景品表示法に違反した場合の措置と実務上の対応

景品表示法は、ホテル・レストランでの食品表示問題など不当表示事案が多発したことを受けて、年々改正されて、規制が厳しくなってきております。また、最近では、景品表示法において課徴金制度が導入されたということを聞かれたことがある人も多いのではないでしょうか。
 美容業界において、某大手エステサロンにおけるチラシやWEBサイトでの広告文言や景品表示法における不当表示として消費者庁から発表されたりするなど、特に違反事例が目立つ業界とも言えます。
 今回は、事業者において、景品表示法に違反した場合について、どのような処分を受けるのかについて説明していきます。

1 どのような場合に違反となるのか

景品表示法によって規制される不当表示としては、優良誤認と有利誤認があります。

  1. 〇優良誤認 → 商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示
  2. 〇有利誤認 → 商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示

 優良誤認とは、例えば「国内産原料のみ」と記載された商品が、実は「国内産の原料以外も混ざっていた」場合など、実際のものよりも著しく優良であると示す広告のことを言います。
 また、有利誤認とは、例えば、「当店通常価格より50%OFFで1万円」と表示していたが、通常価格は架空の物であり、実際に販売した実績のない価格であったときなど、事業者が商品やサービスの価格その他の取引条件について不当に個客を誘引する表示のことをいいます。

 

2 監視指導体制について

 次に、景品表示法に違反した広告を出した場合に、指導を受ける行政上の期間について説明します。大まかに分けて、消費者庁か都道府県から指導を受けることになります。

2.1 消費者庁

 広告関係について所管する行政上の機関と代表的なところは、消費者庁になります。
消費者庁においては、HP上で景品表示法関連の資料を多数公開していたり、景品表示法に違反した業者について報道発表資料として違反内容と命令内容を公開しています。
参照:消費者庁HP「景品表示法」

 HPを見ていただくとわかるとおり、消費者庁は毎年平均して月1回以上のペースで違反事業者の内容を公開しています。報道発表資料として公開されると、新聞やテレビのニュースなどでも報道されることになり、企業イメージが大きく損なわれてしまうので注意が必要です。

2.2 都道府県

 景品表示法については、消費者庁だけではなく、都道府県も同様に指導を受ける権限を有しています。最近の法改正で、都道府県の調査指示権限は、ほぼ消費者庁と同様になってきています。
 消費者庁と都道府県との棲み分けについては、明確な規定はないようですが、違反した事業者が全国的に展開している場合には消費者庁が、各都道府県内の事業者はその管轄する都道府県が担当するのが期待されているといわれています。
 消費者庁に比べて、都道府県レベルでの違反事例の公表は数多くはありません。ただ、最近では静岡県が初めて県内の事業者に対して景品表示法に基づく措置命令を行ったとの報道発表があるなど、今後も都道府県レベルでの指導も強化されていくことが予想されます。

 

3 違反した場合の行政上の処分

最後に、違反した場合の処分についてはどのようなものがあるかについて説明していきます。

3.1 調査

 景品表示法に違反する不当表示が行われている疑いがある場合には、消費者庁(以下、都道府県も同じ)は、資料の収集や、事業者への事情聴取などの調査を実施することになります。この調査は、警察が行う犯罪行為の捜査とは異なりますが、事業者側の協力が期待できない場合には、強制的な立ち入り権限まで認められています。
 ですので、万が一、消費者庁から問い合わせの連絡があった場合には、速やかに応じるようにしましょう。

3.2 行政指導

 上の調査の結果、不当表示として違反行為やそのおそれがあると認められた場合、消費者庁は事業者に対し、改善措置を指導することになります。この指導レベルだと、事業者名が公開されないことが多いようです。

3.3 措置命令

 調査の結果、程度の重い不当表示を行った事業者に対しては、行政指導より強い措置命令という処分が下されることがあります。
 措置命令とは、事業者に対して、不当表示となっている広告などの停止や再発防止策を講ずること、違反したことを一般消費者に周知徹底すること(例えば、自社HPや新聞などでの訂正広告)等が命じられることになります。上で見た行政指導と異なり、消費者庁により公開されてしまうので、この措置命令があると営業上のダメージはかなり大きいです。
 なお、命令に違反した場合、2年以下の懲役又は300万円以下の刑事上の罰金が科されますので、もうここまできたら従わざるを得ません。

3.4 課徴金

また、措置命令だけでなく、最近の法改正によって、不当表示の場合には課徴金が課される可能性が出てきました。課徴金は、刑事上の罰金とは異なりますが、やはり売上高を基準として国に金銭を納付しなければならなくなります。
 今年に入り、初めて課徴金命令が出されました。

三菱自動車の燃費不正問題で、実際の燃費と懸け離れた広告をしたのは景品表示法違反に当たるとして、消費者庁が三菱自に4億8千万円程度の課徴金納付を命じる方針を固めたことが26日、分かった。27日にも発表する。昨年4月施行の改正景品表示法と関係法令に基づき、課徴金納付命令を出すのは初めて。
日本経済新聞 2017年1月27日

現在のところですと、売上高が相当高額にならないと課徴金が課される可能性がないので、中小企業の事業者の方におかれては、すぐに心配することにはならないかと思います。ただ、このように年々広告規制が厳しくなってきていますので、広告規制の動向には注意を払ってもらい、万が一でも違反とならないような対策が必要です。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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