「特別用途食品」の許可によって表示できること

「特定用途食品」は、病気の人や、乳幼児、高齢者など、通常の食事を食べることが出来ない人に向けた製品であることをパッケージに表示できる商品です。

近年では、電解質組成を調整した清涼飲料水について、「経口補水液」との名称を付けて販売する場合や清涼飲料水に「脱水時」、「熱中症対策」等と記載することによってあたかも脱水症状を起こしている人を対象とするような記載をする場合には、「特定用途食品」の許可が必要である旨が、消費者庁よりアナウンスされたことで、話題となっています。

そこで、今回は、健康食品関係の事業者の方々に向けて、「特定用途食品」の許可制度や許可を受けることで表示できる内容について解説していきます。

1 「特別用途食品」の説明

まず初めに、「特別用途食品」の概要と種類について解説していきます。

1-1 「特別用途食品」とは??

「特別用途食品」とは、乳児の発育や、妊産婦、授乳婦、えん下困難者、病者などの健康の保持・回復などに適するという特別の用途について表示(特別用途表示)を行うものをいいます。

簡単に言うと、製品のパッケージに、「この製品は腎疾患等に適切である」など、特定の病気や症状を持つ人に向けらえた商品であることを表示できる商品です。

一般の食品では、パッケージに効能効果を表示することは、薬機法の規制対象となりますが、特別用途食品の許可を受けた場合には、製品がどのような病気や症状を持つ人を対象とするものか示すことで、製品の効果を消費者に対して示すことができます。

1-2 特別用途食品の種類

特別用途食品には、製品の対象者や許可を受けるための方法に応じて、以下のように8種類の類型があります。

現在の特別用途食品

引用:消費者庁HP、特別用途食品制度について

トクホの愛称で親しまれている特定保健用食品も、以下の図のように、特別用途食品の一種とされることもあります。

特別用途表示の範囲

引用:消費者庁HP、特別用途食品制度について

図の中にある特定保健用食品や栄養機能食品について、より詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

2 特別用途食品の許可

特に、病者用の特別用途食品は、病者疾病の治療及び再発や悪化の防止を目的とする医師の食事療法を行いやすくすることを目的としているため、健康食品との相性が良いといえます。

自社の製品を特別用途食品として販売したい!!と思った場合には、健康増進法によって、消費者庁の許可を受けなければならないとされています。

2-1 許可の申請方法

消費者庁の許可を申請するにあたって、必要とされる書類などは以下のとおりです。

  1. ・許可申請書
  2. ・申請者が法人の場合には、定款又は、寄付行為の写し
  3. ・試験検査成績書
  4. ・表示見本
  5. ・規格又は要件に適合することを客観的に証明する資料
  6. ・自家試験実施結果
  7. ・製造所の構造設備の概要及び品質管理の方法についての説明書
  8. ・その他当該食品に関する一般的説明資料
  9. ・申請者が製造者と異なる場合は当該食品の製造委託契約書の写し等

これらの書類を根拠に、低タンパク質食品やアレルゲン除去食品のような許可基準型に関しては、その基準に適合しているか審査されて、消費者庁長官の許可を得ることになります。

また、それ以外の許可基準がないものについては、許可のために個別に評価されます。

許可を申請する際には、製品見本、商品名、原材料の配合割合及び製品の製造方法、成分分析表、許可を受けようとする特別用途表示の内容などを、厚生労働大臣に提出します。

評価は、それぞれの特定の用途のために適する成分であるかどうかだけでなく、それ以外の栄養成分が十分に含まれているかといった観点からも、評価されることになります。

許可の基準については、特別用途食品の類型に応じて、詳細な許可の基準が定められています。
このため、申請の際には、消費者庁のHPに掲載されている【特別用途食品の表示許可基準】をみて、自社の製品が許可の基準を満たしているのかを精査する必要があります。

許可にあたっての審査の流れは、以下の図のとおりになります。

特別用途食品の申請手続について

引用:消費者庁HP、特別用途食品制度について

2-2 許可を受けると、どうなるの?

