メーカーや製造元の説明をそのまま広告内容にしてよいのか?
美容業界においては、化粧品や健康食品など自社で工場をもって販売しているところは少なく、メーカーから商品を仕入れて販売したり、OEMによる製品開発が盛んな業界であります。
このようなメーカーや卸業者から商品を仕入れたり、製造依頼して販売している業者様にとっては、商品の説明を詳しく聞いて、お客様に対する広告内容を検討していることかと思います。
ただ、製造元や卸業者からの説明を鵜呑みにしていた場合、思わぬ落とし穴があります。今回は、複数の業者が関係する美容業界において、メーカーや製造元の説明をそのまま広告内容にしてよいのか、景品表示法に絡めて説明していきます。
【目次】
1 景品表示法上の考え方
まず、広告一般を規制している景品表示法からみていきましょう。
1.1 景品表示法上における広告の表示主体
景品表示法における一番有名な優良誤認を規定している条文は次のとおりです。
(景品表示法5条1項)
商品又は役務(中略)の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良である(中略)と示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
また、前回の記事でも見た通り、景品表示法では、規制対象である広告を次のように規定しています。
(景品表示法2条4項)
この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件(中略)について行う広告その他の表示(中略)をいう。
1.2 規制対象の主体
このように、景品表示法上の規制対象は
- ①一般消費者を対象に
- ②自己の供給する商品または役務について
表示を行った事業者のことを指します。
それでは、以下小売店舗、メーカーや製造元に分けて詳しく見ていきます。
2 小売店舗の責任
まず、小売店舗から見ていきましょう。
2.1 メーカー・製造元の説明を信じた場合
景品表示法は、一般消費者を保護するものであり、また刑事罰を定める法律とも異なります。法律も誤認される表示であれば不当表示となると定めており、事業者側の不注意があったかどうかは問われておりません。
このため、メーカー・製造元の説明を信じて表示した場合であっても、一般消費者向けに販売した事業者は景品表示法の違反となる可能性があります。
2.2 過去の事例
美容業界とは異なりますが、過去に衣料品の小売業者が、商品の卸業者から、「イタリア製」であると説明を受けて、自己の商品に「イタリア製」と表示していたが、実際にはルーマニアにおいて縫製されたものであり、イタリア製ではなかったという事案があります。
この事案は、公正取引委員会から排除命令を受けて、その後小売業者が裁判でも争っています。
ただ、裁判でも、
- ①自ら若しくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者
- ②他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者
- ③他の事業者にその決定を委ねた事業者
も含まれると判示して小売業者の責任を肯定しました。
3 メーカー、製造元の責任
次に、消費者向けに販売していないメーカーや製造元はどうでしょうか。
3.1 基本的考え
上で見た通り、景品表示法は、一般消費者を守ろうとしているのであり、事業者は守られるべき対象にはなっていません。このため、景品表示法において対事業者向けの広告は基本的に規制対象とはなりません。
3.2 例外的に責任を問われる場合
ただ、事業者間における取引においても、売主の方が情報を持っているケースが多いのは間違いありません。また、購入した事業者が一般消費者向けにさらに販売する場合、最終的には消費者に重大な被害がもたらされる危険があります。
このため、事業者向けにしか取引をしていない業者であっても責任を追及される場合があります。
現に先ほどのイタリア製の事案の場合、小売業者だけでなく、卸業者も併せて公正取引委員会から処分を受けています。
- エステサロンの広告で「ビフォーアフター」写真は使えるのか - 2019年2月6日
- エステサロンが歯のセルフホワイトニングを導入する時の注意点 - 2019年1月30日
- スタッフがインフルエンザになった場合、会社は出勤停止に出来るのか - 2019年1月23日