特許取得を化粧品広告で謳うことができるか ~【薬事広告対策】化粧品編②~

化粧品については、日夜研究が行われて、次々と新しい成分だったり抽出方法が開発されています。化粧品を販売する事業者様は、製造元から化粧品についての素晴らしい技術の説明を受けた場合、是非とも広告で消費者の方に訴求したいところかと思います。

  1. ・特許成分○○を配合
  2. ・○○成分の抽出方法で特許取得

このような表現方法が認められるのか、今回は化粧品広告における特許取得の事実の記載方法について解説していきます。

 

1 特許取得が事実でない場合

特許取得していないにもかかわらず特許取得と表記することはめったにないかと思います。
ただ、製造元や、製販業者などの卸先から製品説明の際に特許取得した技術ですと説明を受けていたが、実は特許取得はまだしていなかったというケースも考えられます。

このような場合、薬機法の解釈基準である医薬品等適正広告基準により、違反となります。

【医薬品等適正広告基準2 製造法関係】

医薬品等の製造方法について実際の製造方法と異なる表現又はその優秀性について事実に反する認識を得させるおそれのある表現をしないものとする。

このように特許取得が事実でない場合、それを知っていた場合はもちろんのこと、虚偽の事実を知らなかったとしても、虚偽広告となってしまいます。

 

2 特許に関する広告について

では、特許取得が事実であった場合はどうでしょうか。

実は、真実特許が取得されていたとしても、化粧品広告として特許取得を謳うことは、薬機法の解釈基準である医薬品等適正広告基準により禁止されています。

【医薬品等適正広告基準10 医薬関係者等の推せん】

医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告は行わないものとする。

このうち、特許は効能に関して高い効果があると誤認させる恐れがあるため、広告として記載することは一切禁止されています。

なお、特許申請中との表記も、同じように広告では記載できません。

 

3 特許の事実を記載できる場合

特許について広告で記載できないと説明してきましたが、特許製品について例外的に製品に記載できる場合があります。特許を記載できる場合は、厚生労働省から出ている通達によって次のとおり定められています(昭和39年10月30日 薬監第309号 厚生省薬務局監視課長通知)

それは、

  1. ①特許権の侵害防止等の目的をもっていること
  2. ②方法特許または製法特許であること
  3. ③特許の「文字」、「特許番号」、「特許発明にかかる事例」を併記して正確に表現する場合

になります。

①の特許権の侵害防止等の目的とは、つまり広告目的でない場合という意味です。このため、特許の記載が広告と受け取られない様に、パッケージの表面など成分表示記載箇所などに表示することが望ましいといえます。

②方法特許とは物の製造方法に関する発明に与えられた特許のことです。また、製法特許とは、プロダクトバイプロセスクレームともいわれる物の製造方法によってその物を特定する特許のことをいいます(この二つの区別はわかりにくいですが、解説すると長くなってしまうので省略させていただきます。)
 要は、方法特許は製造方法に関する特許、製法特許は製造方法によって特定された物に関する特許と理解してください。

③特許において表示できるのは、「文字」、「特許番号」とのことですので、「特許第○○○○○号」という表記になります。

 

4 モ〇ドセレクション受賞の場合は?

最後に特許とは異なりますが、よくテレビCMなどでも耳にするモ〇ドセレクションを受賞についても考えてみたいと思います。

これは違反事例を聞いたことはないのですが、モンドセレクション受賞と消費者の方が見たら、効能効果に関して安心安全と考える方が多いのではないのでしょうか。
 そうすると、モ〇ドセレクションも、やはり先に見た医薬品等適正広告基準10の「医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える団体」に該当すると考えられるので、受賞した事実を広告で謳うことは黒に近いグレーになると思います。

ただ、正直、この賞を受賞と大々的に広告で謳っているものは多いのも事実かと思いますし、違反事例を現時点では聞いたことがないので、この程度であれば違反と指摘されないということかもしれません。

 

5 まとめ

以上のように、特許取得の広告記載については

  1. ・原則として、認められない
  2. ・例外的に、特許取得が事実であり、記載方法が広告目的ではない場合には適切に表示すればOK

ということになります。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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