口コミサイトにおけるステルスマーケティングの違法性

現在では、食べログや価格コムに代表される口コミサイトは、消費者の購入を決める情報手段としてかなり定着してきたのではないでしょうか。
 一時期はこれらのサイトにおいて、事業者が自作自演で口コミを投稿したり、中立的な立場を装い良い口コミや良い評価を行うサクラ行為の代行業者までが現れ、社会問題化したのは記憶に新しいところです。

現在では、さすがに大々的にサクラ行為を行う事業者は少なくなってきているかとは思いますが、それでもステルスマーケティング、いわゆるステマは繰り返し行われていてその都度非難の対象となっています。
 今回は、口コミサイトにおけるステルスマーケティングの法的な注意点をご説明します。

1 法的な規制

口コミサイトにおいても、広告について規制する景品表示法における不当表示がまず問題となります。
 ただ、これらサイトに掲載される情報のうち、商品やサービスに対するレビューや点数は事業者ではなく消費者によって書き込まれるものです。
 そこで、以下で説明するように違反となる場合は限定されることになります。

1-1 口コミサイトで景品表示法の対象となる場合

実際の法律では以下のように規定されています。

【景品表示法2条4項】
この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。

このように景品表示法は、「事業者」が行う広告を問題としているので、消費者が記載するレビューや点数は景品表示法上が問題となることはありません。

ただ、事業者が自作自演してこれらサイトに記載することや、サクラ行為を行う事業者に依頼して口コミ情報を記載することは、「事業者」が行った広告として景品表示法の対象となります。

1-2 記載内容が違法となる基準

次に、問題となる記載内容ですが、景品表示法では不当表示として、優良誤認と有利誤認を規制しています。優良誤認と有利誤認は、景品表示法の条文だけでは基準が漠然としているところもあるので、詳細な内容は、別の記事もご参照いただければ幸いです。
 また、消費者庁においても「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」という内容が発表され、詳細な内容が発表されています。

一部引用しますと

商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。

との記載となっています。

 

2 実際に問題となる事例

それでは、次に実際に問題となる事例を説明していきます。ステマの方法としては多種多様なところもありますが、問題となる事例は以下のように分類できると思います。

2-1 記載内容と実際の商品・サービスが異なる場合

記載内容と実際の商品・サービスが異なる場合には優良誤認として違反となります。

例えば、事業者が自作自演で、

  1. 「この○○には天然由来成分が入っていて、コスパもグッド!」

などと記載しているが、実際にはその成分が含有されていない場合などが違反となります。

2-2 あたかも多数の好意的評価を受けているかのように表示する場合

上記のように、記載内容と実際が異なる場合だけでなく、サクラ行為を行う事業者に依頼して口コミサイトの好意的なレビューを多数掲載させることや、点数などの評価を変動させることも違反となります。
 これらの評価が変動することによって、その記載を見た一般消費者が、あたかもその商品やサービスが多数の好意的評価を受けているかのように誤解してしまう可能性があるからです。

2-3 十分な裏付けがないにも関わらず、商品・サービスの効能効果を謳う事

また、十分な裏付けがないにも関わらず、商品・サービスの効能効果を謳う事も問題となります。

例えば、

  1. 「この○○を使ったら、あっという間にしわが目立たなくなりました」
  2. 「この○○を飲み始めたら、驚きの1週間でマイナス3キロ!!」

などです。

別の記事で不実証広告規制についても書きましたが、基本的に広告の場合には十分な裏付けをもって行う必要があり、行政から説明を求められた場合には根拠を示す必要があります。

 

3 事業者側が注意する点

サクラ行為などのステマは、違法と判断される可能性があり課徴金の対象となるだけではなく、一度ばれてしまうとネット上のバッシング対象となり、取り返しのつかない信用問題にも発生してしまうリスクが高い行為です。

ただ、口コミサイトが違法となる場合は、自作自演などのサクラ行為に限定されます。そして、サクラ行為といっても、サービスを受けたお客様にレビュー掲載を頼んだり、友人に実際に商品・サービスを使用してもらって掲載してもらうこと自体は違法とはならないです。

注意するのは、自作自演でうその情報を記載することや業者に依頼することに限定されますので、事業者の方には違法となる場合には十分気を付けつつ、口コミサイトを経営にうまく利用していってください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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