お客様が成人と思って契約したら実は未成年だった場合

 最近では、エステを受けに来るお客様も低年齢化して、未成年者も脱毛エステ等を気軽に利用する時代になりました。未成年者の場合、契約に親の同意が必要となることは多くの方が知っているかとは思いますが、実際に来たお客様が20歳以下の未成年なのか、20歳以上の成人なのかは、判別しにくい時もあるかと思います。
 今回は、お客様が成人と思って契約したら実は未成年だった場合などのトラブルに巻き込まれない対応について、説明していきます。

1 未成年者の契約は、親の同意が必要

 まずは、民法の原則的なルールから説明していきます。下で簡単に説明しますが、詳しくは前回の記事エステにおいて未成年のお客様で注意するべきポイントもご参照ください。

1-1 原則的なルール

 民法上のルールでは、未成年者は契約をする場合、親(親権者)の同意を求めています。このため、サロン側は、未成年のお客様の場合、両親の同意書を持参してもらうか、親と同伴してもらうなどの対策が必要となります。

1-2 例外として親の同意が要らない場合

 民法のルールとして、子供はお小遣いのように、親から自由に処分してよいと決められたお金については、未成年者であっても自由に契約できるという例外があります。このため、1回の単発の申込みで1万円以内程度の金額なら、民法のルール上は親の同意が要らないケースもあります。

1-3 トラブル防止のためには全てに親の同意を取っておくことが安全

 親の同意をとることは、民法のルールでは金額が低いコースでは必ずしも必要ではないけど、後で親からのクレームなどトラブル防止のためには、全部のコースで親の同意を取っておくことが安全です。私の事務所に相談に来られたエステのオーナー様には、このようにいつもアドバイスをしています。

1-4 エステ側の取るべき対応

 このように、お客様が未成年か成人かで、サロン側としては同意書を取るべきかどうか対応が変わるので、お客様の年齢を確認することが必要となります。少なくとも20代と思えるお客様には、必ず年齢を確認するようにしてください。

2 お客様がお店に嘘を言った場合

 このようにお客様に年齢を確認したとしても、お客様の方でもエステは受けたいけど親には言いにくいような事情があって、嘘の年齢を告げるなどの場合があります。
以下、未成年者の場合で怒り得るトラブルを説明します。

2-1 未成年なのに、成人の年齢を告げた場合

 実は17歳の未成年者であるのに、サロン側から21歳などと成人年齢を告げられるケースがあります。このケースでは、サロン側としたら21歳ということで成人であることを確認したため、同意書まで取得しなかったところ、申込み後に親から未成年者だったということでクレームが入りました。

 このような場合、民法のルールでは、未成年者が成年者であるとだました場合には、その契約は未成年者であることを理由に取り消すことはできないというものがあります。
 このルールで重要なのは、「未成年者が成年者であるとだました場合」にあたるかどうかになります。お客様が一見して未成年者であることがわかるような風貌の場合には、サロン側はお客様がいくら21歳といったとしても、本当にその年齢であるのか確認する必要があると考えられます。例えば、女子高生の制服姿で21歳と言ってきた場合には、身分証などで年齢を確認することが求められます。

 このため、お客様が自己申告してきた年齢が少しでも怪しいと思ったら、身分証を見せてもらうなどの対応を取っておくほうが安全です。全てのお客様にそれを行うのは現実として難しいとした場合には、少なくとも継続的な契約など、大きい金額の取引には身分証による年齢確認を行うようにしておくことで、後々のトラブルを防止することになります。

2-2 親に無断で同意書を作成してきた場合

 次に、お客様が未成年者であることは告げていて親の同意書を持参してきたが、実はその同意書は親に内緒で作成してきた場合です。

 このような場合も、先ほどと同様に、民法のルールで、未成年者が親の同意があるとだました場合には、その契約は未成年者であることを理由に取り消すことはできないというものがあります。
 そして、この時のポイントも同じで、「親の同意があるとだました場合」にあたるかどうかになります。この場合は、例えば、申込書の筆跡と同意書の筆跡が同じで、明らかに申込者が同意書を書いたと疑われるような事情がある場合には、サロン側は本当に親の同意があるか確認する必要があると考えられます。例えば、親にも契約の際に同席してもらうとか、電話で親の意向を確認するなどの方法になります。

 この場合も、全ての未成年者の契約で親の同席や親の電話確認をするのが一番安全と言えますが、なかなかそのように対応するのが難しい場合には、せめて継続的な契約など、大きい金額の取引には親の確認を徹底するようにしておいたほうが安全です。

2-3 親のクレジットカードを無断で利用していた場合

 最後に、未成年者の子供が親のクレジットカードを無断で利用するトラブルがあります。このような場合には、年齢どころか本人の名前さえ偽っている場合すらあります。

 このような場合も、これまで見てきたケースと同様に、「未成年者が成年者であるとだました場合」にあたるかどうかがポイントです。年齢だったり名前が少しでも不自然と考えたら、契約する前に身分証などで本人確認をすることがサロン側に求められます。

3 まとめ

 以上のように、未成年者と契約する場合には同意書が必要となることで、未成年者側も年齢を偽ったりなどするケースが報告されています。
この場合、サロン側が救済されるためには、安易にお客様の言い分を鵜呑みにするだけではなく、「サロン側が騙されたとしても仕方ない」といえるような事情までが必要となります。

 2018年に法律が改正されて、成人年齢が20歳から18歳に引き下げることが決まりました。この法律は2022年4月より施行され適用が開始されることになります。未成年者とのトラブルは、今後ますます増えることが予想されますので、サロンの皆様においても、このようなトラブルに巻き込まれないように、お店のルールを見直すなどの対策を取るようにしてください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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