最近話題!?景品表示法における課徴金制度とは

 最近、「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品に対する措置命令と、今年に入っての課徴金納付命令が出たことで、景品表示法における課徴金制度の問い合わせが弊所にも多くなっています。
「葛の花由来イソフラボン」の措置命令については、機能性表示制度との絡みや、打消し表示であったり社告の使い方など様々な論点がありますが、今回はまず課徴金制度の概要を解説していきます。

1 課徴金制度とは

 課徴金制度とは、国が法律に違反した事業者などに対して課す金銭的不利益のことをいいます。

1-1 罰金と何が違うの

 国が支払いを命じる似たような制度で「罰金」がありますが、「罰金」は刑罰の一種であり刑事手続上で課されるものです。課徴金は、刑罰ではなく行政上の処分の一種なので、国に支払いをするという点は同じですが、その性格が異なります。

 課徴金制度は、日本の法律では数は多くなく、カルテルや入札談合などの独占禁止法違反行為や、インサイダー取引や相場操縦などの金融商品取引法違反行為などに限られています。

1-2 景品表示法の課徴金

 景品表示法上の課徴金制度は、景品表示法が改正されて、平成28年4月1日からその運用が開始されました。景品表示法上の違反した表示行為をした事業者に対して、国(正確には消費者庁)から課徴金を納付するよう命令する制度になります。

2 どういう場合に課徴金の対象となるか

 それでは、景品表示法上の課徴金はどのような場合に課されるのか見ていきましょう。

2-1 課徴金の対象となる行為

 課徴金の対象となる行為は、次の2つです。

  1. ①優良誤認表示:実際よりも商品サービスの品質・内容等を著しく良く表示すること
     例:「国内産原料のみ」と記載された商品が、実は「国内産の原料以外も混ざっていた」場合
  2. ②有利誤認表示:実際よりも価格等の取引条件を著しく有利に表示すること
     例:「お客様リピート率業界第1位」としていたが集計方法が適切でなかった場合

 以下では、①②をまとめて「不当表示」と呼びます。
 
 それぞれの詳しい内容については、
◯優良誤認表示→優良誤認とは(景品表示法)
◯有利誤認表示→価格を広告で記載するときの注意点

の記事をご参照ください。

2-2 エビデンスが必要(不実証広告規制)

 課徴金納付命令の場合においても、不実証広告規制の考えが取り入れられています。

 この不実証広告規制とは、広告の事業者に対して一定の期間(原則15日)を定めて、表示の裏付けとなる資料(エビデンス)を提出するよう求め、その資料が十分でないときは不当表示と推定される制度です。

 美容・健康事業者様ですと、「販売にはエビデンスが必要」ということは知られていると思いますが、その根拠はこの不実証広告規制という制度からきているのです。現在、健康食品分野等で消費者庁から公表されている違反事例は、ほぼこの不実証広告規制で不当表示と推定されています。

 この不実証広告規制について詳しくは、広告するには根拠が必要! ~不実証広告規制~の記事を参照してください。

3 課徴金が課される金額は

 次に、命令される課徴金の算定方法について、説明していきます。

3-1 算定方法

 課徴金額は、不当表示の対象となった商品・サービスの「売上額」に3%を乗じた金額になります。
 この「売上額」は、原則として、課徴金の対象となる期間に提供された不当表示の対象とされた商品またはサービスの料金を合計する方法によって算定されます。

3-2 課徴金が課される期間は

課徴金が課される売上の対象期間は次の①+②の期間になります(課徴金対象期間)

  1. ①:不当表示を行った期間(不当表示を始めた日からやめた日までの期間)
  2. ②:不当表示をやめた後に商品の取引を継続していた場合には、以下のいずれか早い日までの期間も加える
    ・不当表示をやめた日から6か月間
    ・不当表示による一般消費者の誤認を解消する措置(一般的には日刊新聞紙2紙への掲載)をとった日までの期間

4 課徴金が課されない場合

 上記のように、課徴金の対象となる不当表示をしてしまったとしても、実際に課徴金が課さ
れない場合もあります。

  1. [Ⅰ] 不当表示に相当の注意を怠った者でない場合
  2. [Ⅱ] 課徴金の金額が150万円未満である場合
  3. [Ⅲ] 不当表示をやめた日から5年間が経過した場合

以下、詳しく見ていきます。

4-1 不当表示に相当の注意を怠った者でない場合

 不当表示に相当の注意を怠った者でない場合には、課徴金は課されません。
 この相当の注意とは、広告表示の根拠となるエビデンスを適切に確認したかにより判断されます。
 具体的には、消費者庁が出しているガイドラインでは、商品メーカーが、実績があり信頼できる検査期間の性能試験検査の結果に基づいて表示を行っていたが、その結果が誤っており、不当表示となってしまっていた場合などが挙げられています。

4-2 課徴金の金額が150万円未満である場合

 上で見た計算式において算定した課徴金の金額が150万円未満の場合には、課徴金制度の対象とはなりません。つまり、売上額が5000万円未満であれば、課徴金は課されないということになります。

4-3 不当表示をやめた日から5年間が経過した場合

 不当表示をやめた日から5年間が経過したときは、課徴金納付命令を出すことはできなくなります。一種の時効のようなものです。

5 課徴金を減額させる救済制度

 景品表示法上の課徴金制度には、課徴金を減額することができる制度もあります。

5-1 自主申告制度

 不当表示があったことを事前に消費者庁長官に自主申告した場合には、課徴金の金額が2分の1に減額されます。

 この「事前に」、というがポイントなのですが、調査により課徴金が課されることを予知する前に行わなければなりません。このため、行政の調査が入ってからでは自主的に申告したとしても、この制度の対象にはならないので、実際には適用される場面は限定的なのではないかと思います。

5-2 自主返金制度

 この自主返金制度とは、不当表示を行った事業者が、消費者へ返金した場合にその返金額が課徴金額から減額される制度です。

 この返金方法は、詳細は割愛しますが、まずは返金計画を定め、それを消費者庁に提出して認定を受けるなど複雑な手続きになります。

6 まとめ

 課徴金制度については、運用開始からそろそろ丸2年が経とうとしていますが、納付命令が出た事案がいくつか出てきました。その中でも、健康食品、特に痩身効果を謳うものについては、消費者庁も目を付けているので、特に注意が必要となってきました。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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