休日出勤とは何か?(法定休日・法定外休日・割増賃金)

休日出勤とは何か? ~法定休日・割増賃金~

 以前ご紹介した残業代に関する記事では、所定労働時間を超えた労働時間について「残業代」が発生すると解説いたしました。
 今回は、いわゆる「休日出勤」の解説をしていきます。

1 休日とは?

 休日出勤をしますと、労働基準法により、割増賃金が発生します。
 では、休日出勤にいう「休日」とは何なのでしょうか。

1.1 休日・休暇の違いは?

 休日とは、もともと労働者の労働義務がない日をいいます。
 これに対し、本来は労働義務があるが、使用者によって労働義務を免除されている日を休暇といいます。
 休暇には、育児・介護休暇や、慶弔休暇などがあります。どのような休暇を設けるかは会社によって自由に決めることができます。

1.2 法定休日・法定外休日とは?

 労働基準法により割増賃金が発生するのは、法定休日における労働です(労働基準法36条1項、37条1項)。そして、法定休日とは、法律により、会社が労働者に労働をさせてはならない日(労働者の労働義務がもともとない日)をいいます(労働基準法35条1項)。

 一方、会社が週に二回以上休日を与えた場合、その休日のうち、一回は法定休日であり、それ以外の休日を法定外休日といいます。

 勘違いされている方が多い点ですが、割増賃金が発生する「休日出勤」の「休日」とは法定休日のことをいい、法定外休日に労働しても割増賃金は発生しません。
 多くの会社で支給されている休日出勤手当は、法定外休日での労働についても支給されていますが、これは、法律上の割増賃金ではないのです。

1.3 どの日が法定休日なの?

 週に二回以上休日を与えるエステサロンは、法定休日と法定外休日の両方を与えていることになります。
 労働基準法の改正に関する平成20年の厚生労働省の質疑応答によれば、「法定休日が特定されていない場合で、暦週(日~土)の日曜日及び土曜日の両方に労働した場合には、当該暦週において降順に位置する土曜日における労働が法定休日労働となる」とされています。
 また、一週間の始まりと終わりは、労働基準監督署の通達によれば、就業規則で定めていないかぎり、日曜日始まりの土曜日終わりとされます。(S63.1.1基発第1号)。
 つまり、土日休み(週休二日)のスタッフについては、就業規則で別の定めをしていないかぎり、土曜日が法定休日になってしまいます。

 ですが、裁判例では、大多数の会社が日曜日を法定休日としていることを重視して、就業規則上で明確な定めがなくとも、日曜日が法定休日であると判断することが多いです。
 どの日を法定休日と扱うかについて、労働基準監督署と裁判所とで考え方がわかれていますので、就業規則等であらかじめ法定休日を明確にしておくなど、対策しておくことが重要です。

2 休日出勤とは?

 休日出勤とは、法定休日に労働することをいいます。
 一方で、法定外休日に出勤した場合には、厳密には休日出勤とはいいません。

 スタッフが休日出勤をした場合、その労働時間については、35%の割増賃金が発生します(労働基準法37条1項、2項、割増率令参照)。

2.1 休日出勤の割増賃金をどうすれば抑えられる!?

 エステサロンは、スタッフが休日出勤をした場合には35%の割増賃金を支払う法律上の義務を負います。
 そのため、このような事態にならないように、振替休日制度を使うなど、スタッフの労務管理をしっかり行う必要があります。

2.2 振替休日制度とは?

 振替休日制度とは、休日に労働する代わりに、本来労働日とされている日を休日にすることをいいます。
 この振替休日の効果として、本来法定休日だった日曜日が所定労働日に変わり、平日の1日を休日に変えることができます。
 そうしますと、日曜日に労働しても、それはいわゆる休日出勤にはならず、35%の割増賃金を支払う必要はなくなります。

割増賃金を発生させない振替休日の例
合計
法定外
休日
法定休
8時間 8時間 8時間 8時間 8時間 40時間
8時間 法定休
8時間 8時間 振替休
8時間 8時間 40時間

 このように、同じ週の中で休日を振り替えれば、1週間40時間の制限を超えることはありません。
 スタッフ間のシフトの交代も、1週間40時間の制限を超えそうな場合には、1週間の範囲の中で行うとよいでしょう。

2.3 振替休日制度の注意点

 振替休日制度を使うには、就業規則で振替休日制度を使う旨をあらかじめ定めておく必要があります。
 また、休日を振り替えた後にも、週休1日のルールは守らなければなりません(労働基準法35条1項)。これに違反し、7日以上の連勤をさせると、うち1日は休日出勤として扱われますので、35%の割増賃金が発生してしまうので、注意が必要です。

 なお、振替休日と似ているものとして、代休があります。
 代休とは、事前に振替休日を定めることなく、休日に労働した代わりに事後に平日に休日を与えることをいいます。
 この代休を使う際に注意しなければならないのが、ここでいう休日の労働は、振替休日制度とは異なり、あくまで法定休日での労働であるため割増賃金は発生してしまうということです。代休を取得させたからさかのぼって法定休日に変わるものではありません。

3 まとめ

 以上、週休1日制が絶対条件であること、法定休日にスタッフに労働をさせると35%の割増賃金が発生すること、1週間の労働時間40時間の制限を超えると25%の割増賃金が発生することを解説いたしました。
 エステサロンの経営者の方も、スタッフの休日を振り替える際に連続勤務や超過勤務にならないように注意しなければなりません。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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