最近話題の幹細胞コスメ!広告表現における注意点の解説~【薬事広告対策】化粧品編⑫~

 最近の化粧品業界で話題となっている幹細胞コスメ。幹細胞コスメは、当初リンゴ幹細胞などの植物由来成分が多かったですが、最近では人幹細胞のコスメが注目を集めているようです。
 幹細胞とは何かとネットで検索すると、

  1. ・さまざまな細胞になることができる
  2. ・自分とまったく同じ能力を持った幹細胞をコピーできる能力を持っている変幻自在な細胞

など「細胞を作り出す細胞」として紹介されています。

 これが細胞の活性化につながり、従来の化粧品を超えた肌の若返り効果が期待できると美容業界でも注目を集めています。消費者の注目も高い幹細胞コスメ。ただ、広告表現としては注意しなければならないポイントがありますので、解説していきます。

1 幹細胞コスメの広告表現のルール

 まずは、幹細胞コスメの広告表現ルールを見ていきましょう。

1-1 幹細胞エキスという表示

 幹細胞コスメというと、あたかも幹細胞自体が化粧品の成分中に入っているようなニュアンスで伝わることが多いと思います。
ただ、幹細胞コスメとは、原材料の会社のHPなどを見ますと、幹細胞の培養液を抽出した成分のことをいい、「幹細胞培養液」や「幹細胞抽出液」などと表現されていることが多いです。
つまり、幹細胞コスメでは、幹細胞自体は入っておらず幹細胞の培養液が入っていることを明示する必要があります。

 幹細胞の培養液が入っていること自体は、事実であったら広告に記載することは問題ありません。幹細胞自体が化粧品の中に入っていると誤解されないような表記にしてください。

1-2 肌細胞に対する直接的な効果を謳うことはNG

 上でも説明したように、幹細胞コスメは肌の若返り効果が期待できるとされています。ただ、化粧品広告には、このサイトでも繰り返し説明してきたように、効能効果を謳う場合には56項目に限られる(※化粧品広告で記載できる56の効能効果 ~【薬事広告対策】化粧品編③~)という厳格なルールがあります。
 そして、現在の56項目の中で、化粧品において「肌の若返り」や「肌の細胞を作り出す」などといった効能効果は認められていません。
つまり、幹細胞コスメで「肌の若返り」や「肌の細胞を作り出す」という効能効果を謳うことはできません。

 幹細胞コスメの効果については諸説あるようですが、まだまだその効能効果や安全性について正確な知見は得られていないようです。今後の研究に期待しつつも、幹細胞コスメの広告としては、現在の認められた範囲内で行っておくべきといえます。

1-3 過去の違反事例

 幹細胞コスメの広告といえば、たかの友梨ビューティクリニック(株式会社不二ビューティ)が東京都から景品表示法に基づく改善指示を受けたのが有名です。
この広告とは、化粧品ではなくエステの広告ではあります。ただ、「細胞レベルでの若返りをめざす」、「素肌の活性力アップ」との広告について、

幹細胞成分により、「細胞レベルでの若返り」等という効果が得られることの根拠を有していなかった。

と指摘を受けたため、改善指示となりました。
 これはあくまで推測ですが、たかの友梨という大手会社が作成した広告ですので全くの裏付けなく広告を出した可能性は低いと思います。根拠となるデータは出したが、東京都を納得させるほどのデータ裏付けがなかったのではないでしょうか。

 この事例からも、幹細胞コスメの効能効果はまだまだ突出した表現はNGということがわかります。

2 認められる表現例

それでは、現時点において認められる幹細胞コスメの広告の具体的表現を見ていきましょう。

2-1 成分表示について

  1. ・お肌を継続的にケアするために幹細胞エキスを高濃度配合しています。
  2. ・5つの植物幹細胞由来成分※配合
      ※リンゴ培養細胞エキス、・・・

 このように、幹細胞コスメの成分として、「幹細胞エキス」や「幹細胞の培養液」など、幹細胞自体が入っていないことをしっかりと明記しておきましょう。明記の方法は、注釈を入れる形でも問題ありません。

2-2 効果について

  1. ・エイジングケア※として注目されています
     ※年齢に応じたケアのこと”
  2. ・年齢肌に潤いを与える
  3. ・肌が本来持つ力をとサポートし、いきいきとしたつや肌へと導きます。
  4. ・優しい使い心地でくすみない肌に導きます。
  5. ・見た目年齢マイナス10歳へ
  6. ・透明感のあるハリ肌へ

 上で見たように、幹細胞コスメの効果として、若返り効果や細胞の活性化効果は謳うことができません。
 このため、化粧品広告において現状で認められている「エイジングケア」の範囲内で表現したり(※エイジングケアの表現方法について エイジングケア!化粧品広告で覚えておきたい表現方法と注意点~【薬事広告対策】化粧品編⑩~)、「肌にうるおいを与える」という効能効果にとどめておくことがポイントです。

 また、「いきいきとしたつや肌へ」や「透明感のあるハリ肌へ」など、主観的な感想にとどめて、消費者にイメージさせる手法も有効です。

3 認められない表現例

 では、次にNGとなる幹細胞コスメの広告表現を見ていきます。

3-1 成分表示について

 ・全ての細胞に成り変われる『幹細胞』が入っています。

これは、先ほど見た成分表示とは真逆の表現です。「幹細胞」と「幹細胞エキス」はものとしては全く違うので、注意して表記するようにしてください。

3-2 効果について

  1. ・『細胞を活性化』させることで、あなたの肌をよみがえらせます。
  2. ・細胞レベルでの若返り
  3. ・肌の幹細胞を活性化させて、肌本来の再生能力を高めます。

 このような効果があることは、幹細胞の原材料会社やOEM先の会社から説明を受けることが多いと思います。確かに、このような効果があるデータは様々な研究機関により発表されているようですが、実際に化粧品の効果として認められるためにはもっと多くの時間が必要です。
 受けた説明をそのまま記載するのではなく、現時点で認められている化粧品広告の範囲内の効果にとどめておきましょう。

4 まとめ

 幹細胞コスメは、最新の再生医療技術によって生まれた画期的な成分として今後も注目を集めていくことになるでしょう。今後の研究により更なる臨床データが得られれば、医薬部外品の有効成分として認められる日がくるかもしれません。ただ、現時点ではまだまだわからないことが多い成分であるので、行き過ぎた表現には注意してください。

 現在、IPS細胞など再生医療に対するニュースは多く、「全ての細胞に変わることができる『幹細胞』が入っている」と消費者は誤認しやすい状況といえます。行政も注目しているところですので、現在認められている広告のルール内で丁寧な表現方法を心がけてください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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