(続報)未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告について

 平成30年6月から改正された医療広告ガイドラインが運用され始めましたが、依然として不透明な箇所もいくつかありました。
 特に、未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告については、医療広告ガイドラインだけ読んでも広告表記の内容に曖昧な部分がありました。本サイトの過去の記事未承認医薬品・医療機器の広告規制について~これだけはおさえておきたい美容医療広告改正⑤~でも、医療広告ガイドラインに則した説明の記事を作成しましたが、説明が難しく、私が講演した医療広告のセミナーの中でも受講者の先生達からの特に質問が多かった箇所でした。
 そのような中、今回、厚労省から医療広告ガイドラインに関するQ&Aが新たに発表されて、グレーな箇所に対する説明が追加されています。特に、未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告については、このQ&Aにおいて、新たにルールが追加されています。
 今回は、未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告の記載方法について、厚労省から発表された最新の医療広告ガイドラインに関するQ&Aで追加された事項も踏まえて、弁護士の視点で解説していきます。 

1 今回発表された未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告ルール

 まず、医療広告ガイドラインに関するQ&Aで新たに追加された広告ルールから解説していきます。
 このQ&Aでは、未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告は、次の点を守れば、限定解除が可能とされています。
 

1-1 ルール①:未承認医薬品等であることの明示

 まず、施術等に用いる未承認医薬品や医療機器が、薬機法上の承認を得ていないものであることを明示する必要があります。

1-2 ルール②:入手経路等の明示

 次に、入手経路等の明示です。Q&Aでは、さらに細かく次の事項を記載する必要があるとされています。

  1. ・医師等の個人輸入による未承認医薬品等を用いる場合は、その旨を明記すること。
  2. ・同一の成分や性能を有する国内承認された医薬品等があり、その効能・効果で用いる場合であっても、入手経路について明示すること。
  3. ・個人輸入等により入手した場合は、その旨を明示すること。
  4. ・厚生労働省ホームページに掲載された「個人輸入において注意すべき医薬品等について」のページ(※)を情報提供すること。
    (※)https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/healthhazard/

 未承認医薬品・医療機器の場合、多くは個人輸入の場合ですので、上記事項を記載することが求められるようになると思います。

1-3 ルール③:国内の承認医薬品等の有無の明示

 こちらは、同一の成分や性能を有する他の国内承認医薬品等があるか調査をして、その有無を記載することが求められています。また、その国内承認医薬品等がある場合に、当該医薬品等に流通管理等の承認条件が課されている場合には、その旨を記載することも必要です。

 これらの点は、輸入代行会社などによく確認して、記載するようにしてください。

1-4 ルール④:諸外国における安全性等に係る情報の明示

 最後に、当該未承認医薬品等が主要な欧米各国で承認されている場合は、各国の添付文書に記載された重大な副作用やその使用状況(承認年月日、使用者数、副作用報告等)を含めた海外の情報についても、日本語で分かりやすく説明することが必要とされています。
 また、Q&Aでは、主要な欧米各国で承認されている国がないなど、情報が不足している場合は、重大なリスクが明らかになっていない可能性があることを明示することも求められています。

 こちらの点も、医師の皆様は医薬品や医療機器を使用する場合にリスクや副作用について十分説明を受けているかと思いますので、その点を広告にも表記するようにしてください。

2 その他の注意事項

 では、次に今回の医療広告ガイドラインに関するQ&Aの発表を踏まえて、広告表記する際のその他の注意点を説明していきます。

2-1 あくまで限定解除しか認められていないこと

 未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告は、あくまで限定解除の中でしか認められていないことが大前提となります。
 このため、医療機関のHPなど患者側が自ら求めてくる広告でしか、未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告はできません。テレビCMや折込広告など、これまで限定解除が認められてこなかった広告群の場合、未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告ができないことに代わりはありません。

 また、限定解除の基本的な要件である

  1. ① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. ② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  3. ③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
  4. ④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

の4つの要件は守る必要があります。

2-2 承認を得た範囲内でないと未承認と同じ扱いとなる

 未承認医薬品・医療機器とは、国内承認を一切受けたことがないものだけでなく、当該効能・効果への承認がない適応外使用の場合も含まれます。
 このため、承認を得ている医薬品・医療機器であっても、承認が得られている範囲をよく確認して、その範囲内の使用であるかどうか注意して下さい。

2-3 医薬品、医療機器の販売名の記載

 今回のQ&Aで、未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告において、医薬品、医療機器の販売名の記載はOKという扱いになりました。
 以前の本サイトの記事では、広告ガイドラインを読むと医薬品、医療機器の販売名の記載はNGとなるが、それは患者側の医療選択の自由を奪うのでおかしいのでは、と記載していました。ただ、今回のQ&Aでは販売名の記載が認められることがはっきりしましたので、これまでの取扱いから大きな変化を求められることにはならなそうです。

3 まとめ

 今回の医療広告ガイドラインに関するQ&Aによって、未承認医薬品・医療機器の治療に関する広告のルールがかなり明確になりました。
 医療機関側からすると、医療機関のHPなどでは、医薬品、医療機器の販売名の記載は従来どおり可能となったので、広告方法ががらっと変わることは避けられることになりました。
 ただ、今回のQ&Aで新たに追加された広告ルールに関しては、記載すべき内容も多いので、どのように表記するかは早急に検討する必要があります。特に、医療広告ガイドラインでは、患者側に対してリスクの点も含めて情報提供することが求められているので、あまり細かい字で書くなど、患者側に読みにくいようであったら指摘が入ることも予想されます。
 
 広告ガイドラインやQ&Aを守った広告にして、わかりやすいHP作成を心がけるようにして下さい。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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