他社製品との比較広告の規制と作成のポイント~【薬事広告対策】化粧品編⑧~

 化粧品業界においては、毎年新しい成分を使ったものや、効果が上がったものなど新製品がいくつも開発されています。これに対して、消費者の方も、CMや広告、SNS上の口コミなどの媒体を通して、新製品や売れ行き製品の情報を手に入れ、チェックしています。
 実際に競業他社より良い商品が開発できることになったら、それを消費者に対して広告でアピールしたいと思いがちです。ただ、このような公告方法は、「比較広告」と呼ばれ一定の制限があるので注意が必要です。

1 薬機法の規制

 まず、化粧品の広告を作るうえで一番注意しなければならない薬機法の解釈基準である医薬品等適正広告基準からみていきます。

1-1 医薬品等適正広告基準の定め

化粧品における比較広告については、次の通り規制されています。

【医薬品等適正広告基準】9 他社の製品のひぼう広告の制限
医薬品等の品質、効能効果等、安全性その他について、他社の製品をひぼうするような広告は行わないものとする。

このように、厳しいですが化粧品広告においては他社製品との比較広告は全面的に禁止されています。
 このサイトでも以前から説明していますが、化粧品広告においては効能効果や安全性を保証する表現は厳しく制限されています。これは、消費者に不確実な情報を与え誤解を生じさせないためであり、他社製品との比較広告も同じ考えから禁止されています。
 他社製品との比較広告は禁止されていますので、他社製品の商品名やブランド名などは無断で使用できないということは覚えておいて下さい。

1-2 禁止される他社製品との比較広告の記載例

 禁止される他社製品との比較広告の例としては、次のようなものになります

  1. ① 他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現する場合
    例: 「A社の口紅は流行おくれのものばかりである。」
  2. ② 他社のものの内容について事実を表現した場合
    例: 「B社の製品はまだ×××を配合しています。」
    例: 「一般の洗顔料では落としきれなかったメイクまで。」
  3. ③ 他社製品を暗示している場合
    例: 「大手化粧品会社のものより補修成分が優れたシャンプーです」

2 比較広告を作るときのポイント

 これまで見てきたように、他社製品との比較広告は禁止されていますが、比較広告自体が全面的に禁止されているわけではありません。認められている比較広告の方法を以下にポイントを上げて説明していきます。

2-1 自社製品の範囲内で行うこと

 他社製品との比較広告は禁止されていますが、裏を返せば自社製品の範囲内であれば比較広告は認められています。自社の従来品との比較広告は、自社製品の愛用者に対してだけでなく自社製品をこれまで使用したことのない消費者に対してもアピールできることになりますので、大手企業でもよく取り入れられている広告手法になります。

2-2 比較方法を適正なものにすること

 次に重要なポイントとしては、比較方法が適正であることになります。具体的には次の3つの事項になります。

  1. ①比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。
  2. ②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。
  3. ③比較の方法が公正であること。

 まず、当たり前の話ですが調査結果は事実しか記載できません。アンケートや成分調査については、しっかりと調査を行った上で客観的なデータしか広告には記載しないようにしましょう。

調査の方法については、自社で調査する場合には、その客観的な数値の実証について確立された方法がある場合に限られるべきです。どちらの商品がよいか、などと感想を聞く場合にはやはり第三者機関を使うことが望ましいです。

 また、よくありがちな例としては、数年前に行った調査なのに、あたかも最近行った調査かのように表示する場合などがあります。このような調査結果を表示することは適正な比較広告とは見なされませんので注意が必要です。

2-3 自社製品の比較広告の記載例

自社製品の比較広告を記載する場合、対象製品や調査方法を表示することが必要となってきます。
例えば、次のような記載になります。

「これまでの化粧水と比べ保湿力がアップ※。」
※当社従来品 ○○(商品名)と比較

 「これまでの化粧水と比べ保湿力がアップ」という表現だけですと、他社比較する表現とも解釈され違反と指摘されてしまう可能性があります。このため、注釈を入れて比較した対象製品を明示することが必要となってきます。

3 まとめ

 このように、化粧品広告においては他社製品との比較広告が禁止という厳しいルールとなっています。広告を作成していると、ついつい他社製品との比較を暗示してしまっている場合がよくありますので、十分注意して下さい。
 ただ、このような厳しい規制となっている理由としては、比較広告自体、消費者に対する訴求力が強いからともいえます。上で説明したポイントを押さえつつ認められている自社製品との比較広告を行い、適正に自社製品の魅力をアピールする広告作りをしていって下さい。

The following two tabs change content below.
弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

関連記事

運営者

ページ上部へ戻る