【改正】化粧品広告におけるビフォーアフター

ここ数年は、医薬品等適正広告基準の改正だったり、医療法の改正だったり毎年のように広告における重要な変化があります。化粧品広告においても、平成29年9月に薬機法における広告ルールを定めた医薬品等適正広告基準が改定されて、ビフォーアフターも一定の範囲内で認められるようになりました。特に、化粧品のビフォーアフターについては、平成30年8月に厚労省からの通達文書でビフォーアフターの注意点がより明確になっています。
今回は、現時点の化粧品広告におけるビフォーアフターのルールとその注意点について、弁護士が解説していきます。

1 化粧品広告におけるビフォーアフターのルール

まず、厚労省から発表されている改正された化粧品広告のビフォーアフターのルールから見ていきましょう。

1-1 改正後の医薬品等適正広告基準

医薬品等適正広告基準では、ビフォーアフターについて、次のように記載しています。

(4)図面、写真等について
使用前、後に関わらず図面、写真等による表現については、承認等外の効能効果等を想起させるもの、効果発現までの時間及び効果持続時間の保証となるもの又は安全性の保証表現となるものは認められない。

表現方法からは少しわかりにくいですが、効能効果の表現や保証表現は禁止としていますが、それら以外の表現について禁止とされていません。
このように、化粧品広告においても、ビフォーアフターが一定の範囲で認められることになりました。これまで化粧品広告は使用中の写真ならOKだがビフォーアフターの広告は一切禁止と考えられていましたので、大きな変化です。

1-2 厚労省からの追加の通達

さらに、医薬品等適正広告基準が改正された後、平成30年8月8日に厚労省から次のような通達が発表されました。少し長いですが、引用しておきます。

  1. Q1 医薬品等の効能効果等を広告する場合、年齢印象をイラスト及び写真を用いて説明する表現において、広告上で良い印象を受けるものと悪い印象を受けるものを並べて記載する表現は認められるか。
  2. A 良い印象のイラストと悪い印象のイラストを並べて記載することや、異なる部位の写真で印象が良いものと悪いものを並べて記載することで製品による効果と結びつけて受け取られることを企図したものは、それが、使用前後の写真等の表現であるかどうかを問わず、医薬品等適正広告基準第4の3(5)に抵触すると判断される場合には、指導対象とすべきと解する。
    また、こうしたイラストや写真等は、医薬品等適正広告基準第4の3(1)及び3(2)などに抵触しないかどうかも併せて判断し、必要に応じて、指導すべきである。

この通達からしても、化粧品広告においてビフォーアフターが一定の範囲で認められることが前提となっています。
また、この通達で記載されている「広告上で良い印象を受けるものと悪い印象を受けるものを並べて記載する表現」とは、少し前まで流行っていた別人によるビフォーアフターを指しているものと考えられます。こちらについては、効能効果の保証となるので今後は使えないことが明確になりました。

2 ビフォーアフターの具体例

先ほど説明した、平成30年8月8日に厚労省の通達では、ビフォーアフターの具体例の記載も記載されています。

2-1 認められるケース

厚労省では、次のようなケースではビフォーアフターは使うことが認められると考えられています。

  1. ○化粧品の染毛料、医薬部外品の染毛剤の広告において、使用前・後の写真を用い、色の対比を行っている場合。
  2. ○洗浄料(化粧品的医薬部外品(以下、薬用化粧品という。)等)の広告において、肌が汚れた状態の写真と洗浄後の肌の写真などを使用する場合。
  3. ○化粧水、クリーム等(薬用化粧品等)の広告において、乾燥した角層と、保湿後の角層の図面などを使用する場合。
  4. ○シャンプー(化粧品)の広告において、フケがある頭皮写真と、シャンプー使用後の頭皮写真などを使用する場合。
  5. ○「制汗」という効果効能の表示が認められた腋臭防止剤の広告において、無塗布の腋と腋臭防止剤を使用した腋の写真を使用する場合。

認められている例としては染毛料や、化粧水を使用した後の保湿の状態、シャンプーの使用後の状態などで、これらは、基本的に化粧品広告で認められている56の効能効果の範囲内の記載となっています。
化粧品広告における56の効能効果について詳しく知りたい方は、化粧品広告で記載できる56の効能効果 ~【薬事広告対策】化粧品編③~を参照してください。

2-2 注意が必要な点

使用できるビフォーアフターの具体例を紹介しましたが、通達では、次のようなケースではビフォーアフターを使用できないとされています。

  1. ○「メラニンの生成を抑え、シミ、ソバカスを防ぐ」という効能表示が認められた薬用化粧品の広告において、シミ・ソバカスのない肌と、製品使用後に紫外線暴露してもシミ・ソバカスが目立たない肌の写真を使用する場合。
  2. ○「ひび・あかぎれを防ぐ」という効能表示が認められた薬用化粧品の広告において、ひび・あかぎれのない肌、製品使用後もひび・あかぎれのない肌及び無塗布でひび・あかぎれした肌の写真を使用する場合。

これらは薬用化粧品についての具体例ですが、いずれも使用後ある程度の期間が経ってからでないと効果がみえないものとなっています。つまりその化粧品の効果として、シミ・ソバカスを防ぐなど「予防」の効果が認められているものであり、予防の効果はビフォーアフターの写真では表現することができないと考えられているため、禁止となっています。
このように、効能効果の範囲内であっても予防についてはビフォーアフターの写真として利用できないこととされています。

3 まとめ

このように、化粧品広告において、ビフォーアフターは一定の範囲で認められることになりました。なお、ビフォーアフターの写真は、平成30年に施行された医療広告においても認められていますので、適切な使用方法であれば今後も化粧品広告で使用できる流れは継続していくものと考えられます。
ただ、ビフォーアフターなら何でもOKというわけではなく、化粧品において認められる効能効果の範囲内までであったり、効果発現までの時間及び効果持続時間の保証となるもの又は安全性の保証表現となるものは認められないという制限がついています。
最近でも、化粧品広告のビフォーアフターは認められていないでしょうと誤解されている方は多いので、正しい理解のもとで効果的な広告を作るようにしてください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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