エステにおいて未成年のお客様で注意するべきポイント

 最近では、美容や脱毛・ダイエットなど「美」への興味はどんどん低年齢化し、今や小学生の8割近くがメイクの経験があると答えている時代になりました。エステについてもスマホが普及して、エステの情報を簡単に検索できたり、口コミや紹介記事などが気軽に見られるようになったことに加えて、体験プランや初回限定クーポンなどにより、手ごろな価格でエステを利用しやすい環境になっています。
 これまでは多くのエステ店舗は、未成年者を対象にしていないところが多かったと思いますが、最近では未成年者でも積極的に来店を呼び込もうとしているところも増えています。

 今回は、エステにおいて未成年のお客様で注意するべきポイントや法律のルールを、弁護士の目線から解説していきます。

1 法律上のルール

 では、まずは法律上のルールから見ていきましょう。

1-1 親の同意が必要

 未成年者の場合、契約に親の同意が必要となることは多くの方が知っているかとは思います。民法上では、未成年者は契約をする場合、親(親権者)の同意を求めています。このため、サロン側は、未成年のお客様の場合、両親の同意書を持参してもらうか、親と同伴してもらうなどの対策が必要となります。
 なお、2018年に法律が改正されて、成人年齢が20歳から18歳に引き下げることが決まりました。この法律は2022年4月より施行され適用が開始されることになります。

1-2 親の同意がいらない場合

 実は、エステサロンでも、親の同意がいらない場合があります。私が前にサロンのオーナー様から受けた質問で「どうして美容室は未成年者でも同意書を取っていないのに、エステサロンは同意書が必要なのか?」というものがありました。

 これは、民法のルールとして、子供はお小遣いのように、親から自由に処分してよいと決められたお金については、未成年者であっても自由に契約できるという例外があるのです。法律の世界では、エステのような契約をするだけでなく、自動販売機でジュースを買うのも、切符を買って電車に乗るのも、契約が成立していると考えます。そして、このようなルールがない限り、未成年者は一人で何もできなくなってしまうので、大きくない金額であれば一人で取引することができるとされているのです。

 問題は、未成年者はいくらまでなら親の同意なしに自由に処分できるのか、ということですが、これは明確な決まりがあるわけではありません。ただ、美容室やネイルサロンの場合、1回の金額が通常1万円程度に収まることが多いと思いますので、この程度だったら親の同意までは不要かと思います。
 同じように、エステでも、初回のコースで1万円以内なら親の同意はなくても問題ないかと思います。ただ、複数回のコースなどで総額が5万円を超える場合には、お小遣いの範囲とはみなされないので親の同意が必須になってきます。

1-3 同意を取らなかった場合

 このように、エステサロンにおいて、高額なコース契約で親の同意を取らなかった場合、民法のルールでは、いつでも取り消すことができるとされています。 つまり、契約は初めからなかったことになり、すでにお金をいただいている場合には全額を返金しなければなりません。
 すでに施術を行っている場合であっても、その分を差し引くことはできず全額返金となります。

2 トラブル防止のため

 民法のルールでは、親の同意がいらない場合もあると説明しましたが、トラブル防止のためにはやはりすべての契約において、親の同意を取っておくことが安全といえます。

2-1 保護者からのクレーム防止

 保護者の方には、痩身エステや脱毛など子供に身体上の悪影響を及ぼすかもしれないと考える方は少なくありません。このような場合、法律上問題がなかったとしても後で親からクレームが入ることがあり対応を求められることもあるので、トラブル防止のためエステの場合は親の同意を取っておくことが安心といえます。

2-2 しつこい勧誘をしたと言われないため

 エステサロンでは、しつこい勧誘を行われたとして消費者センターに駆け込むような事態が今でも件数的には多いです。私が知っている、エステサロンの店舗ではそのような店はほとんどなく、悪質な業者はほんの一部かとは思いますが、やはりエステサロン全体の苦情件数の多さは目立ちます。
 このため、親の同意を取っておくことで、親がエステ契約をすることを冷静に判断する機会を与えることになり、「しつこい勧誘をおこなったから契約したんだ」というクレームを防止することになります。

3 まとめ

 このように、親の同意をとることは、民法のルールでは金額が低いコースでは必ずしも必要ではないけど、トラブル防止のためには、全部のコースで親の同意を取っておくことが安全です。日本エステティック機構などの団体でも、未成年者のお客様には場合を分けずに親の同意を取っておくように指導しています。
 親の同意の取り方については、書面だけにするのか、電話でも確認するのか、親の同伴まで求めるのかはサロン側の判断で決めることができます。
 これを機会に、親の同意書や、同意の取り方の店舗ルールを見直されて、未成年者のお客様でも安心できるようなお店作りをしていってください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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