ホームページも医療広告の規制対象に!~これだけはおさえておきたい医療広告改正②~

 2018年6月に施行される改正医療法により、規制される医療機関の広告が拡大されることになりました。ホームページは規制対象となるのか?facebookなどのSNSやブログはどうなるのか?また、美容外科・クリニック様ですと、モニター募集しているところもありますが、その運用はどうなるのか?
 今回の記事では、改正医療法により規制対象となる広告について、具体例とともに解説していきます。

1 医療広告の規制の対象となるもの

 改正医療法では広告の規制について変更があったのですが、細かい内容については厚生労働省が発表している新「医療広告ガイドライン」に詳しく記載されています。
 以下では、この新医療広告ガイドラインをもとに説明していきます。

1-1 広告の定義

 新医療広告ガイドラインによれば、医療法における「広告」とは次のように定義されるとしています。

  1. ①誘因性:患者の受診等を誘引する意図があること
  2. ②特定性:医師、歯科医師や医療機関の名称が特定可能であること

 この①、②の両方に該当する場合、広告規制の対象になります。逆に言えば、この①、②のどちらかにあてはまらなければ、医療法上の「広告」とはならず、規制対象とはなりません。
 ただ、医療機関が情報を公開するものですと、①、②の要件に当てはまるものが多く、当てはまらないものは少ないかなという印象です。

 以前は、③認知性という要件もあったため、医療機関のホームページなどは一般に広く認知されておらず医療機関側の情報提供や広報として取り扱うという理由で、広告規制の対象外となっていました。ただ、医療法改正により、この③認知性の要件はなくなったため、ホームページにも規制の対象が拡大されることになりました。

1-2 広告と言われないための工夫

 このように広告となる範囲が拡大したのですが、広告規制の対象と言われないために表現を工夫することが考えられます。
 例えば、

  1. ○ 「これは広告ではありません。」、「これは、取材に基づく記事であり、患者を誘引するものではありません。」
  2. ○ 「医療法の広告規制のため、具体的な病院名は記載できません。」

 ただし、結論からいって、これらの記載をしたとしても結局は医療機関の名前や住所、URLなどが記載されていたら、広告規制の対象となってしまいます。注意書きなどを書いたとしても、あまり効果はありません。

1-3 モニターの体験談も!

 美容医療の分野では、医療機関側がお金を支払ったり、治療費を割り引いたりして、モニター患者を集めることがあると思います。このモニター患者にブログやSNSで、体験談を書いてもらうことは、どうでしょうか?

 これも結論としては、改正医療法では「広告」に該当する、と判断されることになります。

 モニター患者の体験談であっても、医療機関が経済的負担をして書いてもらうよう誘導しているため、患者の受診等を誘引する意図(①誘因性あり)と判断されることになります。また、このような体験談には医療機関の名称も当然入っていることから医療機関の名称も特定可能になると考えます。

2 広告に該当する具体例

 それでは、広告に該当する具体例を見ていきましょう。下でいくつか例示を上げましたが、これらに限定されるわけではないので、ご注意ください。

2-1 TVCM、折り込みチラシ、新聞広告

 これは前から広告として規制されていたものです。美容医療の分野ですと大手だとTVCMなどが多いですが、こちらは医療広告として規制対象になります。

2-2 医療機関のホームページ

 今回の記事の題名にもした医療機関のホームページですが、改正医療法ではホームページも広告に該当することになります。これは、今回の改正で影響が一番多いところかと思います
 ただ、次回以降に詳しく記載しますが、ホームページでは、ある程度自由な記載が認められていますので、広告可能な事項と禁止事項を理解して作成していただければ、十分に対応は可能です。

2-3 院長のブログ、メルマガ

 院長がブログを書いたり、メルマガで医療機関の診療内容やサービスを紹介することがあるかと思います。これら、ブログも医療機関のホームページにリンクを貼っていたりするなどしているので、通常は、広告となります。
 ただし、院長が自分の名前を出さずに、純粋に趣味の事だけを書くブログは、広告に該当しません(念のためですが)。

2-4 SNS(Facebook、instagram、Twitter)

 最近は利用されることが多いFacebookなどのSNSにおける情報発信ですが、これも広告に該当することになります。

3 広告に該当しない具体例

 では、次に広告に該当しない方の具体例もみていきましょう。

3-1 学術論文、学術発表等

 これらは、患者の受診等を誘引する意図があるわけではないので、①誘因性の要件を満たさず、広告には該当しないということになります。
 ただ、学術論文を装って、広告の一種として利用する場合には①誘因性ありと判断されて広告規制の対象となります。ここでも、実態を見て判断されますので注意してください。

3-2 新聞や雑誌等での記事

 これらも学術論文と同様に、患者の受診等を誘引する意図があるわけではないので、①誘因性の要件を満たさず、広告には該当しないということになります。
 そして、新聞記事を装って、広告の一種として利用する場合には①誘因性ありと判断されることも同じです。○○研究会などといって記事を書いて医療機関に誘導することも、広告と判断される可能性がありますので注意してください。

3-3 患者等が自ら掲載する体験談、手記等

 患者が記載する体験談では、いくら病院のことを薦める記載していたとしても、単に一個人が医療機関を薦めただけであり、①誘因性の要件を満たさず、広告には該当しないということになります。
 ただ、先ほど説明したモニター募集して集めた患者に記載してもらうとなると、医療機関側の患者の受診等を誘引する意図があると判断されることになります。

3-4 院内掲示、院内で配布するパンフレット等

 これらは、すでに患者となった人たち向けに発信する情報ですので、患者の受診等を誘引する意図がないとして、広告には該当しないという判断になります。

 ただ、この院内掲示については、新広告ガイドラインを検討している中でも異論が出ていたところで、付き添いに来た人にも配られる場合はどうなるのか、院内だけでなく病院外にも配布予定のパンフレットはどうなるのか、などと議論がそこまで煮詰まっていない状況にも見受けられました。
 結局は、①誘因性、②特定性の要件で最終的に判断されますので、院内掲示するものだから100%OKにはならないということだけ注意しておいてもらいたいです。

4 まとめ

 以上のように、改正医療法における規制対象となる「広告」について解説してきました。

「広告」に該当するかどうかの基本となる考えは、
 ①誘因性と②特定性
になります。
 医療法改正により、ホームページをはじめとして医療機関がお金を支払って情報提供するものは、広告に該当しやすくなりました。これって広告なの?と疑問を持たれた場合には、一度専門家に相談するなどして対策を取られたほうが良いかと思います。

 次回からは、医療広告規制の内容面に入っていきますので、そちらもご参照ください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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