美容室でシェービング・顔そりを行うのは違法なの?

 最近、美容室などのメニューでシェービングを行うことを強調する店舗が増えてきました。ただ、一昔前までは顔そりは理容師しかできないとの認識が強かったのも事実です。美容師と理容師の垣根はだんだんと規制緩和によって薄れてきましたが、シェービング・顔そりはどうなのか?

 今回は美容室やサロンのオーナ様向けに、美容室でシェービング・顔そりのサービスを行う時の注意点について解説していきます。
 なお、本記事の執筆は2018年7月時点の情報を基にしており、今後は、変更になる可能性もあります。

1 美容室でシェービング・顔そりはできる!ただし、限定的!

 美容室におけるシェービング・顔そりについては、2018年4月に厚生労働省の考えとして発表がありました。この発表では、美容室でシェービング・顔そりはできる!ただし、限定的!というものになります。
 

1-1 グレーゾーン解消制度における厚労省の回答

 経済産業省は、2018年4月27日、グレーゾーン解消制度の回答として、「美容師による顔そりサービス」の紹介に対する回答を発表しました。
 このグレーゾーン解消制度とは、簡単に言えば、事業者が、現行の規制で不明確(グレー)な場合、あらかじめ規制が適用されるのかを、所管する省庁の大臣に確認できる制度です。
規制の適用が不明確(グレー)な場合に、それを解消する制度なので、グレーゾーン解消制度と言われてます。
 美容師業界を所管するのは厚生省なので、この回答は厚労省の現在の正式な考えとなります。

 少し長いですが、この回答を引用すると

今般、美容所において、美容師を雇用し、女性客に対して化粧とそれに伴ううぶ毛剃り(頬や額を含む顔全体)を行わせるサービスを行うことを検討している事業者より、当該サービスが美容師法第二条の「美容」に該当し、当該サービスを美容師が業として行うことができるかについて照会がありました。

規制を所管する厚生労働省に確認した結果、以下の回答がなされました。

照会書に記載の事業内容については、「メイク&シェービングサロン」と謳い「シェービング」を強調して行う事業であり、「軽い程度の顔そり」を超えたサービスを求める顧客を誘引することで、その結果、「軽い程度の顔そり」を超えた顔そりが提供される可能性がある。
提供されるサービスが「軽い程度の顔そり」を超えた場合には、その行為は理容に該当する。

1-2 実は以前から顔そりは美容師に認められていた

 美容師と理容師の業務内容の職域争いについては、戦後から今日まで長く続いてきました。このような職域争いの原因は、美容師と理容師がそれぞれ違う資格になっていて、それぞれの資格で行うことができる業務範囲がわかれていたからです。

美容師法
美容とは、パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいいます。(美容師法)
 美容師は、上記の行為のほか、一定の範囲内で「これに準ずる行為」及び「これらに附随した行為」を業として行うことができます。
理容師法
第一条の二 この法律で理容とは、頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えることをいう。
第六条 理容師の免許を受けた者でなければ、理容を業としてはならない。

 実際、この法律だけだと美容師と理容師がどこまで行えるか不明確です。ですので、厚生労働省の通達により、理容師の範囲をもう少し明確にしています。

三 化粧に附随した軽い程度の「顔そり」は化粧の一部として美容師がこれを行つてもさしつかえない。

 この通達は、昭和23年12月8日発表と、戦後間もなくのかなり古いものです。ただ、今日まで顔そりについての職域を明示したものとして実務上の基準となっていました。

 これによると、美容師も化粧の一部としてであったら行うことができるとなっています。

1-3 厚労省からの回答の趣旨

 この昭和23年通達の内容と今回発表された厚労省からの回答の趣旨を見比べてみると、ほぼ同一内容ということがわかります。
 つまり、美容師は
 ・化粧に付随した軽い程度の「顔そり」はOK
 ・提供されるサービスが「軽い程度の顔そり」を超えた場合には、その行為は理容に該当するので、違法

という整理になります。

 美容師と理容師の職域については、顔そりの問題とは別に、美容室が男性のカットはできるのか、理容師はパーマができるのか、という問題もありました。ただ、この問題は、2015年7月の通達によって解消されています。
 顔そりの問題についても、美容師に解禁されるのではという期待の声もあったのですが、こちらは厚労省は以前と回答を変えていません。

2 結局、美容室でどこまでシェービング・顔そりをできるのか

 厚労省からの回答の趣旨は、先ほど説明した通りですが、もう少し踏み込んで説明していきます。

2-1 美容室で顔そりができる限度は

 結局のところ、化粧に付随した軽い程度の「顔そり」はOKであり、それ以上は理容師免許を持っていないと行えないということですので、
 シェービング・顔そりを主目的にしたサービス → NG
ということは明確になっています。
 そして、厚労省からの発表をそのまま鵜呑みにするのであれば、化粧をする場合に付随的に
行う程度しかできないということになるかと思います。

2-2 サービス名にも注意

 厚労省からの発表は、「メイク&シェービングサロン」というサービス名自体をNGとはしていません。
 ただ、

「メイク&シェービングサロン」と謳い「シェービング」を強調して行う事業であり、「軽い程度の顔そり」を超えたサービスを求める顧客を誘引することで、その結果、「軽い程度の顔そり」を超えた顔そりが提供される可能性がある。

とのことなので、注意する必要はあると思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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