未承認医薬品・医療機器の広告規制について~これだけはおさえておきたい美容医療広告改正⑤~

 今回の医療法改正において、美容医療の関係者様から相談が多かった事項として、ビフォーアフターと体験談の禁止以外には、未承認医薬品・医療機器の広告の扱いになります。
 未承認医薬品・医療機器は、これまで規制の対象外となっていたホームページでは自由に記載されていた美容クリニック様が多かったと思います。これが、今回の医療法改正で、医療機関のホームページも広告規制の対象となったことで影響を受けるのか。
 今回は、未承認医薬品・医療機器について、医療広告で広告が禁止される表現を説明していきます。

1 はじめに

 まず、未承認医薬品・医療機器の具体的な表現の話に入る前に、広告規制のどの段階で考慮するべきものなのか整理します。

1-1 広告規制の考え方(復習)

 このサイトでは、美容医療広告の検討の順番として度々説明していますが、広告規制の考え方として推奨しているのは、次のとおりです。
チェック①:広告の該当性
チェック②:患者側が求めて入手する情報であるか(限定解除)
チェック③:広告可能な事項であるか
チェック④:一律規制
図に表すと次の通りです。

未承認医薬品・医療機器の広告規制について~これだけはおさえておきたい美容医療広告改正⑤~

1-2 未承認医薬品・医療機器の広告で注意するポイント

 未承認医薬品・医療機器の広告では、チェック③(広告可能な事項であるか)、とチェック④(一律規制)に抵触しないかがポイントとなります。
 どこまで広告で記載できるかは、チェック②によって振り分けられる広告媒体によって(このサイトでいう「広告群Ⅰ」であるか「広告群Ⅱ」であるか)変わってきますので、それぞれ分けて以下で説明していきます。

2 広告群Ⅰの場合

 テレビCMや看板、折込チラシなど、患者側が求めて入手する情報ではない「広告群Ⅰ」の場合、残念ながら未承認医薬品・医療機器を使用した治療の広告は一切掲載できません。

 広告群Ⅰの場合には、自由診療においても承認を得た医薬品や医療機器の施術しか広告で記載できないことになっています。また、その場合には、次のような条件も守る必要があります。
 

  1. 公的医療保険が適用されないことを明記すること
  2. 施術に係る標準的な費用を明記すること
  3. 医薬品や医療機器の販売名を記載しないこと
  4. 医師による個人輸入により入手したものでないこと

 これでいうと、例えばボトックス注射の場合、アラガン社製のボトックスは承認を受けていますが、その他の製品の場合日本の承認を得ていないものも多くありますので注意が必要です。

3 広告群Ⅱの場合

 クリニックのホームページなど、患者側が求めて入手する情報である「広告群Ⅱ」の場合には、条件付きですが未承認医薬品・医療機器の広告も掲載することが可能です。

3-1 自由診療における限定解除の要件を守ること

 まず、自由診療であるので、限定解除の要件である次の情報も掲載する必要があります。

  1. ①治療の内容
  2. ②治療の費用
  3. ③治療に係る主なリスク
  4. ④治療に係る副作用

3-2 一律規制に反しないこと

 次に、チェック④として一律規制に違反しないことが必要となります。特に、注意すべきなのは未承認医薬品・医療機器の広告については、誇大広告に違反しないことになります。
 クリニック側としては有効性や効能を強調したいところではあるかと思いますが、科学的な根拠に乏しい情報で、特定の施術に誘導することは誇大広告として違反広告になりますので注意が必要です。

3-3 薬機法に違反しないこと

 最後に、薬機法に違反しないかどうかという点を検討する必要があります。

 薬機法とは、医療機関の広告を取り締まる医療法とは異なり、医薬品等を取り締まる法律になります。そして、薬機法では未承認医薬品・医療機器の広告は「名称や、効能効果、性能」について広告することが禁止されています。
 つまり、未承認医薬品・医療機器を使用した施術の場合、施術自体の広告はできるが、その施術で利用する未承認医薬品・医療機器の名称や効能効果を記載することは、薬機法の広告規制に違反するのでできないという結論になります。

3-4 未承認医薬品・医療機器の名前は記載できないのか

 上で説明した通り、法律をそのまま適用するとなると、未承認医薬品・医療機器の名前は広告には記載できないということになります。

 ただ、あくまで私見ですが、「未承認医薬品・医療機器を使用した施術自体の広告はできるが、その施術で利用する未承認医薬品・医療機器の名称や効能効果を記載できない」という結論は、非常にアンバランスではないかと思います。
 確かに、未承認医薬品・医療機器について、広く直接販売するような広告は薬機法の趣旨に鑑みても禁止されるべきであると考えます。改正された広告ガイドラインにおいても、具体例を挙げて
 医薬品「○○錠」を処方できます。
という記載は禁止されると記載しています。

 ただ、未承認医薬品・医療機器を使用した施術においては、いろいろな種類がある中でどの未承認医薬品・医療機器を利用するというのが患者側にとっても重要な情報となると思います。また、美容医療機関の広告の対象は、未承認医薬品・医療機器を直接販売することではなく、それらを利用した施術内容です。そして、安全性については国家資格である医師がまず第一次的に判断しており、主なリスクや副作用を広告文中に明記しています。
 そもそも、今回の医療広告改正では、当初から海外で承認されている国内未承認の治療薬など、治療に必要な情報を入手できなくなるのではないかという懸念があがっていたのですから、患者側の医療行為の選択の事由に鑑みても、未承認医薬品・医療機器の名前の表記は許されるべきではないかと考えます。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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