効果効能を比較するビフォーアフター写真・イラストの使用は認められる? ~【薬事広告対策】化粧品編⑥~

 化粧品広告を考える際に、文字だけでなく写真やイラストを使い、消費者に対する訴求力を高めようとする事業者様は多いかと思います。広告で製品の使用前と使用後の写真やイラストを比較する、いわゆるビフォーアフターの広告手法は、化粧品に限らず、トレーニングジムなどで頻繁に利用され、テレビCMでもよく目にします。
 ただ、化粧品広告の表現においては、薬機法の厳しい制限があることはこの記事で何度もご紹介したとおりです。
 今回は、これら化粧広告における使用前後についての表現方法について解説していきます。

1 ビフォーアフターの写真イラストは原則として禁止

 ご存知の方も多い方もいらっしゃると思いますが、化粧品広告においては、薬機法によって使用者の使用前と後を比較するビフォーアフターの写真・イラストは、原則として禁止されています。

1.1 医薬品等適正広告基準とその解説

 前回の記事でも解説しましたが、効能効果を保証する表現は禁止するというのが薬機法の解釈基準である医薬品等適正広告基準で記載されています。

【医薬品等適正広告基準】
(6)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現はしないものとする。

 さらに東京都福祉保健局では、医薬品等適正広告基準の解説記事の中で、

使用前、使用後の図面、写真等の表現については、医薬品等の効能効果等又は安全性の保証表現となるので原則として認められない。(後略)

としています。

1.2 原則禁止の理由

 薬機法は、効能効果を保証する表現を禁止しています。これは、化粧品広告において、消費者に誤解を与えないという点が強く意識されていることが理由になります。
 化粧品は、薬機法で「人体に対する作用が緩和なもの」と定義されているので、効能効果が確実に出るかどうかは人によって様々なはずです。ただ、使用前後の写真イラストは、消費者に対するインパクトが大きく、効能効果を保証した表現と捉えられるリスクがあります。
 したがって、使用前後の写真イラストは、たとえその化粧品の認められた効能効果の範囲であっても、また使用前後の写真イラストが事実であってもNGになります。

 

2 例外的に認められる場合

 使用前後の写真イラストに厳しい薬機法ですが、一定の場合例外として認められる表現方法があります。

 まず、先ほどあげた東京都福祉保健局の解説の中では、実はその後に次のような記載がなされています。

(前略)ただし、使用前及び使用後がないものでかつ、使用方法の説明として使用中のものを表現することは、差し支えない。

 また、粧工連が発表している化粧品等適正広告ガイドラインでは、例外として次のような場合をあげています。

F7.2 使用前・後の図面、写真等
使用前、使用後の図面、写真等による効能効果又は安全性に関する表現については、次の場合を除き、化粧品等の効能効果又は安全性の保証表現となるので行わないこと。
(1) 使用前及び使用後の図面、写真等がないもので、かつ、使用方法の説明として使用中のものを表現する場合
(2) 「化粧くずれを防ぐ」、「小じわを目立たなく見せる」、「みずみずしい肌に見せる」、「傷んだ髪をコートする」等のメーキャップ効果等の物理的効果及び「清涼感を与える」、「爽快にする」等の使用感を表現する場合

2.1 例外として認められる場合のまとめ

 上記の発表資料からすると、使用前後の写真イラストとして例外として認められるのは次のような表現になります。

  1. ⅰ 使用方法の説明として表現する場合
  2. ⅱ メーキャップ効果等の物理的効果
  3. ⅲ 使用感を表現する場合

 

3 悩ましい事例

3.1 体験談の中で使用するケース

 実際に利用した人の体験談の中で、使用前後の写真イラストを記載することは、残念ながらNGです。体験談であっても効能効果を保証する表現は禁止されていますので、使用前後の写真イラストも使えない表現となります。
 体験談の中では、比較的自由に表現できると勘違いされている事業者様が多いのですが、実際に指導例もあるところですので、注意してください。

3.2 使用前と使用後の写真イラストを別人にして比較するケース

 使用前後の写真イラストが使えないのであれば、別人の写真を比較して表現する場合はどうでしょうか。この手法は、実際に使っているメーカーもありますし、そのように指導する広告代理店の方もいらっしゃいます。

 たしかに、同一人物ではなく別人の比較であれば使用前後の写真イラストではないので、禁止されている範囲には含まれないという解釈も可能かと思います。ただ、その場合別人との注意書きを入れて打消し表示をするなり、効能効果の保証と勘違いされないような表現にしておくことは忘れないでください。

 個人的には、別人を比較した写真イラストを載せるならば、使用後のきれいな人の写真のみを利用した方が、誤解を生じさせず、化粧品のイメージ戦略としてもベターと考えます。
 

4 まとめ

 訴求力が高い使用前後の写真イラストですが、薬機法では厳しく制限されており、実際の指導例もよく見かけるところになります。
 ただ、全面的な禁止ではありませんので、認められるケースを慎重に見極めて、誤解の生じさせない化粧品広告を作成していただければと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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