エステティックの広告に関する規制(景品表示法、薬事法等)

最近、大手エステ会社の広告がニュースで取り上げられ、規制が厳しくなっているという話は、エステティック関係者の間で共通認識となっていると思います。

ただ、厳しくなっているとはいうものの、実際にどのような広告が問題となるのか?どこにその基準が書いてあるのか?その根拠は?といったものが見つからず、自社の広告が違反しているかどうか不安に思われている方も多いと思います。

このため、美容業に特化した弁護士が執筆する本サイトにて、エステティック広告についての広告の基準について、説明していきます。

 

1 エステティックの広告を規制する法律は一つではない

まず、はじめに説明したいのが、エステティックの広告を規制する法律は一つではないということです。エステティック業は、皆様ご存知の通り、医師や薬剤師、あんまマッサージ師のような国家資格制度とはなっておらず、所管する行政庁も複数にわたります。エステティック業を取り締まる基本となる法律が制定されていないため、関連する法規制は医師法、医療法、あはき法、薬機法、特定商取引法、消費者契約法、景品表示法など複数です。

このようにエステティック業においては、法規制が複雑に絡み合っていることが、広告基準をわかりにくくしている要因といえます。

 

2 まず押さえておきたいのは、景品表示法

関連する全ての法律をくまなくチェックすることは、普段の業務でも忙しいエステティック事業者にとっては非常に難しいことです。ですので、広告規制のポイントとして押さえておきたいのは、景品表示法と覚えてください。

景品表示法という法律は、エステティック業にかかわらずすべての業種における広告に関して規制する法律になります。この景品表示法における規制は複数ありますので、別の記事も参照していただきたいのですが、ここでは概略だけ説明します。

2-1 優良誤認

まず、景品表示法では、商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示(優良誤認表示)を規制しています。

例えば、

  • 「この施術が受けられるのは、日本でここだけ!」
  • 「わずか2週間で8キロ痩せることができます」
  • 「-10歳の肌になることをお約束します」

といった表現です。これらの表現は、商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、根拠がないにもかかわらず、そのような効果が出ることを保証する宣伝であり、不当表示となります。

2-2 有利誤認

次に、商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示(有利誤認表示)を規制しています。

例えば、

  • 「今だけ痩身コースが1回5000円」と広告しているが、実は常に5000円である場合
  • 「日本でこの施術を受けられるのはここだけです」と広告しているが、他でも施術が受けられる場合

これらの表現は、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競業者のサービスよりもあたかも安いか、効果的であるかのように偽って宣伝する行為であり、不当表示となります。

 

3 薬機法(旧薬事法)、医師法

先ほどもご説明しましたが、広告の問題となるとき、景品表示法以外の法律として、薬機法(旧薬事法)や医師法にも触れないようにと聞かれた方も多いかと思います。

薬機法(旧薬事法)、医師法とは、エステティック業を直接取り締まる法律ではありません。ただ、これらの法律では、医師免許を持った医師や承認を受けた医療機器、医薬品でしか行えない広告が定められています。

なお、薬機法(旧薬事法)、医師法に違反する広告ということは、合理的根拠を見出しがたいことがほとんどと思われるので、景品表示法にも違反していることになります。

3-1 規制される内容

当然のことながらエステティックは医療行為とは異なります。傷や病気の治療のため、医学に基づいて人の体にメスを入れたりする行為は、医師免許を持った医師しか行うことができません。

エステにおいて医療行為を行えないということは、エステの広告においても医療行為ができるかのような表現をすることも行えないことになります。

このため、

  • 脂肪を分解できる
  • 毒素を排出して肌荒れを治すことができる

などといった表現は、医療行為と誤認される恐れがあるとして規制の対象となります。

3-2 美容機器について

また、エステの施術の際に利用する美顔器や痩身マシンは、体のボディーメイクを行う範囲内で機器を使用する必要があり、医療機器とは異なるものです。

このため、エステの広告においては、薬機法(旧薬事法)、医師法等の規制により、これら医療行為や医療機器でしか認められていない表現(例えば、細胞を内側から活性化する、むくみを解消してシミも消すなど)を行うことができません。

3-3 エステ店舗内で化粧品や美容機器を販売する場合

エステ店舗内では、施術サービスのほかに、化粧品やオイル、クリームの販売であったり、小型の美顔器など美容機器の販売を勧めることも多いかと思います。

これらの販売においては、薬機法(旧薬事法)の適用が直接及ぶことになります。薬機法においては、エステの施術サービスとは異なり、認められている広告の範囲が決まっておりますので、この範囲を十分守って広告を作成する必要があります。

 

4 各種団体による自主基準

これまで、ざっとエステティック業の広告基準について説明してきましたが、法律では、景品表示法でサービスの品質を偽らないこと(景品表示法の優良誤認)、実際よりも有利であると偽って宣伝しないこと(景品表示法の有利誤認)、医師や医療機器、医薬品の効果を広告しないこと(薬機法(旧薬事法)、医師法)というところまでしか、定められておりません。

4-1 エステティック業には、統一基準がない

医療機関や、医薬品、化粧品関係については、法律以外に、医薬品等適正広告基準や医療機関ホームページガイドラインなどが厚生労働省から定められていたりして、もう少し具体的な基準が明記されております。しかし、エステティック業に関しては、これらの基準やガイドラインが定められていないのが現状です。

また、消費者庁に対して広告のガイドラインを作成するよう各種方面から要請が出ておりますが、こちらもいまだ作成されるには至っていません。

4-2 各種団体による自主基準

このようなエステティック業の広告表記規制における現状から、エステティック業の団体が自主基準を定めて公表しております。

これらの自主基準は、法律とは異なるものの、問題となる広告が実際に違反しているかどうかを判断する際の材料となる可能性はあるので、注意が必要です。具体的には、日本エステティック工業会が、「エステティック機器の広告表記に於ける指針」、エステティック業振興協議会が「エステティックの広告表記に関するガイドライン」を発表しています。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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