ダイエットサプリの広告が薬機法・景品表示法・健康増進法に違反しないためには?
ダイエットサプリの売れ行きは、広告が左右するところが極めて大きいと言われています。
広告の方法も、単に販売サイトでダイエットサプリの説明を行うだけではなく、ダイエットサプリ専用のランディングページを作成したり、アフィリエイト広告や記事風の広告を利用する販売業者の方もいます。
いずれにしても、ダイエットサプリの販売には、魅力的な広告ははずせませんが、ダイエットサプリの広告には、薬機法や景品表示法などによる広告規制が存在します。
そこで、今回は、ダイエットサプリをはじめとする健康食品の販売業者の方に向けて、自社の広告が、これらの広告規制に違反していないかのチェック方法について解説していきます。
【目次】
1 チェックを要する広告の具体例
広告規制の対象となる広告の範囲は、広告と聞いて思い浮かべるチラシやビラに限られません。
サプリの容器や包装に書かれている文章やサプリに関するウェブページも、広告規制の対象になります。
広告規制の対象は、景品表示法上の「広告」の概念が基礎となっているため、以下の記事で、広告の範囲を確認してみてください。
2 広告チェックの流れ
健康食品の広告をチェックするには、大きく分けると、「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」「健康増進法」という、3つの法律を知っておく必要があります。
そして、以下の図のとおり、3つの段階で、それぞれ別々の法律や通達などに目を配っていくことになります。
次に、以下の広告をもとに、実際に広告チェックの手順を見ていきましょう。
3 含有成分のチェック(第1段階)
まずは、第1段階として、ダイエットサプリに含まれる含有成分のチェックが必要となります。
販売業者の方々におかれましては、ダイエットサプリの製造元から含有成分のリストを取り寄せることから始めてみてください。
販売する商品がダイエットサプリの場合、販売業者の方々は、健康食品を販売するつもりで、薬を販売するという意識がないケースがほとんどだと思います。
しかし、ダイエットサプリの含有成分に専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リストに掲載される成分が含まれている場合には、薬機法上は「医薬品」に該当するものと分類されることになります。
そして、薬機法の広告規制は、未承認の医薬品の広告を禁止しているため、ダイエットサプリが、「医薬品」に分類された場合には、ダイエットサプリの広告自体ができないことになってしまいます。
加えて、薬機法の規制によって、医薬品の無許可販売は禁止されています。
このため、許可がなければ、「医薬品」となるダイエットサプリの販売は禁止されています。
リスト上の成分がサプリに含有されている場合は、サプリの製造の方法からの見直しが迫られることになるため、極めて重大な問題となります。
3-1 リストとの照合の方法
ダイエットサプリの含有成分が、専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リストに掲載されているかを照合していくことになります。
リスト中でダイエットサプリによく使用される成分としては、センナ、脱N-メチルジブトラミン、N-ニトロソ-フェンフルラミンがあります。
海外から輸入したダイエットサプリを販売する場合には、販売者の知らないうちに、これらが含有されている例も多くありますので、注意が必要です。
(参照:医薬品成分(センナ葉等)が検出されたいわゆる健康食品について、医薬品成分(シブトラミン及び類似成分、フェンフルラミン)が検出されたいわゆる健康食品について)
3-2 今回の広告例の場合
それでは、実際に、リストのセンナに関係する部分を見てみましょう。
上記のように、センナは、茎から成分を抽出した場合には、医薬品に該当しないことになりますが、それ以外の部分から抽出した成分を用いる場合には、医薬品に該当します。
広告例の①にあるように、今回の広告例の商品『ダイエットNo.1』は、葉から成分を抽出しているため、薬機法上の医薬品として扱われることになります。
この場合には、『ダイエットNo.1』からセンナの葉から抽出した成分の配合を取りやめる選択肢か、センナの茎から抽出した成分に交換したうえで、サプリの成分表示に「センナ(茎から抽出)」と、使用した部分を明記する選択肢のどちらかを取ることになります。
4 医薬的な効能効果の表示のチェック(第2段階)
次に、第2段階として医薬的な効能効果の表示のチェックが必要です。
ダイエットサプリに、医薬的な効能効果をパッケージや広告に表示した場合も、薬機法上の医薬品として扱われることになります。
実際には、医薬品的な効能効果(薬理効果)がない場合でも、医薬的な効能効果を表示するだけで、医薬品としての扱いを受ける点には注意が必要です。
このため、ダイエットサプリの広告には、医薬的な効能効果を表示しないようにしなければなりません。
「医薬的な効能効果」とは何かについて、以下の記事に説明がありますので、ご覧ください。
4-1 ダイエットサプリの広告で表記しがちな医薬的な効能効果
ダイエットサプリにおいても、ダイエット効果をあげるための方法によって様々な種類分けが可能です。具体的には、以下のような分類ができるでしょう。
- ①体内に蓄積された脂肪の分解、排泄の方法によるサプリ
- ②体内組織、細胞等に機能を活性化させる方法によるサプリ
- ③「宿便」の排泄、整腸作用によるサプリ
- ④体質改善の方法によるサプリ
以下では、これらの分類に応じて、使用がNGな表現を紹介していきます。
①体内に蓄積された脂肪の分解、排泄の方法によるサプリ
[NGな表現]
・○○の働きで体内の余分な脂肪を分解し、体外に排出する。
・○○は糖が脂肪に合成されるのを抑え、脂肪を体外に排出してしまう働きを持っています。
・ただ飲むだけで、脂肪を落とし、短期間で抜群の効果を発揮。
・脂肪燃焼効果、絶大!
