美容室、エステサロン、ネイルサロンの休憩時間が労働時間になる!?

エステサロンや美容室、ネイルサロンなどの美容業界では、朝から夜まで予約が続いている!急にお客様からご予約が入った!お客様から施術メニューに関する問い合わせの電話が入った!などの事態によって、スタッフの休憩時間がまばらになってしまうことも珍しくないかと思います。

お客様を第一に考えると、経営者の方としては、休憩時間を削ってでも臨機応変に対応してもらいたいところです。
そのため、お客様への対応を優先するがゆえに、スタッフの休憩時間はスタッフの自主性に委ねてしまっている経営者の方もいらっしゃることと思います。

ですが、経営者の方が労働時間の管理を任せっぱなしでいると、スタッフの休憩時間も労働している時間になってしまうおそれがあります。
「休憩時間」であれば給与は発生しませんが、これが「労働時間」となるとその分の追加の給与を支払うなど、サロン側に思いがけない問題が出てきてしまうのです。

今回は、美容室、エステサロン、ネイルサロンなどの美容経営者の方に向けて、具体的事例を出しつつ、法律のルールに則った労働時間や休憩時間の定め方、管理の方法について解説していきます。

1 労働時間・休憩時間とは?

労働時間とは「働いている時間」、休憩時間は「休んでいる時間」とのイメージが浮かぶと思います。
何を当たり前のこと言っているんだ、と思われるかもしれませんが、実は一般のイメージと法律上のルールが違っているところもあります。

まずは、法律のルールで決められている労働時間や休憩時間の正確な意味やその区別について見ていきましょう。

1-1 労働時間とは?

法律上のルールでは、労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれていると評価できる時間といわれています。

難しい表現となっていますが、要は、店長など店舗側の指示にしたがって働いている時間は、労働時間としてカウントされることになります。

なお、法律のルール上、従業員の労働時間には上限が設けられており、

  1. ・一般に従業員を1日8時間・週40時間を超えて労働させてはならない。
  2. ・特例として、常時使用する労働者が10人未満の商業・サービス業では、1日8時間・週44時間を超えて労働させてはならない。

とされています。

1-2 休憩時間とは?

次に、休憩時間とは、労働時間の途中でスタッフが仕事から離れることができる時間をいいます。

ここでのポイントは、休憩時間は仕事から完全に離れている必要があるので、スタッフには休憩時間を自由に利用させなければなりません。

なお、法律のルール上、

  1. ・労働時間が6時間を超える場合には、少なくとも45分
  2. ・労働時間が8時間を超える場合には、少なくとも60分

の休憩時間を与えなければならないとされています。

2 休憩時間でトラブルになりやすい事例

労働時間と休憩時間のルールを説明しましたので、次は、エステサロンや美容室など、具体的な場面でトラブルになりやすい事例を説明していきます。

2-1 休憩時間は毎日1時間としているが、実際は働かせている場合

私の法律事務所への相談でも、繁忙期などの時期は、経営者の方から1時間も休憩を取らせることがとても難しい、という話はよく聞きます。

スタッフも、朝からずっと予約が入っているときには、施術の合間に15分程度でさっとお昼を済ませていることもあるようです。
このような店舗の実態として、給与計算の時には1時間休憩を取ったことにしているところがあります。

休憩時間としつつも、実際にその時間は休ませずに働かせていた時間であったならば、それは当然に労働時間としてカウントされることになります。
スタッフから指摘があった場合には、すぐに対応しなければなりません。

2-2 休憩時間でもお客様からの電話や来客の対応をさせていた場合

お昼休憩の時間に従業員控室などで昼食を取らせつつ電話対応をさせる、これもトラブルとしてあり得る光景かなと思います。

ただ、先ほどあげたように、休憩時間は仕事から完全に離れている必要がありますので、このような場合、経営者の方が休憩時間と考えていても、労働時間とカウントされてしまう可能性があります。

電話連絡が頻繁にあるような店舗の場合は、トラブルになる可能性があるので、勤務体制を見直すことをおすすめします。

2-3 施術の合間の店舗内での待機時間

この点も、よく勘違いされていることが多いです。
労働時間とは実際に施術している時間であって、施術していない時間は休憩時間なんだと誤解される方もいます。

ただ、休憩時間は、仕事から完全に離れている必要がありますので、施術していない時間であっても、スタッフの自由時間でないならば労働時間とカウントされることになります。

2-4 予約のキャンセルが入った場合

お客様から突然のキャンセルや日程変更が行われた場合は、スタッフはその時間帯について空きが生じることになります。

このような時間に、スタッフに掃除やブログの更新など他の仕事を与えるのであれば、労働時間としてカウントすることになります。
それだけでなく、スタッフに仕事がない場合でも、店舗内で待機することが指示されているなど、仕事から完全に離れていないならば労働時間とカウントされることになります。

3 経営者はどのように対応するべき?

トラブルになりやすい事例を見ていただいたので、次は経営者側の対応策について説明していきます。

3-1 休憩時間が労働時間とカウントされる場合の不利益

まず、休憩時間が労働時間とカウントされた時間だけ、給与を追加で支払う必要が出てきます。
なお、1日の労働時間の合計が「法定労働時間」を超えていた場合には、超過分について25%の割増した賃金を支給することになります。

次に、スタッフとの間で何らかのトラブルが起きた場合にスタッフが労基署や労働組合に駆け込むことも考えられます。
この際、休憩時間を法律のルール上取らせていなかったり、その分の給与を支払っていない場合、法律違反の点を労基署や労働組合から改善指示を受けるなどがあり、それぞれ対応が必要になります。

なお、最近では大手のエステサロンに対して、労働組合が休憩時間を取らせるように交渉を行った事例もあったようです。

3-2 経営者側の対応策

このように、労働時間を適切に管理していないと経営者側にさまざまな不利益があります。
労働時間や休憩時間を、スタッフの働き方に合わせてしっかり管理することが重要です。

具体的には、タイムカードや勤怠管理ソフトを用いて、実態に合った勤務時間や休憩時間を記録することから始めましょう。

特に、休憩時間の開始時には、タイムカードに打刻するように指示するとともに、休憩時間にはお客様の対応を行わないよう明確に指示することが必要です。

また、勤務時間と休憩時間を明確にしたうえで、勤務時間であるスタッフが、お客様の対応を行えるよう、店舗の予約を受ける体制やシフト体制を見直すようにしてください。

4 まとめ

法律の定めに則った労働時間や休憩時間の定め方、管理の方法について解説してきました。
今回の記事のポイントは以下の2つです。

  1. ① スタッフが完全に自由な状態でない休憩時間は、労働時間とカウントされてしまう。
  2. ② 経営者は、労働時間や休憩時間を、スタッフの働き方に合わせてしっかり管理することが必要となる。

経営者の方々におかれましては、今回の記事を参考に、経営者の方とスタッフの双方の幸せのために、適切な労働時間の管理を行ってください。

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