中途解約の清算〜エステサロン経営者必読ルール〜

 エステサロンにおいて、お客様から途中でキャンセルされる危険性はつきものです。せっかく体験コースから長期の契約ができたお客様なのに、契約キャンセルしてしまうことは、お店側として非常に残念なことです。
 ただ、これまでにエステサロンの中途解約は、中途解約できないと主張したり、高額な違約金を定めたりと度々消費者との間でトラブルとなってきた残念な歴史もあります。このため、特定商取引法が改正されていき、お客様の方に中途解約ができ、違約金の制限などが定められて現在のルールとなっています。
 今回は、残念ながらお客様から途中で契約キャンセルされてしまった場合の、清算のルールについて解説します。

1 中途解約の要件

 まずは、お客様の方で中途解約を主張できる要件から見ていきましょう

  1. ①契約期間が1カ月超で、契約金額が5万円超の契約
  2. ②解約が契約期間内であること
  3. ③お客様が中途解約を主張すること

1−1 ①契約期間が1カ月超で、契約金額が5万円超の契約

 エステ契約において、全ての契約が中途解約できるわけではありません。これはクーリングオフと同じです。
 中途解約ができるのは、契約期間が1カ月を超えていて、契約金額が5万円を超える契約で、いわゆる「特定継続的役務」と呼ばれる契約のみです(特定継続的役務の詳しい説明は、エステサロン経営者が知っておくべき特定商取引法のルールを参照して下さい)。

1−2 ②解約が契約期間内であること

 契約を途中で終了する以上、お客様の契約が契約期間内であることがその要件になっています。例えば、1年の契約期間を定めていた場合にはその1年以内に中途解約を主張してもらう必要があります。

 なお、この契約期間という点を利用して、有効期間の短いエステを次々販売していく方法が考えられます。
 ただ、このような契約をしても、それら契約全て全体が1つの契約とみなされて契約期間をカウントされる可能性があるので、有効な対策とはなりえません。

1−3 ③お客様が中途解約を主張すること

 お客様からの中途解約には理由は問われません。また、クーリングオフと違って、書面で解約通知を送ってもらうということも必要ありません。

 なお、中途解約されたお客様に解約の理由を尋ねるところは多いかと思いますが、あまりにしつこく理由を尋ねて、お客様が消費者センターに駆け込まれてしまったという事例も弊所の過去の相談にありました。

2 中途解約で注意するべきポイント

 以下では、中途解約で特に注意すべきポイントを解説します。

2−1 クーリングオフとの違い

 中途解約とクーリングオフの違いは、まずはお客様が解約を主張するタイミングです。お客様とのサービス契約の書面を渡した日から8日以内でしたらクーリングオフとなり、それ以降は中途解約となります。

 クーリングオフの場合は費用を一切もらうことはできないのですが、中途解約の場合にはすでに提供したサービス分に加えて違約金を請求することが認められています。

2−2 中途解約を特約で禁止できるか

 以前からトラブルの原因でもあった中途解約ができないとする特約ですが、これは現在の法律上認められていません。

2−3 やはり誠実に対応することが一番

 解約は残念ですし、見込みの売上も落ちてしまうので、本当にエステサロン側からすれば避けたいところではあります。しかし、法律上適正に認められている権利でもありますので、誠実に対応することが必要です。

 先ほども説明しましたが、消費者センターに駆け込まれて、さらに対応が複雑化してしまうことはよくあります。
 また、後味が悪いと、口コミサイト等でもお店のことを悪く書かれてしまい、結局損になってしまうこともあるので、注意が必要です。

3 清算のルールについて

 次に、法律上の清算のルールについて、見ていきます。

3−1 返金額の計算方法

 中途解約された場合において、清算のルールは法律で次のように決まっています。

①契約上の金額−②提供済みのサービスの対価に相当する額−③違約金

 この計算をして金額が残ってしまった場合、お客様に返却しなければなりません。

3−2 ②提供済みのサービス対価の計算の詳しい説明

 提供済みのサービス対価の計算にあたっては、契約時と清算時で異なる単価を適用するのではなく、契約時の単価で計算する必要があります。

3−3 ③違約金について

 違約金についても、先ほど説明した通り上限金額が決まっています。
 エステティックの場合

 2万円 または 契約残額の10% のいずれか低い額

が上限となっています。

4 クレジット契約について

 エステの契約をクレジット会社のクレジットカードを切っていたり、個別にローンを組んでいた場合、クレジット会社は、消費者が中途解約をするとそれ以降の立替金を請求できなくなります。
 このため、エステサロンは、クレジット会社からすでに受け取った分について返金を求められることがあります。
 キャンセル処理の方法や、追加でクレジット会社に残り分を建て替える等方法は様々であり、クレジット会社との契約書によって処理されることになります。

 クレジット契約を利用しているもので中途解約した場合に、ローン会社とどのように清算するかは、事前にローン会社に確認しておいてください。

5 関連商品について

 中途解約の対象は、施術の契約だけでなく、施術の契約に併せて購入した関連商品も一緒に中途解約の対象となります。
 施術の契約と一緒に解除できる関連商品は、エステ施術のために購入する必要があるもので、下記の商品になります。

  1. ・健康食品
  2. ・化粧品、石けん(医薬品を除く)、浴用剤
  3. ・下着
  4. ・美顔器

 このような関連商品は、施術の際の契約書に関連商品として記載する必要があります。 ただ、上記の商品の内、「健康食品と化粧品、石けん(医薬品を除く)、浴用剤」については、自分の意思で消耗品を開封したり使用したりした場合は中途解約の適用から外れることになります。

 なお、いわゆる「推奨品」と呼ばれるようなエステのサービス契約とは直接関係のなく、購入しなくてもコースを利用できる商品については、中途解約の対象とはなりません。ただし、中途解約の対象にしないために本当は必要なのに推奨商品とした場合は、関連商品として中途解約の対象になると判断される可能性もあるので注意が必要です。

6 まとめ

 中途解約については、特定商取引法でルールが決められておりますので、お客様から解約を主張されたら、速やかに応じるようにしてください。
 解約を拒んだり、お客様にしつこく解約を止めるよう説得することは、後々の紛争のもととなってしまいます。また、悪評がたってしまうとSNSで拡散してしまうこともあるので、法律に則って、誠実に対応するように心がけてください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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