化粧品の効能効果を保証する表現は違法か? ~【薬事広告対策】化粧品編⑤~

化粧品の広告においては、前回の記事でも解説したとおり、薬機法やその解釈基準である医薬品等適正広告基準により、効能効果について記載できる表現が56項目と決まっていて、厳しく制限されています。

では、56項目さえ守っていれば問題ないのでしょうか。答えは、残念ながらノーです。認められた効能効果であっても、どのように記載するかについても気を配っていく必要があります。
 また、化粧品では、肌のトラブルの原因になり、一時期は白斑問題も社会的に問題となるほど影響力が大きいです。このため、化粧品の製造販売会社は安全性について厳しくチェックしており、それを消費者に強く訴求していきたいところです。ただ、「安心・安全」などの言葉は消費者に誤解を与えやすいとして、こちらも制限されています。

今回は、これら化粧品の効能効果や安全性に関する表現方法について解説していきます。

1 効果効能を保証するような表現は原則禁止

まず、化粧品の広告において56項目の効能効果について記載する場合、その効果が出ることを保証するような表現が認められていません
 また、その化粧品が安全であることを保証する表現も認められていません。

【医薬品等適正広告基準】
(6)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現はしないものとする。

このように、化粧品広告において、効能効果等又は安全性を保証する表現は、原則禁止とされています。
 効能効果や安全性について表現できないなんて、あまりに表現方法が制限されていないかと思うかもしれません。ただ、上の医薬品等適正広告基準をよく見ると、禁止されているのは、「具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現」になります。絶対禁止なのではなく、原則禁止。そう、原則ということは例外もあるのです。

 

2 禁止される具体例

では、具体的にどのような表現が禁止されるか見ていきます。

2.1 一般的な表現

化粧品の一般的な表現の場合、性別や年齢、その他の条件を問わず、効能効果が確実であること又は安全であることを保証するような次の表現は認められません。

    ✕ 禁止される表示例

  1. ・安全性は確認済み
  2. ・安全性が高い商品となっています
  3. ・自信をもっておすすめです
  4. ・よく効きますので安心してお使いください
  5. ・これさえあれば肌の悩みを解決、トラブル解消!

2.2 データや実験例の表示

化粧品の開発においては、実験を繰り返し様々な臨床データを取っていることが多いです。ただ、データや実験例については、残念ながらたとえ事実であっても広告表現としては認められません。
 具体的には次のような、記載方法が禁止されます。

  1. 臨床データによって、100人中96人の肌荒れが改善されました。

データや実験例は、ある一定の環境下での数字に過ぎず、購入した消費者が同じ結果が出るとは限りません。ただ、データ等を示されると消費者にとってはそのような条件まではわからず、効果が出るものだと誤認するおそれがあるからです。

このため、様々な臨床データやテスト結果があったとしてもその表記はせずに、臨床試験をした事実やその実験最中の風景などの表示で止めておくのが無難です。

なお、話が少しそれますが、化粧品の開発には、広告表現で記載する効能効果のデータを用意する必要があります。この資料がないと、たとえ認められた56の効能効果の範囲であって薬機法的には問題がなくても、景品表示法の優良誤認として不当表示となるおそれがあるので、注意して下さい。

2.3 「低刺激」の表現

「刺激が少ない」、「低刺激」等の表現も安全性について誤認を与えるおそれがあるので、広告で表示することは制限されています。ただ、一律に禁止されているわけではなく、

  1. ⅰ 低刺激性等が客観的に立証されている場合
  2. ⅱ キャッチフレーズ等強調する場合の表現でないこと

であれば、表示することは可能です。

  1. ✕「刺激が少ない唯一の化粧水!」広告前面にフォントを大きくして赤色で表示
  2. 〇「刺激から肌を守ります」広告の端に、フォントや色を控えめにして表示

2.4 「天然成分」「無添加」の表現

「天然成分」や「無添加」という言葉は聞こえが良くて、広告表現でも使いたくなる表現ではないでしょうか。ただ、「天然成分」といってもこの世の中には人間に害がある成分がたくさんあります。また、「無添加」といっても何を添加していないのか不明で不正確な表現になりがちです。「天然成分」「無添加」を使う場合も、安全性に誤認を与えやすいので次のような点に注意してください。

    ✕ 禁止される表示例

  1. ・天然成分だから安心・安全
  2. ・天然成分だから刺激が少なく安心して利用できる
  3. ・無添加だから肌質は問いません
    〇 認められる表示例

  1. ・●●という天然成分配合
  2. ・保存料無添加(※添加していない成分を明記)

2.5 「アレルギーテスト済」の表現

化粧品等、「アレルギーテスト済み」、「ノンコメドジェニックテスト済み」、「皮膚刺激性テスト済み」等の表現も誤認を与えるおそれがあるので、広告で表示することは制限されています。ただ、一律に禁止されているわけではなく、次の事項を守れば表示可能とされています。

  1. ⅰ デメリット表示を同程度の大きさで目立つように併記すること。
  2. ⅱ キャッチフレーズ等強調する場合の表現でないこと。
    デメリット表示例

  1. ・全ての方にアレルギーが起こらないということではありません。
  2. ・全ての方にコメド(ニキビのもと)が発生しないということではありません。

3 最大級の表現の禁止

効能効果の保証表現と似ていますが、効能効果や安全性について、最大級の表現をすることも禁止されています。
 化粧品の効能効果や安全性については、単純に比較できるものではなく、消費者に誤認を与えないためです。

医薬品等適正広告基準
3(7)効能効果等又は安全性についての最大級の表現又はこれに類する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、最大級の表現又はこれに類する表現はしないものとする。

 禁止される具体例としては、

  1. ・最高の効き目
  2. ・無類の効き目
  3. ・過去に類を見ない抜群の効き目
  4. ・化粧品業界の最高峰
  5. ・比類なき安全性
  6. ・化粧品の王様
  7. ・化粧品のエース
  8. ・世界一、東洋一を誇る○○の△△

になります。

4 まとめ

上で見てきたように、薬機法は、化粧品の広告において効能効果や安全性について表現をかなり制限しています。化粧品の販売だけを考えるとついつい強い表現になりがちですが、後でその広告が問題となったら信用問題となって、会社には大ダメージとなってしまいます。

 ただ、効能効果や安全性についての表現は、全面的に禁止されているわけではないので、どのような場合であったら認められるのか、禁止されている例をじっくり検討して、消費者に誤解を与えない適切な薬事広告を作成してください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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