美容室の面貸しするときに知っておきたい契約の注意点について

 美容師の働きかたとして、最近よく耳にする面貸しでの契約。ミラーレンタルとも呼ばれており、フリーランス美容師にとっては、勤務する時間帯を自由に選べたり、お客がついている人は給料が上がるなどメリットがあるといわれています。
 この面貸しですが、実は内容を見てみるといろいろなパターンがあり、メリットだけでなくお客トラブルや、美容室側と美容師とのトラブルも増えています。

 今回は、美容室の面貸しするときにぜひとも知っておきたい契約の注意点について、解説していきます。

1 美容室の面貸し契約の種類

 面貸しといった場合、集客はサロン側で行ってカットに専念してもらう業務委託型や、サロンは単に場所だけを貸して美容師が集客からカット料金をもらうことまで全て行うミラーレンタル型とわかれます。
 

1-1 業務委託型

 こちらは求人情報でも「業務委託」や「業務委託スタイリスト」と記載されていて、最低保証給があったり、日当で支払う形などがあります。また、勤務日数も週2日以上などと、一定の条件を付けているところが多いです。

 サロン側としては、広告したり、そもそも割高な賃料を支払って立地がいい場所で行うことが多いので、業務委託型の美容師にはカットに専念してもらうことになります。このため、来店するお客からすると、担当してもらう美容師が正社員なのかが区別がつかないのも特徴です。

 サロン側としては、業務委託型の美容師は従業員ではないため、社会保険の負担がなかったり、残業代も発生しないので、従業員の管理コストが削減されるというメリットがあります。

1-2 ミラーレンタル型

 次にミラーレンタル型ですが、こちらは求人情報では「面貸」と記載されているところが多いです。
 サロン側としては、単に場所を提供するだけなので、ミラーレンタル型の美容師は集客から全ての作業を自らの責任で行う必要があります。

 お客としても、サロンではなくフリーランスの美容師についている状態なので、お客がいっぱいついている美容師ほど給料が高くなります。

2 契約する際の注意点

 それでは、次に契約する際の注意点について説明していきます。

2-1 契約書で決まり事を書面化しておく

 面貸しでも、業務委託型やミラーレンタル型と大まかに分けて説明しましたが、それぞれ細かい取決めは各サロンによってバラバラです。
 条件面談時に、細かく話したとしても後で言った言わないのトラブルを避けるために、簡単でもいいので書面で決まり事をお互い確認しておくことが必要です。

 決めることとしたら、やはりお金の部分は細かく確認しておいた方が無難です。歩合の割合はどのくらいか、材料費などの負担があるか、アシスタントを付けた場合の費用負担があるかなどは最低限の確認事項です。
 その他、勤務時間の条件や、シフトの決め方もあらかじめ決めておいたほうがいい事項になります。

 サロン側・美容師側それぞれ気持ちよく仕事をするためにも、しっかりと書面に残して決めておきましょう

2-2 雇用との区別

 これは、特に業務委託型の際に問題となることが多いです。

 業務委託で働いているといっても、同じサロンで朝から晩まで週をフルで働いている場合、実質的に他の社員と働き方がほぼ同じになってきます。このような場合、いくら業務委託にするとサロン側と美容師側で決めていたとしても、実は雇用で社員扱いにすると判断される可能性があります。

 社員と判断されてしまうと、

  1. ①やめた美容師に残業代を支払わなければいけなくなる
  2. ②社会保険もサロン側で負担となる
  3. ③美容師を解雇したくても、制限される

ということが、実際上サロン側として問題となります。

 この業務委託か社員かという違いは、サロン側が美容師に対して指揮命令関係があるかどうかがポイントになります。実態を見て判断されるので、契約書の名前はさほど重要な要素とはなりません。

 指揮命令関係とは、どれだけ美容師に自由度があるかということなのですが、具体的には

  1. ・仕事内容に関して、サロン側が命令をするかどうか
  2. ・勤務時間について、サロン側から指示されるかどうか
  3. ・美容師が、場所的な拘束を受けないこと

といったことから判断されます。

 他にも、薬剤などの材料やカットに用いる作業用具をサロン側が用意して、美容師に無償で支給している場合、社員と判断される可能性が高まります。

 業務委託の美容師の場合、サロン側と基本的に対等な立場となるので、サロンオーナーとしてはこの点を注意して、契約するようにしてください。

2-3 テナントオーナーとの問題

 これは、ミラーレンタル型の場合問題となることがあります。

 ミラーレンタル型は、要はサロンの作業場を他人に貸すことになるのですが、サロン側も作業場全体のスペースはテナントオーナーから賃貸で借りていることが多いと思います(自社の建物や自宅兼サロンの場合は別ですが)

 そして、テナントオーナーとの賃貸借契約では、借りた側は自分で場所を使うことを前提にしていて、他人に貸すことは禁止となっています。このため、ミラーレンタル型の面貸しをする場合、テナントオーナーとの賃貸借契約違反となり、契約を解除される可能性があるのです。

 実際は、ミラーレンタル型の面貸しをしたからといって、テナントオーナーに不利益が大きいわけではなく、すぐに賃貸借契約の解除が認められることにはならないと思います。ただ、テナントオーナーとの関係を良好にしておくためにも、事前に話をしておいて了解を取っておいた方が安全です。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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