・余分な脂肪の代謝を促す。
②体内組織、細胞等に機能を活性化させる方法によるサプリ
[NGな表現]
・○○が肥満の根本原因ともいうべき褐色脂肪を活性化し、正常化する
・成長ホルモンの分泌を活発にする○○。成長ホルモンは体の成長を促す働きもあり、これにより余分な脂肪を分解、スリムな健康体をつくる。
・食欲を抑える
・発刊と利尿作用を高める
③「宿便」の排泄、整腸作用によるサプリ
[NGな表現]
・腸の活性化を図り、頑固な宿便をスムーズに排出させる効果があります。
・腸内環境クリーン化
・○○は腸内のビフィズス菌を増殖し、発酵を促進させます。このときに発生する炭酸ガスが腸壁を広げ宿便の排出をスムーズにします。
④体質改善の方法によるサプリ
[NGな表現]
・減量しながら体質改善ができます。
・痩せやすく太りにくい体がつくれる。
なお、これらは広告に記載されると直ちに広告規制違反となる表現に過ぎません。
最終的に医薬的な効能効果の表示にあたるか否かの判断は、ダイエットサプリを販売する際の様々な事情を総合して判断されます。
そのため、以上の特定の表現を排除したうえで、自社の広告を、顧客への訴求力を求めて法的にグレーなものとするのか、違法となるリスクを減らすために全くのホワイトなものとするのかを検討していくことになります。
4-2 医薬的な効能効果にあたらないとされている表現
次に、医薬的な効能効果にあたらないとされる表現について、解説します。
広告規制に違反しない広告を目指すためには、以下のような表現を使用していくことになります。
・ダイエットという表現そのもの
これは、厚生労働省の通達によっても、単にカロリーの少ないものを摂取することにより、摂取する総カロリーが減少して結果的に痩せることは医薬品的な効能効果といえないとされています。
(参照:痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について)
例えば、「1日の食事のうちの1食分を置き換えてダイエット」とする置換えダイエットのような記載は医薬品的な効能効果に当たらないことになります。
ただ、置き換えダイエットであっても、例えば、「商品に含まれる成分による痩身効果の促進作用が容易に得られるかのような表示」や、後で説明するように、エビデンスがない表示はNGとなるので、ご注意下さい。
・特定商品に関連しない栄養に関する一般的な知識の表現
例えば、栄養成分の一般的な効果のみを記載するにとどめ、商品との関連性は顧客に委ねることが考えられます。
・具体的な身体に対する作用を標榜せずに、単に健康の維持に重要であることのみを示す表現
例えば、「理想的な体型に重要な商品です。」などと記載することになります。
・「健康維持」や「美容」、「健康増進」の表現
例えば、「健康な体のために」や「美的なボディのために」などの表現を用いることになります。
以上をまとめると、ダイエットサプリによって、痩身効果が発生するまでの具体的な作用の流れを詳細に示す表現は避け、抽象的に「健康」や「美容」をキーワードとした表現を用いることになります。
4-3 今回の広告例の場合
以上の広告例の②には、『ダイエットNo.1』に脂肪を分解・燃焼させるような効果があるように表現され、サプリの広告に医薬的な効能効果の表示がされています。
このため、『ダイエットNo.1』は薬機法上の医薬品にあたることになり、広告例は薬機法上の広告規制に違反することになります。
5 景品表示法・健康増進法の規制のチェック(第3段階)
最後の第3段階では、景品表示法と健康増進法の2つの法律を見ることになります。
5-1 規制される表現
まず、景品表示法は、商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示(優良誤認表示)を規制しています。
優良誤認表示については、以下の記事に詳しい解説がありますので、ご覧ください。
簡単に言うと、景品表示法の広告規制は、広告にダイエットサプリの実際の効果と異なる表示をしてはならないという規制です。
また、健康増進法の広告規制も、健康の保持増進の効果等について①著しく事実に相違する表示や②著しく人を誤認させるような表示を行ってはいけないという規制です。
