医療広告におけるビフォーアフターや体験談の表記~これだけはおさえておきたい美容医療広告改正④~
今回の医療法改正において、禁止の目玉となったのがビフォーアフターと体験談の禁止になります。この二つについては医療法改正が決まってからの一年間で厚労省内でも最後まで議論されていた箇所であり、規制の内容も変化がありました。
今回は、ビフォーアフターや体験談を中心に、医療広告で広告が禁止される表現について説明していきます。
【目次】
1 広告規制の考え方
まず、ビフォーアフターや体験談の話に入る前に、広告規制の考え方を復習して、ビフォーアフターや体験談が広告規制のどの段階で考慮するべきものなのか整理します。
1-1 広告規制の考え方(復習)
前回の記事では、広告規制の考え方として、次の事項を説明しました。
チェック①:広告の該当性
チェック②:患者側が求めて入手する情報であるか(限定解除)
チェック③:広告可能な事項であるか
図に表すと次の通りです。
1-2 チェック④:一律規制
チェック③で広告の可能な事項を検討したところで、最後にチェック④の検討に入ります。チェック④は、反対に広告してはいけないことの検討です。
このチェック④は、広告群Ⅰ、Ⅱのどちらであっても同じ内容なので、このサイトでは「一律規制」と呼ぶことにします。
1-3 一律規制の内容
チェック④の一律規制の内容は次の通りです。
・ビフォーアフター
・体験談
・虚偽広告
・比較優良広告
・誇大広告
・その他
2 一律規制の具体的内容
それでは、一律規制の具体的内容を一つずつ説明していきます。
2-1 ビフォーアフター
これは、「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等を広告をしてはならないこと」ということであり、いわゆるビフォーアフター写真等を意味するものです。
個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なるものであるので、誤認させるおそれがある写真等については医療に関する広告としては認められないものであることが基本的な考えになります。
2-2 体験談
まず、体験談の禁止とは、「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく体験談を広告をしてはならないこと」とは、医療機関が、治療等の内容又は効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することを意味するものです。
こうした体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療に関する広告としては認められないものであることが基本的な考えになります。
2-3 虚偽広告
虚偽広告とは、広告に示された内容が虚偽である場合を指します。
虚偽広告は、患者等に著しく事実に相違する情報を与え、適切な受診機会を喪失したり、不適切な医療を受けるおそれがあることから、罰則付きで禁じられています。
2-4 比較優良広告
比較有料広告とは、特定又は不特定の他の医療機関(複数の場合を含む。)と自らを比較の対象とし、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を広告することを意味するものです。
これは、事実であったとしても、優秀性について、著しく誤認を与えるおそれがあるために禁止されます。
2-5 誇大広告
誇大広告とは、必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告を意味するものです。
「人を誤認させる」とは、一般人が広告内容から認識する「印象」や「期待感」と実際の内容に相違があることを常識的判断として言えれば足り、誤認することを証明したり、実際に誤認したという結果までは必要としません。
2-6 品位を損ねる内容
品位を損ねる内容とは、費用を強調した広告や提供される医療の内容とは直接関係ない事項による誘引が具体例として挙がっています。
2-7 他の法律で禁止されている内容
最後に、他の法律で禁止されている内容についても医療広告では表現できないとされています。他の法律で禁止されているので当たり前の話ではありますが。
他の法律とはいろいろありますが、重要なのは景品表示法と薬機法になります。
景品表示法については、このサイトの別ページに詳しく記載していますのでそちらをご参照ください。
また、薬機法については、重要なのは未商品の医薬品・医療機器についてです。こちらについては長くなるので、詳細は追って記載します。
3 まとめ
以上のように、今回はビフォーアフターや体験談を中心としたチェック④:医療広告の一律規制について説明しました。
前回の記事と合わせてチェックポイントの説明が終わりましたので、チェックポイントの一覧を図で示します。
ビフォーアフターと体験談については、取り締まる側の国や都道府県も注意しているポイントですので、この点は抑えた広告にすることは早めに取り掛かられることをお勧めします。
- エステサロンの広告で「ビフォーアフター」写真は使えるのか - 2019年2月6日
- エステサロンが歯のセルフホワイトニングを導入する時の注意点 - 2019年1月30日
- スタッフがインフルエンザになった場合、会社は出勤停止に出来るのか - 2019年1月23日