特定保健用食品(トクホ)の表示に必要なこと〜許可要件・手続き等〜
近年、コンビニなどで、特定保健用食品(トクホ)のマークが付された商品を目にすることが多くなってきています。
従来中心であったお茶、健康食品だけでなく、コーラやノンアルコールビールも発売されているところです。
現在では、1000件以上の食品が、消費者庁からトクホの許可を受けています。
今回は、健康食品を製造する事業者の方に向けて、トクホの説明、自社の健康食品にトクホの許可を受ける方法、許可を受けることで表示できる事項などについて解説していきます。
【目次】
1 特定保健用食品(トクホ)とは?
特定保健用食品とは、消費者庁の定義によれば「許可等を受けて、食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品」とされています。
簡単に言うと、からだの生理学的機能などに影響を与える成分を含んでおり、「お腹の調子を整える」、「コレステロールの吸収を抑える」、「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」など、摂取することで健康の維持・増進に役立つまたは適する旨の表示の表示ができる食品のことを言います。
一般の食品では表示が禁止される摂取による効果や機能などを表示することができる点が特徴です。
また、特定保健用食品の許可の判断をする際に、試験機関が、お腹の調子を整えるための成分などが本当に製品に含まれているのかをチェックします。
このため、消費者は安心感を持ってトクホの製品を購入することができます。
2 特定保健用食品の種類は?
特定保健用食品は、以下の4つの種類に分かれており、それぞれで許可をうける難しさなどが異なります。
2-1 特定保健用食品
一般的な特定保健用食品であり、個々の商品について、消費者庁などのチェックの元で許可を受けるものです。
許可申請の添付資料において、栄養成分が特定保健用食品の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルにあることなどを示す必要があるので、以下の種類よりも許可を得ることが難しくなります。
2-2 特定保健用食品(疾病リスク低減表示)
製品に含まれる栄養成分に疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合、疾病のリスクを低減させるのに役立つ旨の表示をすることが認められている特定保健用食品をいいます。
対象となる成分は、消費者庁によって厳格に定められており、カルシウムと葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の2種類のみです。
2-3 特定保健用食品(規格基準型)
特定保健用食品としての許可実績が十分であるなど科学的根拠が蓄積されている関与成分について規格基準を定め、消費者委員会の個別審査なく、事務局において規格基準に適合するか否かの審査を行い許可する特定保健用食品のことです。
簡単に言うと、以下の栄養成分を含み、その栄養成分が消費者庁の定めた成分規格に適合していることの審査のみでトクホの許可を受けられるというものです。
・難消化性デキストリン
・ポリデキストロース
・グアーガム分解物
オリゴ糖区分として
・大豆オリゴ糖
・フラクトオリゴ糖
・乳果オリゴ糖
・ガラクトオリゴ糖
・キシロオリゴ糖
・イソマルトオリゴ糖
難消化性デキストリン区分として
・難消化性デキストリン
2-4 条件付き特定保健用食品
現在は特定保健用食品の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルには届かないものの、一定の有効性が確認される食品を、限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として、許可対象と認めるのが、条件付き特定保健用食品です。
たとえば、許可表示として「○○を含んでおり、根拠は必ずしも確立されていませんが、△△に適している可能性がある食品です。」 などと表示することになります。
3 特定保健用食品の許可・承認の手続
では、健康食品を製造する事業者の方が、自社の製品にトクホにマークを付け、特別な表示がしたいと思い立った場合、どうすればよいでしょうか。
以下では、製品に対して、特定保健用食品の許可を受けるための流れや要件について解説します。
3-1 許可までの流れ
まず、事業者は、許可申請書とその添付資料を、都道府県経由で、消費者庁の食品表示企画課に提出することで、手続がスタートします。
許可申請書・添付資料の詳細に関しましては、下記の消費者庁のHPをチェックしてみてください。
【消費者庁HP~特定保健用食品(トクホ)許可制~】
その後、特定保健用食品の許可をするため場合には、
-
①製品の安全性及び効果について、食品安全委員会及び消費者委員会の意見を聞く
②薬機法の医薬品の広告・表示規制に抵触しないかの確認のために厚生労働省の意見を聞く
