エステサロンの広告で「ビフォーアフター」写真は使えるのか

エステサロンでの広告では、ビフォーアフターの写真をよく見かけます。
施術前後の比較写真を載せることで、お客様に施術の効果を効果的に伝えられるので、これまでにもよく使用されている広告手法かと思います。

ただ、最近、広告に関する規制が厳しくなってきたといろいろなところで耳にしたり、ネットの情報に触れられた方は多いと思います。

私の弁護士事務所にも、そのような情報に敏感なサロン経営者の方々から

  1. 「ビフォーアフターは広告で使っても問題ないでしょうか?」
  2. 「ビフォーアフターは禁止されたと聞いたが本当でしょうか?」

と相談を受けることがあります。

エステの広告については、法律的にもわかりにくい面があるので、不確かな情報がいろいろなところで出回っているのが現状かと思います。

今回は、いろいろと情報が錯綜しているエステでのビフォーアフターに関する広告規制について、美容系に特化している弁護士が、注意点について解説していきます。

1 ビフォーアフターは禁止されているのか?

結論から言うと、エステサロンでビフォーアフターの写真を使って広告することは、禁止されているわけではありません。
まずは、エステサロンに適用される法律のルールから見ていきましょう。

1-1 エステサロンと薬機法の関係

エステサロンの経営者様は、「薬事法」という法律を聞いたことがあると思います。
エステサロンの広告に「薬事法」が適用されると思っている方は多いのですが、2つの意味で誤りです。

まず1つめは、「薬事法」は、平成25年に改正されて、現在は「薬機法」(「やくきほう」と略して読む方が多いです。)という名称に変更しました。
(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)

ですので、現在は「薬機法」が適用されるのであり、「薬事法」が適用される事はありません。
なお、法律の名前は変わりましたが、広告部分のルールは薬事法と薬機法で大きく変化があったわけではありません。

次に2つめは、エステの施術サービスに「薬機法」は適用されません。
薬機法は、「医薬品」、「医薬部外品」、「化粧品」、「医療機器」を対象にしています。
これらは、全て商品のような形のある物で、エステ施術のような形のないサービスは適用対象としていません。

このように、エステサロンの施術サービスには薬機法(旧薬事法)は適用とならないのです。
ただ、化粧品や健康食品の物販には薬機法のルールが適用されますので、エステサロンで化粧品や健康食品の物販をしている方は、化粧品を販売する広告には注意が必要です

1-2 エステの施術で適用される法律は?

エステの施術では、薬機法(旧薬事法)は適用されないと説明しましたが、それでは適用される法律のルールは何かというと、「景品表示法」という法律になります。

この景品表示法という法律は、エステサロンだけでなく、広告において広く一般的なルールになります。

景品表示法のルールの内容は、商品やサービスの品質、価格について

  1. ・実際よりも優れていると偽って宣伝
  2. ・根拠がないにもかかわらず、そのような効果が出ることを保証する宣伝

という不当表示を規制するものです。

詳しく知りたい方は、優良誤認とは(景品表示法)の記事もご参照ください。

なお、景品表示法に違反すると、措置命令として消費者庁などのHPに公開されることもあります。
また、最近は課徴金といって、不当な表示で売り上げた金額の一部を国に支払わなければならない制度も新設されています。

1-3 美容医療の場合

エステサロンは「景品表示法」が適用されるのですが、美容医療クリニックの場合は「医療法」という景品表示法とは違う法律の適用もあります。

昨年の平成30年は、この「医療法」が改正されたことに伴い、美容医療を始めとした病院・クリニックの広告ルールが改正されました。
この広告ルールでは、一時期、医療広告においてビフォーアフターが全面的に禁止になるかもというニュースが広まった時期があり、美容医療クリニックでもビフォーアフターは禁止になるとざわついていました。

ただ、最終的には、医療広告においても、ビフォーアフターは全面的な禁止とはならず、副作用や料金などを写真の近くに表示するという条件を守れば認められることになりました。

このように、美容医療クリニックでも、ビフォーアフターの写真は掲載が条件付きとはいえ可能となっています。
この流れからすれば、エステサロンでもビフォーアフターの写真は、将来的に条件が付く可能性はありますが、全面的に禁止されるということにはならないと予想されます。

2 ビフォーアフターを掲載する場合の注意点

エステサロンの施術でビフォーアフターの広告は禁止となっていないことを理解してもらったので、次は注意点について説明していきます。

景品表示法が適用されるので、問題なのは、

  1. ・短期間で急激な変化があるかのような表現
  2. ・実際のお客様であっても、特別な例を載せる
  3. ・「ニキビ跡を撃退しました」「骨を矯正できます」などと医療行為を誤認させる表現
  4. ・虚偽のお客様の情報を載せる

という場合です。

それでは、詳しく注意点を見ていきましょう。

2-1 痩身効果の基本的考え

まず、短期間で急激な変化があるかのような表現の問題です。
その中でも、多くご相談を受ける「痩身効果」という表現について。

そもそも広告を取り締まる行政側は、エステの施術だけで痩せることは科学的にあり得ないという考えをもっています。

つまり、痩せるためには、

  1. ①カロリーの摂取量を減らすか
  2. ②運動消費量を増やす

ことでしか体重減少はあり得ないということです。

このため、エステサロンにおける広告もこの考えを踏まえて作成する必要があります。
具体的には、施術だけで痩せるということにするのではなく、施術前後に食事制限や運動量について指導すると明記することをおすすめします。

  1. 例①:食事や生活習慣の改善ポイントもお客様のお悩みや状態に合わせてアドバイスしています。エステティシャンとお客様が二人三脚で目標に向かって頑張るエステサロンです。
  2. 例②:エステティシャンのアドバイスのもと自己管理をしっかりとされた方が理想を叶えております。

2-2 特別な例を載せることは注意

ビフォーアフターの施術前後の写真は、サロン側としたらできるだけ結果が出たお客様の数字を載せたいところかと思います。

ただ、景品表示法のルールからすると、一般の顧客の平均値から特に外れている数字を掲載してしまうと、裏付けとなる合理的根拠のない表現となり、不当表示に該当してしまいます。

このため、施術を受けた人のほとんどが効果を得られるような表現にする必要があります。
また、どのような施術メニューをどのくらいの期間行ったのか明記することも重要です。
「例:2か月間で9日間の骨盤ダイエットを受講した結果」

なお、広告の定型文として、「※個人差があります」と注意書きを記載する例は多いかと思います。
ただ、この「※個人差があります」と記載しても不当表示を免れることにはならないので、気をつけてください。

2-3 医療行為について

また、痩身以外のビフォーアフターとして、医療行為と思われる効果を記載しないことも注意が必要です。

特に、小顔矯正の事例では、ビフォーアフターの写真とともに「頭蓋骨が矯正できる」という広告文を掲載していた業者が過去に摘発されていますので、ご注意ください。

小顔矯正の過去の摘発事例を詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてチェックしてみてください。

3 まとめ

今回は、エステサロンでの「ビフォーアフター」の写真のルールを見ていきましたがいかがでしたでしょうか。

エステサロンでも、基本的にはビフォーアフターの写真を掲載することは可能ですが、痩身の効果を強調しすぎないことや、医療効果を掲載しないなど押さえるポイントを理解してもらって、不当な表示にならない広告を掲載するようにしてください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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