業務委託型サロンが美容師と契約するときに気を付けることは!?

美容業界のサロン店舗では、店舗側の経営者の方と美容師とが、従来の雇用形式ではなく、業務委託の形式で契約するということが増えてきています。

多くは,サロン側がWEB上で集客を行い、お客様からの予約が来た場合には、サロン側が美容師に施術の依頼を行うという営業形態です。

働く側の美容師にとっても、フリーランスのように自由に働くことができること、貰える報酬が高いことから、人気になってきています。

今回は、「業務委託契約書」を用いて美容師と契約しているサロンを業務委託型サロンとよびながら、業務委託型サロンの経営者の方々に向けて、美容師と契約するときに気を付けることを解説していきます。

1 業務委託型サロンのメリットは?

美容師を雇うときに、通常用いられるのは、雇用契約という契約です。
雇用契約の場合、従業員の権利を守る労働法という法律のルールが適用されます。

このため、サロン経営者の側から美容師を解雇することが簡単にはできなくなるなど、いろいろと働いてもらう際の条件について自由に決めることができなくなってしまいます。

解雇について、より詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

つまり、サロン経営者にとっては、美容師との契約を業務委託契約にすることによって、美容師との契約内容を双方が合意した内容で自由に決められるというメリットがあります。

2 業務委託型サロンの注意点は?

業務委託型サロンを運営していく場合には、美容師との関係で以下のような注意点があります。

2-1 契約書の記載だけで判断されない

それは、「業務委託契約書」との題名が付されている契約書を用いて美容師と契約した場合でも、美容師との契約関係が必ずしも業務委託契約とはならないということです。

すなわち、サロン側と美容師との契約関係は、「業務委託契約書」という契約書の題名で決まるものではないのです。

では、何で決まるのかという疑問が浮かびますが、裁判では、サロン側と美容師との契約関係は、サロン側と美容師との実際の関係を見て判断されることになります。

そのため、美容師の働き方によっては、契約関係が雇用契約であると判断されてしまう事態が生じるのです。

2-2 業務委託になるかどうかのポイント

つまりは、美容師の働き方に関する以下の点を総合的に考えて、決まることになります。

  1. ・サロン側の施術依頼に対して、美容師が断ることができるか。
  2. ・報酬の支払いが、勤務する時間や月など期間によって決まっているか。
  3. ・美容師に対してサロン側の指示や命令があるか。
  4. ・美容師はシフト時間中にサロン内にいることが強制されているか。
  5. ・美容師の施術内容は他の美容師が行うことができるような、一般的な施術か。
  6. ・美容師の施術道具は、サロン側が準備したものか。
  7. ・報酬への源泉徴収、保険料控除、兼業禁止の約束がなされているか。
  8. ・同じサロンで同様の働き方をしている他の美容師のサロンとの契約が雇用契約か。

サロン経営者の方は、サロンでの美容師の働き方を思い出してみてください。
これらの点にイエスが多い場合には、要注意です。

例え、サロン側と美容師で「業務委託契約書」を用いて契約をしていても、裁判になったときなどには、サロン側と美容師との関係が雇用契約と判断されてしまうことがあります。

3 雇用契約と判断されると、どうなるのか?

サロン側と美容師との関係が、雇用契約と判断される場合には、サロン側は、以下のような義務を負うことになります。

3-1 美容師の歩合報酬の最低額を保証する義務

業務委託型サロンでは、美容師の報酬を歩合制にしていることが多いと思います。
ですが、その場合でも、法律のルールでは、労働時間に応じて一定額の賃金を保証しなければならないことになります。

具体的には、平均賃金の6割を、美容師の最低限の報酬として保証する必要が出てきます。
それに加えて、最低賃金法にもとづく最低賃金以上の報酬も保証しなければならないことになります。

3-2 残業代の支払義務

他にも、法律のルールでは、労働時間が1日8時間、1週間の総計が40時間を超えた場合には、その超過分について、基本給の1.25倍の割増賃金を支払うことになっています。

