医療広告の限定解除とは~これだけはおさえておきたい美容医療広告改正③~

 前回の記事では、医療広告の規制対象となる広告について説明しました。医療広告の規制については、今回の改正医療法により「限定解除」という新しい考えが導入され、厳しい広告規制の中でも例外的に自由診療を記載できるような形を取っています。
 今回の記事では、改正医療法により新たに導入された限定解除について、解説していきます。

1 広告媒体によって表現の幅が変わる

 まずは、広告の限定解除について、説明していきます。

1-1 限定解除とは

 医療広告の規制の方法としては、広告に該当する場合、表現できることがかなり限定的で規制が厳しいです。ただ、医療広告には、患者側にとって医療を選択するための情報提供という側面もあるため、一定の例外的な場合には、広告できる範囲が広がります。
 これが、「限定解除」と呼ばれるものです。

1-2 限定解除の要件

 限定解除の要件は、広告ガイドラインだと次のような要件となっています。

  1. ① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. ② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  3. ③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
  4. ④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

1-3 広告群によって判断

 ただ、この限定解除という考えは禁止に例外をつけるもので、非常にわかりにくいです。ですので、このサイトでは、まず医療広告の考え方として、広告媒体の性質によって判断していくことをおすすめします。

 先ほど見たように限定解除の要件には、患者側の求めた情報であることが条件となっています。このため、広告規制を考えるにあたっては、その広告の媒体が患者側が求めるものであるかかどうかというのが一つのポイントです。

 そして、広告媒体が患者側の求めるものでない場合には「広告群Ⅰ」、広告媒体が患者側の求めるものである場合には「広告群Ⅱ」とこのサイトでは呼んでいきます。

2 広告可能な事項(広告群Ⅰの場合)

 先ほどの整理によって、広告群Ⅰと判断された場合に広告可能な事項を説明します。広告群Ⅰは、これまでも医療広告の規制対象となっており、広告が可能な事項はかなり限定的です。

具体的には次の通りです。

  1. ① 医師又は歯科医師である旨
  2. ② 診療科名
  3. ③ 名称、電話番号、所在の場所を表示する事項、管理者の氏名
  4. ④ 診療日又は診療時間、予約による診療の実施の有無
  5. ⑤ 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院等(例:特定機能病院)
  6. ⑥ 地域医療連携推進法人の参加病院等である旨
  7. ⑦ 病院等における施設、設備に関する事項、従業者の人員配置
  8. ⑧ 医師等の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職及び略歴、厚生労働大臣が定めた医師等の専門性に関する資格名
  9. ⑨ 医療相談、医療安全、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置、病院等の管理又は運営に関する事項
  10. ⑩ 紹介可能な他の医療機関等の名称、共同で利用する施設又は医療機器等の
    他の医療機関との連携に関すること
  11. ⑪ ホームページアドレス、入院診療計画等の医療に関する情報提供に関する内容
  12. ⑫ 病院等において提供される医療の内容に関する事項
  13. ⑬ 手術、分娩件数、平均入院日数、平均患者数等、医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定める事項
  14. ⑭ その他①~⑬に準ずるものとして厚生労働大臣が定めるもの

3 広告可能な事項(広告群Ⅱの場合)

 次に、広告群Ⅱの場合の広告可能な事項を説明します。

3-1 広告群Ⅱの場合は範囲が広い

 広告群Ⅰと違い、広告群Ⅱの場合は広告できる事項が格段に広がります。自由診療についても基本的には広告群Ⅱの場合でしか、基本的に記載できないです。

3-2 一定の条件

 ただし、広告群Ⅱの場合は、費用であるとかリスク副作用を掲載するという条件があります。
 具体的には、次の通りです。

  1. ①問い合わせ先を記載していること
  2. ②医療に関する適切な選択に資する情報であること

 さらに、自由診療の場合には次の情報も掲載する必要があります。

  1. ①治療の内容
  2. ②治療の費用
  3. ③治療に係る主なリスク
  4. ④治療に係る副作用

4 まとめ

 このように、医療広告の規制における限定解除の考え方としては、まず広告媒体がどのようなものであるかを考えて整理することがわかりやすいです。そして、整理した広告群ごとに広告可能な事項を検討していって下さい。

 なお、広告群Ⅱの場合には自由診療について自由に記載できますが、無条件ではなく一律規制もあります。この一律規制については、次回に詳しく記載します。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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