健康増進法上の広告規制については、以下の記事をご覧ください。
両者の広告規制をまとめると、広告において、ダイエットサプリ効果や使い方について、顧客の判断を誤らせるような表現をしてはならないということです。
また、以下の記事に説明があるように、広告規制への違反が疑われる場合には、根拠資料の提出を求められる場合があるため、広告に表示した内容については、それが虚偽ではないというために、根拠となる資料を準備しておく必要があります。
5-2 体験談を表示する場合の注意点
ダイエットサプリの広告でよく用いられるのが、購入者の口コミやサプリを使ってみての感想、体験談を表示するものです。
これらのいわゆる「体験談」は、その広告を見た人が「このサプリを飲めば、自分にも同じような効果が出るかもしれない。」と期待を抱き、サプリの購入に至るというものです。
そこで、以下のような体験談は、広告を見た人の判断を誤らせるおそれがあるため、広告規制に違反することになります。
・架空の体験談を表示する場合
例えば、痩せる効果があったとのお客様からの感謝の言葉を掲載しているが、架空の人物である場合などです。
・購入者のサプリによって痩せたと称する体験談のうち、自社に都合の良い部分のみを掲載している場合
例えば、実際には「○○を飲んで3か月で10kg痩せました。運動は、毎日、ジョギングとジムトレーニングをしました。」との内容にもかかわらず、運動を行っていたことは表示しないで、体験談として「○○を飲んで3か月で10kg痩せました。」と、痩せたことのみを表示する場合です。
・購入者のうちサプリによって痩せる効果が出た購入者がわずかで、ほとんどの購入者には効果がなかったにもかかわらず、痩せる効果があった購入者のみの体験談を掲載している場合
・関係者に特に依頼した体験談であるにもかかわらず、一般的な購入者の体験談であるかのように表示している場合
以上のような体験談は、広告規制に違反する体験談の表示になりますので、避けるべきです。
広告規制に違反しない体験談とするためには、事業者が購入者の調査を行い、購入者の数及びその属性、体験談と同様の効果が得られた購入者と得られなかった購入者の割合を合わせて表示するなど、顧客の判断を誤らせない工夫が必要となります。
また、消費者庁より根拠の提出を求められる可能性があるため、これらの根拠資料を社内に保管しておくことも必要です。
5-3 打消し表示を行う場合の注意点
体験談とともに、よくダイエットサプリの広告で表示されるのが、「あくまで個人の感想です。」や「痩せる効果には個人差があります。」といった表示です。
これらは、いわゆる「打消し表示」と言われています。
まず注意するべき点は、このような打消し表示があるからと言って、広告規制に違反する体験談の違法性が解除されるわけではないということです。
これは、打消し表示は、広告の端部分に小さく表示されるため、単に打消し表示を表示するだけでは、体験談によって生じる消費者の誤認は解消されないことが理由です。
このため、打消し表示を表示しておけば、体験談は広告規制に違反しないとの考えは誤りですので、注意が必要です。
5-4 今回の広告例の場合
広告例の③には「飲むだけで驚きのダイエット効果!!」との記載があります。しかし、人が痩せる方法は摂取カロリーを減らす又は燃焼するカロリーを増やすの2つの方法しかなく、サプリを飲むだけで痩せるというのは、広告を見た人を誤認させる表現であると判断される可能性が高いです。
このため、広告例の③部分は、広告規制に違反する広告となります。
広告例④の体験談は、根拠となる実際のお客様が架空の人物の場合には、広告規制に違反します。
また、他のお客様のデータを示していない点でも問題があります。
そして、広告例⑤の打消し表示を行っても、広告例が広告規制に違反することは、変わりません。
6 まとめ
今回は、ダイエットサプリをはじめとする健康食品の販売業者の方に向けて、自社の広告が、これらの広告規制に違反していないかのチェック方法について解説してきました。
ダイエットサプリの販売業者の方々は、今回の記事の3つの手順に沿って、自社の広告を見直してみてください。
今回の記事のポイントは、以下の2つです。