そのため、美容師がサロンにて勤務した時間が1日8時間・週40時間を超えた場合には、サロン側は、超過部分についての割増賃金を支払わなければなりません。

割増賃金について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

3-3 健康保険などの加入義務

また、業務委託型サロンでも、雇用契約と判断される美容師がいる場合には、美容師を健康保険に加入させ、サロン側が健康保険料の一部を支払う必要が生じてきます。

    具体的には、健康保険料の納付義務が生じる

  1. 法人が経営するサロンで、常時美容師を雇用する場合
  2. 個人経営のサロンで、雇用契約と判断される美容師を含めた従業員が5人以上所属する場合
  3. にあたってしまうのです。

加えて、雇用契約と判断される美容師が一人でもいる場合には、労災保険や雇用保険に加入する義務も生じてきます。

健康保険などの加入義務について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

4 業務委託型サロンの経営者が気を付けることは?

それでは、サロン側と美容師との関係を、雇用契約と判断されない業務委託契約とするためには、業務委託型サロンの経営者は、スタッフとの契約やスタッフの働き方の管理において、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。

4-1 美容師の働き方の変更・管理

まず、サロン側と美容師との契約関係は、美容師の働き方によって決まります。
そのため、サロン経営者は、業務委託型サロンの運営実態に細かな注意を払うことが必要です。

美容師との関係が雇用契約とならないようにするためのポイントは、以下のとおりです。

  1. ・施術依頼に対して、美容師が断ることができる状態にする。
  2. ・美容師のシフト時間中であっても、サロン内にいることを拘束しない。
  3. ・美容師への指示命令は必要最小限度にとどめ、お客様の施術など業務委託契約書の業務範囲に定めた事項のみを依頼する。
  4. ・シフトの時間を美容師が自由に選べるようにする。
  5. ・美容師の報酬を歩合制にする。

これらは、各ポイントがどの程度押さえられているかの問題です。
1つのポイントを押さえたからと言って、必ずしもサロン側と美容師との契約が業務委託契約となるものではありません。

もっとも、具体的には、美容師のシフトの時間に応じて、予約の段階で各美容師に予約を割り振り、その他の時間を美容師の自由にさせるなど、美容師の働き方をできるだけサロン側の指揮や命令を受けないものにする方法が考えられます。

4-2 契約書の作成

他にも、題名を業務委託契約書にするだけでなく、契約書の内容を、上で見たような美容師の働き方に合わせたかたちに整えることが必要です。

ここで重要な点は、以下の2つです。

  1. ・美容師の働き方が雇用契約に近いものへと変化していくのを防止するために、施術依頼に対して美容師が断ることができることやサロン内に拘束しないことを明確に規定すること
  2. ・サロン側から美容師に対して指示・指導する機会を必要最小限度にするために美容師に依頼する業務範囲をできる限り明確にすること

例えば、業務の内容を単に「お客様の施術を依頼する」としか定めなかった場合、その施術以外を頼む際には、サロン側は美容師に対して指揮や命令を行うことになってしまいます。

このため、業務の範囲を、お客様の来店時の対応、お客様への施術、施術後の清掃など、美容師がお客様に対して施術を行う流れに沿ったかたちで広めに定めておく必要があります。

他にも、報酬を歩合制にすること、材料や器具の負担をできるだけサロン側が負わないようにすること、美容師が確定申告を行う旨を誓約させることも検討するべきです。

5 まとめ

今回の記事では、業務委託型サロンが美容師と契約する際に注意するべきことについて解説してきました。

業務委託型サロンが適切に運営していくためには、美容師との契約時には、業務内容を明確に定めて、その他の指揮命令の機会をできるだけ減らしていくことと、美容師の働き方の実態を把握して、サロン側が美容師に指揮や命令をする事態を減らすなどサロン側と美容師との関係が雇用契約になるリスク要因を消していていくことが重要です。

業務委託型サロンの経営者の方々は、今回の記事を参考に、業務委託契約書の内容や美容師の働き方を見直してみてください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士小林 雷太
美容事業や健康食品事業の携わる経営者の方々は、お客様との法的なトラブルだけでなく、広告や製品表示に関して行政との法的なトラブルに直面することも珍しくありません。 これらに対して、経営者の方々の目線に立った最善の予防策や解決策をご提案してまいります。

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