「大学との共同研究」、「医師監修」という広告表現もNGに!?

 化粧品やサプリなどの健康食品の広告において、「ドクターズコスメ」、「大学との共同研究」、「医師監修」など使われている商品は多いかと思います。これまでは、このような広告はOK(もしくはグレー)かと考えられてきました。
 ただ、平成30年8月8日に厚労省から、これら広告に関する新たな基準が発表されました。この基準については、これまでの広告を大幅に見直す必要のある企業も多く出てくることが予想されます。
 今回は、平成30年8月8日に厚労省から発表された通達をもとに、今後の表現方法の変更点について解説していきます。

1 これまでの広告表現の考え方

 まずは、化粧品や健康食品の広告の規制について、これまでの規制をおさらいしていきます。

1-1 化粧品の場合

 化粧品についての広告規制といえば、薬機法(旧薬事法)の解釈基準である医薬品等適正広告基準が重要なルールとなっています。そして、この医薬品等適正広告基準においては、医師等の推薦について、次のように定めています。詳細は、以前の記事である医師等の医薬関係者の推薦を広告に記載はできるのか ~【薬事広告対策】化粧品編④~を参照してください。

  1. 【医薬品等適正広告基準 10 医薬関係者等の推せん】
  2. 医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告は行わないものとする。(以下略)

 一文が長いのですが、正確に読み解くために文章を分解すると次のとおりになります。

  1. ⅰ 主体:①医薬関係者、②理容師、③美容師、④病院、⑤診療所、⑥その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体
  2. ⅱ 禁止される行為:指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告をすること

 このように、医師や理容師、美容師などの国家資格者であったり、病院や学校などの団体が禁止の対象となっていることがわかります。また、禁止される行為も、指定だったり推せんなどとされています。

 このため、医師や大学は、「ⅰ主体」には該当しますが、共同研究や監修などは「ⅱ禁止される行為」には一見該当しなさそう(少なくとも記載されている「指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用」には該当しない)ということで、化粧品広告としてはOKと考えられてきました。

1-2 健康食品の場合

 サプリなどの健康食品の場合は、化粧品広告における医薬品等適正広告基準のようなルールは発表されてはいません。ただ、これまでも薬機法の解釈として、病気の治療や予防、健康の保持増進の効果を明示又は暗示させることは、未承認の医薬品広告となり厳しく取り締まられてきました。
 厚労省からの通達等でも、医師の談話、学説などを引用して、効能効果を暗示させることは違反広告となる旨の記載がありました。

2 平成30年8月8日に発表された新たな基準

 平成30年8月8日に厚労省から発表された基準では、Q&A方式で次のような内容となっています。

  1. Q3 いわゆる健康食品や化粧品等の広告において、「○○大学との共同研究」や「○○大学との共同研究から生まれた成分」等、大学との共同研究について広告しているものが多々見受けられるが、このような大学との共同研究に関する標榜は認められるか。
  2. A 健康食品の広告に関する事例については、広告全体から判断することとなるが、広告全体の効能効果(暗示を含む。)の標榜が無いのであれば、未承認医薬品の広告と見なさなれないことから、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律による指導対象とはならない。
  3.  また、化粧品等の広告に関する事例については、医薬品等適正広告基準第4の10の医薬関係者等の推せんに抵触するため、「大学との共同研究」との記載は認められない。さらに、「大学との共同研究」と記載することにより広告全体として効能効果の逸脱となる場合は、医薬品等適正広告基準第4の3(1)若しくは3(2)に抵触することとなる。

 これを読むと、化粧品広告については、「大学との共同研究」が禁止されることは明言していることがわかります。ただ、医師の場合はどうなるのか?監修してもらうのはどうなのか?健康食品は結局どのように扱われるのか?との疑問が出てくるかと思います。
 厚労省などの通達は、法適用のルールとなるため適用範囲を広げすぎないように、無駄な文字をなるべく削られて簡潔な文章になっていることが多いです。ただ、その分、記載のないケースではどのように考えられるのか、記載の趣旨まで考えて読み解く必要がありますので、以下解説していきます。

3 今後の基準

 今回の厚労省の通達は、大学や医師など専門家の権威を借りる広告について警告を行った趣旨と考えられます。このため、明言されていない点についても今回の通達の趣旨を踏まえて考える必要があります。

3-1 化粧品の場合

 化粧品の場合、通達で明示的に禁止したのは「大学との共同研究」だけです。ただ、通達には、「大学との共同研究」は『医薬品等適正広告基準10の推せんに抵触する』との記載もあります。つまり、「共同研究」という表記は、医薬品等適正広告基準10の「ⅱ禁止される行為」に該当することを明らかにしたのです。
 このため、「ⅰ主体」については、大学に限らず、医師や学会なども同じく共同研究するという表記が禁止されることになります。

 また、「ⅱ禁止される行為」についても、今回の趣旨が大学や医師など専門家の権威を借りる広告の警告なので、「共同研究」だけでなく「監修」や「認定」といった行為も含まれるものと考えられます。

3-2 ドクターズコスメはどうなる?

 そうだとすると気になるのが、「ドクターズコスメ」は今後どのように広告する必要があるのかです。こちらについては、医師の「共同研究」は「監修」といった表記は、違反広告となるので控えるべきと考えられます。
 では、「医師が開発」の表記はどうなるのか?こちらについても、今回の通達の趣旨が大学や医師など専門家の権威を借りる広告の警告ということを踏まえると、違反広告となる可能性が高いと考えられます。

 正直言って、ドクターズコスメを販売している企業の方々にとってはかなり厳しい内容となっています。さらに、厚労省は、化粧品に限らず、美容外科クリニックや整体など広告規制を強めていますので、この流れはしばらく続きそうです。

3-3 健康食品の場合

 サプリなどの健康食品の場合は、結論から言ってこれまでと広告の取扱いに変更はないものと考えられます。
 健康食品は、これまでも病気の治療や予防、健康の保持増進の効果を明示又は暗示させることが禁止されているので、逆に言えば、このような効能効果の暗示にならなければ「共同研究」や「監修」といったワードは使用しても、問題ないと考えられます。

4 まとめ

 今回の厚労省からの発表により、

  1. ・ⅰ 主体:大学、医師、学会が
  2. ・ⅱ 禁止される行為:共同研究、監修、開発
  3. という広告がNGということになりました

 これらは、共同研究や監修が事実であったとしても広告表記が禁止されることになるので、規制の範囲がかなり広がり、ここまで厚労省という行政の判断で決めてしまってもよいのか個人的には非常に疑問を持つところではあります。
 最終的には広告全体から判断することになりますが、化粧品、健康食品の企業様においては、このような通達の改正も含めて把握しておくことが重要となりますので、ご参考にしていただければと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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