消費者庁の審査を経て、許可が出た場合には、晴れて自社の製品を特別用途食品として販売することができるようになります。

製品には、特別用途食品として、以下のマークを付けることができます。

特別用途食品マーク

引用:消費者庁HP、特別用途食品のマークはこちら

3 表示できる内容は??

以上のような流れで、自社の製品に特別用途食品の許可を受けた場合には、許可を受けた特別用途食品の類型と許可の内容に応じて、自社の製品に、用途を表示できることになります。

このような特定の人向けであるという製品の用途だけではなく、「この製品には、血糖値の上昇を抑える効果があります。」といった機能性・効能効果を表示したい場合には、別個に栄養機能制度における許可や届出が必要となるため注意が必要です。

以下では、健康食品において許可申請が見込める「低タンパク質食品」、「総合栄養食品」、「個別評価型の病者用の食品」について、具体的な表示例を紹介します。

3-1 「低たんぱく質食品」の表示

「低たんぱく質食品」は、腎臓への負担となるたんぱく質を抑えた食品です。
許容される特別用途表示の範囲は、たんぱく質摂取制限を必要とする疾患(腎臓疾患等)に適する旨とされています。。
具体的には、商品のパッケージに、以下のような記載ができます。

[表示例]
「消費者庁許可 病者用食品 低たんぱく質食品 腎疾患患者用食品」
「本品はたんぱく質の摂取制限を必要とする腎疾患等の方に適した食品です。
本品は医師からたんぱく質摂取制限の指示を受けた場合に限りご使用ください。
医師、管理栄養士等との相談、指導を受けてご使用ください。」

3-2 「総合栄養食品」の表示

総合栄養食品は、疾患等により通常の食事で十分な栄養を取ることが難しい人のための食品で、必要な栄養素をバランスよく含んでいる食品です。

許容される特別用途表示の範囲は、食事として摂取すべき栄養素をバランスよく配合した総合栄養食品で、疾患等により通常の食事で十分な栄養を摂ることが困難な者に適している旨と基準で定められています。

[表示例]
○○は、食事として摂取すべき栄養素をバランスよく配合した総合栄養食品で、疾患等により通常の食事で十分な栄養を摂ることが困難な方に適しています。

3-3 「個別評価型」の表示

個別評価型の病者用の食品には、脱水時の経口補水液や潰瘍性大腸炎患者用の食品などがあります。
基準で定められた表示内容が存在しないため、比較的柔軟な表示が可能です。

[表示例]
慢性腎不全患者では良質のたんぱく質、必須栄養成分を適量摂取しながら、水分やリン、カリウム、ナトリウムの摂取を制限した食事を長期間継続しなければなりません。
○○は消化吸収されやすい乳たんぱく質の他、カルシウム、鉄、各種のビタミンを配合した上、リン(牛乳の1/5)、カリウム、ナトリウムを低減してありますので、低リン食を指示されている慢性腎不全の方の食事療法に適しています。

[表示例]
本品は体液よりも低い浸透圧に調整し、電解質・糖質を配合した乳幼児用の経口補水液です。ウイルス性の感染性胃腸炎による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態における水分・電解質の補給に適しています。

4 まとめ

今回は、健康食品関係の事業者の方々に向けて、特定用途食品の許可制度や許可を受けることで表示できる内容について解説してきました。

自社製品が特別用途食品の許可を得た場合には、表示された用途に沿う消費者からの継続的な購入が見込めます。

健康食品関係の事業者の方々におかれましては、自社の製品を「特定用途食品」として販売することをご検討ください。

今回のポイントは、以下の2つです。

  1. ①健康食品を特別用途食品として販売する場合には、消費者庁の許可が必要となる。
  2. ②特別用途食品の許可を得た製品には、特別用途食品のマークや病気の人に適した製品である旨を表示できる。

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