• 公開日:2018/7/25  最終更新日:2018/07/24
    

美容室と理容室は同じ場所で営業できる?美容師と理容師のダブルライセンス問題

 美容師と理容師は、髪のカットやパーマを扱うという点では同じ資格ですが、これまでは男性は理容室、女性は美容室と性別による区分けがなされているなど、それぞれ特有の領域がありました。最近では、規制緩和により、男性のカットも美容室で行えるようになりましたが(美容室で男性のカットのみはNG?美容師と理容師の業務について)、顔そり・シェービングは理容師のみと、依然として資格でできることに違いがあります(美容室でシェービング・顔そりを行うのは違法なの?)。
 また、最近の規制緩和では、美容室と理容室は同じ職場で営業できるようになりました。ただ、それには一定の条件も・・・。
 今回は、美容師と理容師の職場の規制緩和と、美容師・理容師のダブルライセンスの資格取得について最近の動向を説明していきます。

1 美容師と理容師が同じ職場で働けるようになった

 美容師と理容師は、戦後間もない時代から最近まで長い期間、同じ職場で働くことが禁止されていました。
 

1-1 これまでの規制は?

 美容室と理容室は同じ職場で営業できないとされていたのは、昭和23年12月8日に出された次のような厚労省の通達が出されていたからでした。

理容所の開設者は、理容師であると否とを問わない。又同一人が同時に理髪所と美容所を開設することもできる。但し、後の場合においては、理髪の施設と美容の施設とはそれぞれ別個に設けなければならない。

 通達とは、国会が作った法律で書かれていないことを、厚労省などの役所が解釈して発表するものです。この通達は、法律とは違うものの実務上のルールとなっていることが多く、この基準でこれまで美容室と理容室は一緒に作ることは出来なかったのです。

1-2 規制緩和で同一施設が解禁!ただし、条件付き

 昭和23年に発表された通達が平成に入っても長い間、実務上のルールとして、通用してきました。ただ、男性は理容室、女性は美容室という概念は年々薄れてきて、男性でも美容室に行くことが当然の時代になってきました。
 そして、平成27年7月に美容室で男性のみのカットも認められて、同じ年の12月9日にとうとう、美容室と理容室を一緒に作ることが認められました。

理容所及び美容所については、・・・それぞれ別個に設けなければならないとされているところであるが、・・・理容所及び美容所に必要な衛生上の要件を満たし、かつ、理容師及び美容師双方の資格を有する者のみからなる事業所に限り、これを同一の場所で開設することができるよう措置することとしたところである。

この新しい通達を読むと、
『美容室と理容室が一緒に出来るのなら、理容師の免許を持っている人を探して、新しいサービスを作れるのか』
と一瞬勘違いしてしまうかもしれません。

 ただ、残念ながらよく読んでみると、「理容師及び美容師双方の資格を有する者のみからなる事業所に限り」という条件付きです。つまり、店舗で働く資格者すべてが、美容師と理容師の資格を持っていないといけないのです。

1-3 実際は困難な美容室と理容室の同一店舗

 このように、美容室と理容室の同一店舗が規制緩和によって認められましたが、店舗で働く資格者すべてが、美容師と理容師の資格を持っていないといけないという条件があります。

 ちなみに、美容師と理容師の資格取得者の数は、次の通りです。 

美容室と理容室は同じ場所で営業できる?美容師と理容師のダブルライセンス問題

参照:厚労省HP

 これをみると、美容師と理容師の資格をダブルで持っている人は1万2000人と多くありません。このため、店舗スタッフすべてをダブルライセンスにするのは、現状ではかなり難しいと思われます。

2 養成制度の変更

 ただ、行政としても単に規制緩和を出したわけではありません。並行して、美容師、理容師のダブルライセンスの資格取得を容易にする養成制度の変更に手を付けていたのです。

2-1 美容師と理容師の養成制度のこれまで

 美容師・理容師学校は通学の場合、それぞれ2年過程でした。このため、今までは両方の資格を取得するためには合計4年かかりました。
 そして、美容師・理容師の資格を持っていても、これまでの養成制度は、初めて資格を取得しようとする場合とほぼ同じカリキュラムを受講する必要があります。また、国家試験についても試験科目の免除はありませんでした。
 このように、一方の資格を取得していることがもう一方の資格を取得するうえで有利にならない上に、美容室・理容室の兼業が法律で認められておらず、これまで美容師・理容師の両資格を取得するメリットがほとんどありませんでした。

2-2 履修時間の大幅な短縮

 それが、今回の養成制度の変更により、理容師か美容師いずれかの資格を持つ人がもう一方の資格を取得しやすくするため、もう片方の資格を目指す際の履修科目を一部免除して、通学する場合は1年と現在に比べ半分の期間で取得できるようになります。
 具体的には、理容師や美容師の養成施設での履修時間は現在「2010時間以上」。これをどちらかの資格を持っていれば、内容が重なる一部の履修科目を免除し、「1020時間以上」で卒業できるようにする。国家試験もそれに合わせて、免除した科目を除いた筆記試験をすることになりました 。

履修時間の大幅な短縮

 つまり、最初の資格2年にもう片方1年の合計3年で美容師・理容師両方の資格が取得できるようになります。

3 本当に意味のある規制緩和か

 消費者の立場からすると、美容室と理容室のいいところを生かして、多様なサービスが出来るようになってもらいたいものです。このため、最近の規制緩和は望ましい方向性です。

 ただ、現状の規制緩和だけだと、規制緩和された範囲が狭くて、すぐに新しいサービスを打ち出せるような形にはなっていないという声をよく聞きます。
 現状でよく聞くニーズとしては、男性女性共に、顔そり、シェービングではないでしょうか。

 私も長らく美容室に通っていますが、小学生の頃に近所の理容室でひげそりをしてもらったときの自分の肌の驚くようなすべすべ感は、強く覚えています。それが、いつもの美容室でできれば、いつものカットに追加してオーダーすると思います。

 美容室・理容室についての規制緩和は、平成33年にもう一度見直すとのことです。いま一歩踏み込んだ規制緩和になることを願います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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