「貴医療機関のウェブサイトに関する注意喚起について」とは?対応は?

 平成30年6月から改正された医療広告ガイドラインが運用されることになって、ある程度期間が経ってきました。そして、私の弁護士事務所にもチラホラと、ウェブサイトの注意喚起に関する書面が届いたという連絡が入ってくるようになりました。
 この書面とは、「貴医療機関のウェブサイトに関する注意喚起について」と記載されており、発送元は「一般財団法人日本消費者協会」というところになります。この書面は、厚労省が委託している医療機関ネットパトロールという事業の一環で、決して詐欺的な書面ではありません。
 なんか怪しい書面だなと思って、放っておくと後々、都道府県の保健所から通知が来て行政処分となる可能性があるなど大変なことになってしまいます。

今回は、「貴医療機関のウェブサイトに関する注意喚起について」という文書を受領した医療機関の皆様に、弁護士の立場から取るべき対応方法や注意点を解説します。

1 医療機関ネットパトロールとは

 まずは、今回の通知文書の根拠となっている医療機関ネットパトロール事業について説明していきます。
 

1-1 厚労省が行うネットパトロール事業

 医療機関ネットパトロールとは、医療機関の広告の中でも特にウェブサイトについて、医療広告ガイドラインに違反していないか監視するための事業です。
医療機関ネットパトロールHP

 平成29年8月24日より厚労省が開始した事業で、医療広告ガイドラインが改正されたことに併せて、監視体制もこれからは、強化されていくことになります。
 特に、厚労省もこの事業の狙いは、「自由診療を提供する医療機関のウェブサイト」とはっきりいっていることから、つまりは美容医療クリニックの監視体制が強化されることになると予想されます。

1-2 一般財団法人日本消費者協会とは

 この医療機関ネットパトロールですが、厚労省が自ら行うのではなく民間業者である一般財団法人日本消費者協会に委託しています。
 ですので、まずはこの一般財団法人日本消費者協会から、各クリニックに通知が行くことになります。

※通知書面の参考(下記サイトの別添1)
荒川区HP

 最近では「~協会」などと名乗って、怪しい通知がよく届くようになりましたが、この書面は決して詐欺ではなく、しっかりと対応が必要となります。

2 通知文書を受け取った場合の対応

 では、通知文書を受け取った場合、クリニックとしてはどのように対応するべきなのでしょうか。

2-1 原則として1か月以内に対応すること

 現在の運用としては、日本消費者協会が、医療機関に通知を行ってから1か月後に改善状況を確認して、改善されない場合には自治体に通報することになります。
 自治体に通報されてしまうと、下記で説明するように、行政指導をされるおそれがあることや、今後も定期的な監視を受け続ける対象に入ってしまうかもしれません。
 ですので、できる限り早急に対応して、指摘された箇所を1か月間で修正するようにしてください。

2-2 修正の方法がわからない場合

 医療広告の規制については若干わかりにくい箇所があり、ガイドラインでも何が書いてあるのかわかりにくいところがあります。送られてきた通知文書でも、どのように修正したらいいかわからない場合は、自身の管轄する保健所に問合せる方法があります。
 ただ、保健所の方でも「ガイドラインをよく読んでください」などと親切に対応してくれないことがあるというのを聞いたことがあります。このような場合には、医療広告に詳しい弁護士などの専門家に聞くことも対応の一つです。

2-3 できれば報告結果を日本消費者協会に報告

 クリニックの方で、頑張って1か月でサイトの修正をしても、そこで終わりではなく、もう一つやったほうがよいと思うのが、日本消費者協会への報告です。
 この報告は義務ではなくあくまで任意なのですが、クリニック側としてもどこをどのように修正したのか、という点を明記することによって改善の意思をアピールすることができます。

2-4 どうしても間に合わない場合には、延期を求める

 どうしても1か月以内に間に合わない場合には、日本消費者協会へ連絡を取って期限を延ばしてほしいとお願いすることが考えられます。期限を延ばしてくれるかどうかは確実ではないですが、間に合わない場合であっても改善の意思を示して、自治体へ通報されることを何とか防ぐことが重要です。

3 対応しなかった場合には

 最後に、通知文書に対応しなかった場合のことを説明します。

3-1 自治体に情報提供される

 まずは、クリニックを管轄する自治体に、そのクリニックのサイトが違反しているということを通報されてしまいます。

3-2 自治体の処分

 日本消費者協会から情報を受け取った自治体は、まずクリニックに行政指導することになります。もし、保健所などの自治体から行政指導が来た場合には、何としてもそこで対応してください。
 この行政指導に対応しないと、広告の中止命令や、さらに悪質な場合には診療所の開設の許可の取消、または刑事処分が科されるおそれがあります。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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