売却・購入した物に欠陥があった場合の対応

 美容業界においては、化粧品や健康食品といった商品や、美顔器、脱毛器などの美容機器などの製品を業者間で取引することが多いと思います。ただ、せっかく購入した商品や製品に購入後、欠陥が見つかったという事例は、みなさん少なからず経験されたことがあるのではないでしょうか。
 今回は、このような売却・購入した商品や製品に欠陥があった場合の売主側、買主側のそれぞれの対応について、説明していきます。

1 基本的考え

 美容関連の商品や製品に限らず、一度売買契約を結んだ場合、買主側は契約後に契約をキャンセルすることは原則できません。よく訪問販売などではクーリングオフという言葉を聞きますが、このクーリングオフも消費者を保護する制度ですので、業者間取引には適用されません。

 ただし、購入した商品や製品に欠陥(一定の性能・使用を満たさない不完全なもの)がある場合には、買主側は売主側に対し、法律上、一定の条件を満たすと、契約を解除することや損害賠償を請求するなど責任追及することが可能となります。

2 責任追及のための条件

 それでは、買主側が売主側に対して責任追及するために必要な条件を詳しく見ていきましょう。

2-1 購入当初から製品に欠陥があること

 まず、買主側が売主側に責任追及していくためには、購入当初から製品に欠陥があることが必要です。
 当たり前のようにも思えますが、ここでは「当初から」という点が重要です。というのも、納品した商品や製品が、購入後の保管状況によって、欠陥が生じてしまうことは少なくありません。
 例えば、化粧品などは、高温多湿の場所に長期間保管していた場合に、品質が悪化してしまうことは十分考えられます。また、美容機器も最近は精密なものが多いですから、使い方や毎日のメンテナンスなど購入後にしっかりと行っていないと、当初から製品に欠陥があったとはいえなくなってしまいます。

 このため、その欠陥が当初から存在していたのか、それとも後からの要因によって生じたものなのかがポイントになります。

2-2 保証期間をチェック

 次に、契約書などで記載されている保証期間内かどうかがポイントとなります。よく美容関係の契約書においては、「保証期間」だったり、「瑕疵担保」という項目で規定されていることがあります。
 これまで契約書をちゃんと確認したことがないという事業者の方は一度、これまで購入した商品や製品の契約書を見返してみてください。美容関係の化粧品や美容機器の場合、保証期間を1年にしていることが多いと思います。
 契約書で保証期間が記載していなかった場合には、事業者間同士の保証期間は法律上6か月となります。

 契約書で定めた場合にはその期間内に、契約書で定めていない場合には6か月以内に、買主側が商品や製品の欠陥を特定して売主側に主張することが必要となります。

2-3 検収の必要性

 
 また、当初から購入した製品に欠陥があったとしても、業者間取引の場合、納品時に検収、すなわち商品や製品の内容をすぐに確認することが法律上求められています。
 具体的な法律のルールは

  1. ①買主は目的物を受け取った後、すぐに検査をすること
  2. ②検査の結果、欠陥や数量の不足を発見した場合には、直ちに売主に通知すること
  3. ③直ちに発見できない欠陥の場合は、6か月以内にこれを発見し、通知すること

となっています(なお、契約書でこれと異なる方法が記されている場合にはそれに従う必要があります)。
これらの要件を満たさない場合には、買主は売主の責任を追及することができない、とされています。

3 買主側は何が主張できるか

 
 これまで、買主側の責任追及のための条件を見てきましたが、次に具体的な責任追及の方法を解説します。
 なお、現在の民法では新品の場合と中古品の場合を分けて考えることになっており、非常にわかりにくくなっております。ただ、現在民法が改正されて数年のうちに施行(法律の効力が発生すること)が予定されています。本コラム執筆時は、まだ現行の民法となっているので、現行民法に従って解説していきます。

3-1 修理や欠陥のない代物の請求

 まず、買主側としては、新品を購入した場合、修理や欠陥のない代物の請求ができます。

 ただ、購入した物が中古品の場合は、修理や欠陥のない代物の請求は契約書に記載がない限り求めることができません。これは、中古品は新品の物と異なり同じ物はこの世に二つと存在しません(同じ型式の製品はあり得ますが、これまで同じ使われ方をして同じ年月を経っているものはありません。)。このため、代物の請求や修理については、契約書で記載がない限りは法律上請求できないとされています。

3-2 契約解除

 修理や欠陥のない代物の請求を請求しても売主側が誠実に対応しない場合には、契約を解除することも請求できます。契約解除はいきなり主張できるわけではなく、買主側が売主側に対し修理等を求めたけれど売主側が対応しなかったということが必要です。
 この場合、契約解除することに加えて損害賠償として、支払った商品の購入代金も損害賠償として請求していくことになります。

 中古品の場合にも契約解除を主張することはできますが、その欠陥が重大で、契約をした目的が達成できないことが必要です。製品が壊れて動かないといった場合にはこれにあたりますが、軽微な欠陥(例えば、製品の動作が少し遅い)などの場合には契約解除が認められないこともあります。

3-3 損害賠償

 
 製品に欠陥があった場合、買主側が売主側に損害賠償できますが、何をいくらくらい請求できるのかは実は非常に難しい問題で、私達弁護士も頭を悩ます問題です。下で説明するものは、とりあえずの目安と思っておいてください。

 まず、商品に欠陥がないものと信じて費やした費用については、返還を求めることができます。例えば、購入した化粧品や健康食品を保管するために新たに倉庫を借りて、配送を依頼している場合には、倉庫費用や運送費用を請求することが考えられます。

 また、売主側が契約の解除を主張して、購入した物を返還するときには、すでに支払済みの代金の返還を求めることができます。ただ、購入してからすぐに解除する場合はいいですが、購入した物が例えば美容機器で、購入後しばらく使っていた場合にはそれまで製品を利用した使用利益は差し引かれる場合もあります。

 あとは、買主側が本来得られるはずであった利益(例えば化粧品や健康食品を転売することが予定されていた場合に買主側が得られるはずであった利益)についても請求することができます。

4 まとめ(対応策)

 それでは、最後に売主側と買主側それぞれにおいて、欠陥商品があった場合の対応策を見ていきましょう

4-1 売主側として

 売主側としては、買主側から欠陥商品だとクレームを受けた場合、まずは欠陥の内容とその原因を明らかにすることが重要です。そしてその欠陥が、購入時から発生しているものなのか、購入後に発生したのかを見極めて、保証期間内に対応するべきか検討してください。
 あと、気を付けていただきたいのが、買主側がクレームを入れた場合できうる限り誠実に対応することが重要です。私達のところに相談に来るケースでは、特に初動の対応が悪かったものが多いです。一人の買主であっても口コミによって製品の悪評はすぐに広まってしまいますので、迅速に誠実に対応を心がけてください。

4-2 買主側として

 買主側としては、購入当初から製品に欠陥があったというために、購入後の保管状況をしっかりしていく必要があります。また、納品後はしっかり検収して瑕疵がないか確認する必要があります。化粧品などの商品の場合には中身を確認し、美容機器などの製品であればまずは試運転して機器が正常に作動するかチェックしてください。
 また、上で見たように、買主側の責任追及の方法は契約書によって内容が大きく左右されます。そもそも購入時から、保証期間がどのくらいか確認しておいて、場合によっては売主側と交渉して保証期間を延ばすなどする対応が求められます。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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