③国立研究開発法人医療基盤・健康・栄養研究所又は登録試験機関において関与成分量の分析を受ける
こととされています。
このため、具体的な、表示許可手続の流れは、以下のとおりとなります。
(引用元:消費者庁HP「(参考)特定保健用食品の審査の流れについて」)
3-2 許可の要件
特定保健用食品の許可は、食生活の改善が図られ、健康の維持増進に寄与することが期待できるものであって、次の要件に適合するものについて許可等を行うとされています。
- (1)食品又は関与成分について、表示しようとする保健の用途に係る科学的根拠が医学的、栄養学的に明らかにされていること。
- (2)食品又は関与成分についての適切な摂取量が医学的、栄養学的に 設定できるものであること。
- (3)食品又は関与成分が、添付資料等からみて安全なものであること。
- (4)関与成分について、次の事項が明らかにされていること。ただし、 合理的理由がある場合には、この限りではない。
- ア 物理学的、化学的及び生物学的性状並びにその試験方法
- イ 定性及び定量試験方法
- (5)食品又は関与成分が、ナトリウム若しくは糖類等を過剰摂取させることとなるものまたはアルコール飲料ではないこと。
- (6)同種の食品が一般に含有している栄養成分の組成を著しく損なったものでないこと。
- (7)日常的に食される食品であること。
- (8)食品又は関与成分が、「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和 46 年6月1日付け薬発第 476 号厚生省薬務局長通知)の別紙「医薬品の範囲に関する基準」の別添2「専ら医薬品として 使用される成分本質(原材料)リスト」に含まれるものではないこと。
(8)の要件については、以下の記事をご覧ください。
事業者の方々は、許可を得ようとする製品が、これらの要件を満たしていることを添付資料によって示す必要があります。
4 許可を受けるとどうなるの?
次に、特定保健用食品の許可を受けた場合に、事業者の製品にどのような表示ができるのかについて、解説します。
4-1 特別に表示できる事項は?
まず、事業者の製品には、以下のような、トクホのマークを付することができます。
条件付き特定保健用食品の場合には、マークが多少異なります。
(引用元:消費者庁HP「特定保健用食品のマークはこちら」)
他には、許可の内容に応じて、製品の効果を表示することができるようになります。
具体的な表示内容は以下のとおりです。
- 「お腹の調子を整えます」
- 「コレステロールが高めの方に適する」
- 「食後の血糖値の上昇を緩やかにする」
- 「血圧が高めの方に適する」
- 「歯の健康維持に役立つ」
- 「食後の血中中性脂肪が上昇しにくいまたは身体に脂肪がつきにくい」
- 「カルシウム等の吸収を高める」
- 「骨の健康維持に役立つ」
(成分例:オリゴ糖、乳酸菌類など)
(成分例:キトサン、サイリウム種皮由来の食物繊維、大豆たん白質)
(成分例:難消化性デキストリン、L-アラビノース、難消化性再結晶アミロース、グァバ葉ポリフェノール、豆鼓エキス)
(成分例:ラクトトリペプチド、サーデンペプチド、ゴマペプチド、杜仲葉配糖体、かつお節オリゴペプチド、燕龍茶フラボノイド)
(成分例:キシリトール、フクロノリ抽出物、リン酸一水素カルシウム、リン酸化オリゴ糖カルシウム、CPP-ACP)
(成分例:コーヒー豆マンノオリゴ糖、ケルセチン配糖体、ウーロン茶重合ポリフェノール、難消化性デキストリン、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、中鎖脂肪酸)
(成分例:カゼインホスホペプチド)
(成分例:大豆イソフラボン、炭酸カルシウム、ビタミンK2
本来的には、健康食品について効果を表示することは薬機法によって禁止されていますが、特定保健用食品の場合には、許可に応じた効果が表示できることになるのです。
4-2 表示に関する義務は?
他方で、特定保健用食品の許可を得た製品には、以下の図の事項を表示する義務を負うことになります。
これは、消費者が、製品に表示された効果を求めて、製品を過剰に摂取することを防止するためです。
(引用元:消費者庁HP「特定保健用食品とは」)
これに違反した場合には、特定保健用食品の許可が取り消されてしまうため、注意が必要です。
5 まとめ
今回は、特定保健用食品の説明、自社の健康食品に特定保健用食品の許可を受ける方法、許可を受けることで表示できる事項などについて解説してきました。
今回のポイントは、以下の2つです。
- ①特定保健用食品の許可には、4つの種類があり、比較的容易に許可を受けられるものがある。
- ②特定保健用食品の許可を受けた場合には、製品に、摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる。
トクホのマークは、その商品における消費者からの信頼度を高めます。
健康食品などを製造する事業者の方々におかれましては、今回の記事を参考に、自社の健康食品にトクホの許可を受けることを検討してみてください。