リスティング広告で医療機関の広告を行う時の注意点

 最近は、美容医療の分野でも「二重、鼻整形、豊胸、脂肪吸引」などのワードを検索エンジンで検索すると検索結果の上位に各医療機関のリスティング広告が表示されることも珍しくなくなってきました。
 このリスティング広告は、Yahoo!JAPANプロモーション広告やGoogle AdWordsが有名ですが、医療機関が広告を出すときには、医療広告ガイドラインに沿った内容にしなければなりません。
 今回は、リスティング広告で医療機関の広告を行う時の注意点について弁護士が解説していきます。

1 リスティング広告に関する広告規制について

 医療広告については、厚労省が発表している医療広告ガイドラインに沿った内容にする必要があります。このため、リスティング広告がどのように記載されているか解説していきます。

1-1 リスティング広告も広告規制の対象になる

 医療広告ガイドラインによれば、医療法における「広告」とは次のように定義されるとしています。

  1. ①誘因性:患者の受診等を誘引する意図があること
  2. ②特定性:医師、歯科医師や医療機関の名称が特定可能であること

 この①、②の両方に該当する場合、広告規制の対象になります。
リスティング広告の場合、医療機関が広告費を支払って検索画面の上位に表示されようとするわけですから、患者の受診等を誘引する意図、すなわち①誘因性が認められます。また、その検索画面には医療機関の名前が表示されるようにするはずですので、②特定性も認められます。
 このように、リスティング広告における検索画面で表示される内容も広告として規制の対象になります。

 他方、費用を支払わずに、YahooやGoogleなどの検索結果に表示される内容は、広告とはならないとされています。

1-2 広告文で記載できる内容は

 医療広告においては、患者側が自ら求めて入手する情報であるか否かによって、広告で記載できる事項が大きく変わります。
 例えば、医療機関のホームページなどは、患者側がパソコンで検索するなどして情報を求めていますので、広告で記載できる事項は比較的広いです(広告可能事項の限定解除)。反対に、TVCMや新聞の折り込みチラシは、患者側が情報を求めるか否かに関わらず目に触れるものなので、広告で記載できる事項は限定的です。
 広告可能事項の限定解除等を詳しく知りたい方は、医療広告の限定解除とは~これだけはおさえておきたい美容医療広告改正③~を参照して下さい。

1-3 リスティング広告で記載できる内容は?

 リスティング広告は、あるワードを検索したら患者側の意思とは無関係に表示されますので、「患者側が自ら求めて入手する情報」には当たりません。
 このため、広告として記載可能な事項は限定的です。

具体的には次の通りです。

  1. ① 医師又は歯科医師である旨
  2. ② 診療科名
  3. ③ 名称、電話番号、所在の場所を表示する事項、管理者の氏名
  4. ④ 診療日又は診療時間、予約による診療の実施の有無
  5. ⑤ 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院等(例:特定機能病院)
  6. ⑥ 地域医療連携推進法人の参加病院等である旨
  7. ⑦ 病院等における施設、設備に関する事項、従業者の人員配置
  8. ⑧ 医師等の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職及び略歴、厚生労働大臣が定めた医師等の専門性に関する資格名
  9. ⑨ 医療相談、医療安全、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置、病院等の管理又は運営に関する事項
  10. ⑩ 紹介可能な他の医療機関等の名称、共同で利用する施設又は医療機器等の
    他の医療機関との連携に関すること
  11. ⑪ ホームページアドレス、入院診療計画等の医療に関する情報提供に関する内容
  12. ⑫ 病院等において提供される医療の内容に関する事項
  13. ⑬ 手術、分娩件数、平均入院日数、平均患者数等、医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定める事項
  14. ⑭ その他①~⑬に準ずるものとして厚生労働大臣が定めるもの

2 リスティング広告の記載で注意するべき点

 これまでリスティング広告では広告規制があり、記載できる内容が限定的と説明してきました。次は、記載するときの注意点について説明していきます。

2-1 自由診療については、注意が必要

 広告できる内容が限定的というのは、上記にあるように医療機関の名称、診療時間、診療科の説明など、医療広告ガイドラインに広告可能な事項と記載されたものに限られます。
 診療内容についても限定的であり、保険診療については記載可能ですが、自由診療の内容は、保険診療と同一の内容か、もしくは、薬機法の承認を得た医薬品又は医療機器を用いた診療内容に限定されます。
 このため、自由診療についてリスティング広告を出す場合は、広告可能な内容かどうかしっかりと判断して下さい。

2-2 自由診療において記載する時の条件

 また、自由診療を記載する場合の条件も、医療広告ガイドラインに記載されています。それは、

  1. ①公的医療保険が適用されない旨(例「全額自己負担」、「保険証は使えません」、「自由診療」等)
  2. ②標準的な費用(例「10万~12万円」等)

という内容を記載した場合に限って広告が可能であるとされています。

3 遷移先のホームページは?

 最後に、よく質問があるのが、リスティング広告については広告可能な事項が限定的なのは分かったが、その遷移先であるホームページやランディングページも広告可能な事項は限定的になってしまうのか、という点を説明していきます。

3-1 ホームページは比較的自由に記載可能

 まず、先ほども見たとおり、医療機関のホームページは広告には該当しますが、リスティング広告とは違って、患者側が自らクリックしてホームページを閲覧することから、患者側が自ら求める情報=限定解除が可能となっています。
 このため、自由診療を含めてある程度自由に記載することが出来ます。

3-2 リスティング広告でも変化ない

 実は、これまではリスティング広告を出した場合、その遷移先である医療機関のホームページも広告可能な事項は限定されると考えられていました。
 ただ、平成30年6月から医療法の改正が運用され始めて、遷移先のウェブサイトは患者側が自ら求めて入手する情報ということに整理されて、限定解除が可能ということになりました。
 ですので、リスティング広告を出したからといって、医療機関のホームページも影響されて広告できる内容が限定されることはなくなりました。

4 まとめ

 患者側が医療機関を探す方法として、検索することはいまや当たり前の行動となっています。リスティング広告は、このような患者に対するアプローチとして非常に有効なので、今後もリスティング広告は注目され続けると思います。
 ただ、医療広告としての規制もあり、特にリスティング広告で表示される内容は特に記載できる事項が限られますので、この点を特に注意していただき違反広告との指摘を受けないようにしていって下さい。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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