用して、照射するライトも医療機器のような効果が強いものではないことが必要です。
いくらセルフとは言っても、この条件を守らないと法律違反となる可能性がありますので、是非とも注意が必要です。
2 セルフホワイトニングの流れと使用する薬剤
次に、具体的なセルフホワイトニングの流れから、注意するべきポイントを解説していきます。
2-1 一般的なセルフホワイトニングの流れ
エステサロンでのセルフホワイトニングは、大体次のような流れになります。
- ①サロン側でホワイトニングの方法や注意点の説明をする
- ②お客様自身で歯を磨いてもらう
- ③お客様自身で口を広げておく器具を装着し、ホワイトニング剤を塗布してもらう
- ④お客様自身で照射ライトを照射してもらう
- ⑤口の中を洗う
このように、サロン側は最初にホワイトニングの方法を説明して、ホワイトニングの実際の行為はお客様自身に行ってもらうことになります。
初回のお客様にはサロンの従業員が側にいて指導してあげることもありますが、リピーターのお客様だと説明も省けて30分程度で終了することが多いと思います。
2-2 サロン側の説明の注意点
慣れていないお客様だと、サロン側でも丁寧にやってあげたくなることもあるかと思います。
しかし、1-1で解説したように、サロン側でお客様の口を触ることはルール違反となるので、この点だけは十分守るようにしてください。
私が過去に相談を受けたエステサロンでは、従業員がスプレータイプの装置を使って、お客様にホワイトニング剤を散布していたところがありました。
確かに、口には直接触れる行為ではないですが、口元周りに影響を与える行為なので、歯科業務と捉えられる可能性があるグレーな行為です。
このサロンのお客様に対するサービス心として理解はできますが、セルフホワイトニングは法律のルールのギリギリの方法です。
このため、少しでも危ない橋を渡らないように、スプレーの散布もお客様自身でやってもらうようにオペレーションを変えるようアドバイスをしました。
2-3 薬剤の違い
歯科医院で行うホワイトニングの場合、薬剤は過酸化水素水を主成分にしている医薬品を利用することが多いです。
医薬品であるため、人体に対する刺激はありますが、照射することにより漂白効果が認められるので、高いホワイトニング効果が期待できます。
これに対して、エステサロンでのホワイトニング剤は、重曹のような食品添加物でも認められているような物を主成分として利用しています。
このように口に入っても害が少ない成分ですので、誰でも入手できる反面、人体に対する効果も緩やかです。
ですので、エステサロンで扱えるホワイトニング剤は、「歯の汚れを落として、歯が持っている本来の白さを取り戻す」という成分になります。
3 広告の注意点
最後に、セルフホワイトニングの広告を記載する時の注意点を見ていきましょう
3-1 セルフということを明記しておく
何度も見てきているように、エステサロンでのホワイトニングはセルフしか行えないので、広告にも「セルフホワイトニング」という点は、しっかりと記載するようにしてください。
「セルフ」という記載が無いと、エステサロンでエステティシャンがホワイトニングを行うと誤解され、医療法の広告規制に違反する可能性が出てきてしまいます。
また、セルフホワイトニングは、最近では世間の認知は広まりましたが、まだまだその方法を知らない人も沢山います。
エステサロンなのに、エステティシャンからやってもらえないのか、とお客様を誤解させてしまうことにもなるので、「セルフ」という点は強調しておくことが安全です。
なお、広告の中に、セルフホワイトニングの流れを明記しておけば、誤解されることもなくなるのでお勧めです。
3-2 効果を強調しすぎない
2-3の薬剤の違いで解説したように、エステサロンでのホワイトニング剤は、医薬品ではなく、重曹などの効果が穏やかな物です。
このため、「1回ですぐ真っ白な歯になります」というように、ホワイトニングの効果を強調しすぎると、歯科医院のホワイトニングと同じくらいの効果を得ることができると誤解される可能性があります。
あくまでも、効果の点は「歯の汚れを落として、歯が持っている本来の白さを取り戻す」という範囲をオーバーしないことを心がけてください。
3-3 ビフォーアフターの画像は?
弁護士としてよく質問されるのが、このビフォーアフターの画像を使ってもいいのかというものです。
美容クリニックを始めとする医療機関の広告でも、2018年に決まった医療法のルールでビフォーアフターの画像は使うことができるようになっています(ただ、誇大な効果表現しないことや副作用、料金を併せて掲載するという条件付きです)。
エステサロンにおいては、法律上細かいルールまでは決まっておらず、景品表示法という広告一般を規制するルールが適用されます。
ですので、エステサロンでのセルフホワイトニングにおいても、ビフォーアフターの画像を載せることは基本的に問題ありません。
ただ、画像を加工したりして虚偽の画像を利用することや、あたかも1回の施術で誰でも真っ白になるように思わせる画像を使うのは、誇大な広告として、景品表示法の違反となります。
このように、ビフォーアフターの画像を利用する場合は、次の3つを守るようにしてください。
- ①特別な例を載せるのではなく、7,8割のお客様に効果が期待できる画像を載せる
- ②効果には個人差があることをわかりやすく記載する
- ③画像を加工したり、虚偽の画像を利用しない
4 まとめ
これまで、エステサロンでのセルフホワイトニング導入の注意点を説明してきましたが、いかがでしょうか。
セルフホワイトニングを導入する際の重要な点を簡単にまとめると、
- ①お客様の口を触らない
- ②使用する機器は、医薬品や医療機器を利用しない
- ③広告では、ビフォーアフターを含めて効果を強調しすぎない
というものになります。
法律のルールを正しく理解して、健全なセルフホワイトニングを導入するようにしてください。
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