化粧品に関する法規制(薬機法・景品表示法)の仕組み

化粧品の製造・販売に関しては、薬機法(旧薬事法)に注意しなければならないということを、ご存じの化粧品事業者様は多いと思います。ただ、注意しなければならない法規制は薬機法だけではなく、医薬品等適正広告基準だったり、景品表示法であったり、各種通達であったり、業界の自主基準であったりと様々です。

今回は、この中でもメインとなる薬機法と景品表示法を中心に、化粧品・コスメに関する法規制の仕組みを説明していきます。

1 薬機法(旧薬事法)の概要

まずは、薬機法から見ていきましょう。

1.1 薬機法とは

一般的に薬機法と呼ばれる法律は、正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。
昭和35年に現在の元となる旧薬事法が制定され、その後時代の変化に合わせ何度か改正がなされ、平成26年11月からは現在の薬機法に改正され施行されました。この法律では、化粧品だけでなく、医薬品、医療機器等についても規定されています。

このように、以前は「薬事法」と呼ばれていた法律が改正され現在に至っています。正式名称だと長いので、省略して「薬機法」だったり、「医薬品医療機器等法」という呼び名が一般的になっています。当サイトでは、「薬機法」と統一して説明していきます。

2 薬機法における化粧品への具体的ルール

それでは、具体的に化粧品のルールを見ていきましょう。

2.1 ①製造販売できる事業者の要件と報告義務

化粧品は、皮膚や頭髪に直接つけたり、塗ったりするものなので、体内に入っても害はないか、皮膚に炎症がおきないかという安全性を確認した上で製造されています。このため、薬機法により、化粧品は許可を受けたものでなければ、業として化粧品の「製造」や「製造販売」をしてはならないと定められています(薬機法12条13条)。

製造業」の許可取得には、予め定められた工場の構造設備基準を満たしていることや、責任者を配置するなど適切な製造・品質管理が求められます。以前は、「製造業」の許可だけで化粧品を製造や販売を行うことができました。ただ、企業の製造物責任について重要視されるようになってきた時代の要請に併せて、市場に出荷した場合の責任の所在を明確化するため「製造販売業」の許可も必要となりました。

この「製造販売業」が許可されるためには、定められた資格者を配置し製造業者を監督して製造品質管理することが必要です。また、化粧品を発売した後は、販売製品の安全を継続して注視し、問題が発生した場合には管轄の行政担当に報告し適切な対応をとることが求められます。

製造販売業者の製品製造・出荷の流れ

2.2 ②成分の規制と表示に関するルール

②の化粧品の成分の規制としては、厚生労働省が定めた「化粧品基準」により、配合が禁止されるものや制限されるものを除いて、各社の企業責任によって配合できるものとされています。化粧品業者、特に製造販売業者には、化粧品に配合されている成分について、安全性を確認することが求められています。

 

防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素

防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素を化粧品に配合する場合には、一部政府が発表している「ポジティブリスト」に記載されている成分に限り、配合が可能とされています。

防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素の成分規制の概念図

 

防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素以外の化粧品成分

反対に、防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素以外の物質を化粧品へ配合する場合は、各企業の自己責任で可能とされていますが、一部配合禁止、制限成分が記載されている「ネガティブリスト」の成分については、制限及び禁止されています。

防腐剤、紫外線吸収剤及びタール色素以外の成分規制の概念図

また、化粧品の表示については、製品名、製造販売業者の氏名住所、製造番号(あるいは記号)だけでなく、配合成分の表示などを消費者が見やすいように商品自体に記載しなければなりません。そして、この配合成分については、全成分表示といって、配合されているすべての成分の名称を記載する必要があります。

2.3 ③誇大広告の禁止

化粧品の広告については、保健衛生上の観点から表現できる範囲が定められています。化粧品は医薬品とは異なるので、医薬品のような効能効果の表現は、禁止されています。また、消費者の選択を誤らすような誇大広告は禁止されています。

具体的な条文は次のとおりです。

【薬機法第66条】

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

この誇大広告違反の条文だけだと範囲が明確ではないので、「医薬品等適正広告基準」というものが厚生労働省より出されています。この「医薬品等適正広告基準」とは、法律ではないものの、薬機法の解釈基準として法律とほぼ同じ効果を持つ重要な基準となります。また、東京都保健福祉局から「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」として解説が発表されています。

ただ、「医薬品等適正広告基準」は、医薬品をメインに記述されており、化粧品の広告の解説としては若干わかりにくい点があります。また、化粧品は、医薬品等と異なり、メーキャップ効果など医薬品等は異なる特性があります。このため、化粧品の特性に合わせた広告ルールの必要性が業界から出て、「化粧品適正広告ガイドライン」というものが定められました。

この「化粧品適正広告ガイドライン」は、日本化粧品工業連合会が発表しており、化粧品広告の解説例示が詳細に記載されています。民間団体が発表しているものであり、法律とは異なりますが、実際の実務では多く参考にされており、注意する必要があります。

広告規制に関する法律・基準の段階図

3 景品表示法

景品表示法という法律は、化粧品にかかわらずすべての業種における広告に関して規制する法律になります。この景品表示法における規制は複数ありますので、別の記事も参照していただきたいのですが、ここでは概略だけ説明します。

3.1 優良誤認

まず、景品表示法では、商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示(優良誤認表示)を規制しています。

例えば、

  1. 「-10歳の肌になることをお約束します」

といった表現です。

これらの表現は、商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、根拠がないにもかかわらず、そのような効果が出ることを保証する宣伝であったりするため、不当表示となります。

3.2 有利誤認

次に、商品の価格その他取引条件についての不当表示(有利誤認表示)を規制しています。

例として、

  1. 「今だけこの化粧品キットが5000円」と広告しているが、実は常に5000円である場合

こういう表現は、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競業者のサービスよりもあたかも安いか、効果的であるかのように偽って宣伝したりする行為であり、不当表示となります。

3.3 違反した場合の効果

これら景品表示法に違反すると、消費者庁や都道府県の薬務課などにより、改善措置を指導されることになります。また、程度の重い不当表示を行った事業者に対しては、指導より強い措置命令という処分が下されることがあります。

さらに、最近の法改正によって、不当表示の場合には課徴金が課される可能性が出てきました。課徴金は、刑事上の罰金とは異なりますが、売上高を基準として国に金銭を納付しなければならなくなります。

3.4 化粧品の表示に関する公正競争規約

化粧品については、景品表示法に基づき「化粧品の表示に関する公正競争規約」が定められております。この公正競争規約とは化粧品公正取引協議会という業界団体が定めた自主的なルールではありますが、実務でも参考にされています。

 

4 まとめ

以上のように、化粧品に関してはやはり薬機法がメインとなる法律となります。そして薬機法の運用については、厚生労働省から通達が出ており、この内容によって実務が運用されているので、重要なものは知っておく必要が高いです(このサイトでも適宜説明していきます。)
また、広告に関しては、薬機法と景品表示法に注意が必要です。薬機法は化粧品安全のため、景品表示法は一般消費者の合理的な選択のためと目的は異なるのですが、規制される内容は多くの点で重なり合います。
化粧品事業者を運営するにあたっては、細かいルールを知っておくことも必要ですが、「木を見て森を見ず」にならないように法規制の全体像も是非とも知っておいてもらいたいです。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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