コスプレやキャラクターを営業広告に利用することは違法なの?

 最近、任天堂が、公道カートとマリオのコスチュームをレンタルするサービスを提供している企業に対して著作権侵害などを東京地裁に提訴していた事件(通称「マリカー訴訟」)の判決が出たとニュースになりました。
 判決の結果は、任天堂が訴えた不正競争行為の差し止めと損害賠償金の支払いが認められたと報道されていますので、任天堂勝訴!ということになりそうですが、実は法律的にはそう簡単な話ではありませんでした。
 今回は、マリカー訴訟を中心に、美容・健康事業の経営者様にとってキャラクターを事業で使用する場合の注意点について解説していきます。

1 アニメのキャラクターをコスプレしたり広告に使うことの問題点

 まずは、マリカー訴訟で問題となった点から解説して、キャラクターを営業広告に利用する場合の問題点を考えていきます。

1-1 マリカー訴訟とは

 マリカーは、任天堂のゲームであるマリオカートの略称で、ゲームをやらない人でも知っているくらい超人気作で、日本にとどまらず外国人にも広く知れ渡っています。
 このマリカーのキャラクター衣装をレンタルして小型カートに乗り、都内の観光ルートを走ることができるサービスを提供していた企業「株式会社Mariモビリティ開発(旧社名 株式会社マリカー)」ですが、問題はこの企業が任天堂とは何の関係もない会社であり、任天堂の許可もとっていないことでした。
 この企業に対して、任天堂が裁判を提訴したのは、報道によると平成29年2月頃です。

1-2 任天堂が主張していた内容とは

 任天堂が裁判で主張していた内容は、次の3つだったといわれています。

  1. ①自社のゲームである『マリオカート』の略称『マリカー』を社名に用いていること
  2. ②公道カートのお客にキャラクターのコスチュームをレンタルしていること
  3. ③コスチュームが写った画像や映像を無断で宣伝や営業に利用していること

 これらの主張の中で、法律的に問題となるのは著作権侵害、不正競争防止法違反となります。

1-3 裁判の結果は

 任天堂のプレスリリースでは、「不正競争行為の差止めと損害賠償の支払い等を命じる判決が下された」と記載されています。このため、不正競争防止法違反が認められたようですが、著作権侵害のほうが認められたかはまだ判決文が公表されていないので、わからないところではあります。
 また、任天堂はこの裁判以外にも、株式会社マリカーが「マリカー」の商標を出願し登録とされたことについても異議申立てをしています。しかし、この異議申立てについては任天堂の
主張が棄却されていました。

1-4 このマリカー訴訟から経営者が得るべき教訓とは

 今回の任天堂が提訴した裁判では、任天堂の主張が認められています。この裁判の法律的な解釈は他の弁護士がいろいろと書いていますので、このサイトでは、美容・健康事業の経営者様にコスプレやキャラクターを自社ビジネスで使用する場合の法規制と注意するべきポイントを次から説明していきます。

2 商標権とは

 まず、コスプレやキャラクターを使用する場合に注意するべきなのが商標権になります。
 商標権とは、経営者のご存知の方が思いますが、商品名やサービス名を特許庁に申請して、申請が通れば登録した範囲内で名称を独占的に使用できるものになります。
 有名なアニメの名前やキャラクター名は商標登録がされていることが多いので、これらを無断で広告に大々的に利用すると、商標権を保有している企業から商標権侵害を主張される可能性があります。

 ちなみに、任天堂は「マリオカート」という名称では商標登録していたようですが、その略称である「マリカー」は商標登録していなかったようです。このため、他社に「マリカー」の商標登録をされてしまったので(さらに異議申立ても認められず)、裁判では商標権侵害の主張はできませんでした。

3 著作権侵害

 こちらは、法律的に言うと、「キャラクター自体に著作権が認められるのか」というなかなか難しい問題があります。

 著作権とは、商標権と違って登録が不要な権利です。
 そして、著作権は「マリオ」というキャラクターデザインの保護を認めた権利ではないとされているので、キャラクターデザインのコスチュームで真似た行為が著作権侵害になるかどうかは正直いって、法律上も明確な見解はまだでていないです。

4 不正競争防止法違反

 この不正競争防止法違反が、今回一番重要な点かと思います。
 ちなみにマリカー訴訟でも、この点の任天堂の主張が認められているようです。

 不正競争防止法違反とは、商標やブランド以外の別のものが、ある商品やサービスを識別する印として人々に知られるようになることがあり、これらが顧客吸引力を持つようになることがあります。これを「周知の商品等表示」といいます。
 そして他者が、このような周知の商品等表示を無断で使用すると、この顧客吸引力にただ乗りすることになったり、商品や出所に混同が生じる恐れがあります。
 そこで、このような周知な商品等表示が持つ顧客吸引力を保護することが、不正競争防止法の定めるところです。

 要は、著名なブランド等に他社がただ乗りすることを禁止するということです。

 ただ、仮に違法な行為であっても『違反行為と指摘されるのか』という別の観点もあります。
 世の中に、今回のような不正競争防止法違反や著作権法違反の行為はパロディー行為としてありふれています。

 今回のマリカー訴訟は、まさに任天堂の守るべき著作権で大々的に稼いでいた行為だったので目をつむることができず、訴訟行為まで発展していますが、企業が行う身内のイベントのようなレベルで、不正競争防止法違反と指摘を受ける可能性は高くはないかと思います。
(逆に言うと、出版のような広く世間に知れ渡る可能性がある行為はリスクが高いです)

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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