医師等の医薬関係者の推薦を広告に記載はできるのか ~【薬事広告対策】化粧品編④~

化粧品の広告を検討するとき、医師や公的な団体からのお墨付きをもらっていることや、推薦されたことを記載したくなることが多いかと思います。

ただ、このサイトでもこれまで説明してきましたとおり、化粧品の広告においては、効能効果の安全性について保証されたような表現に対しては厳しい制限があります。今回は、医師等の医薬関係者の推薦を広告に記載できるのか、について解説していきます。

 

1 医薬関係者等の推薦の制限

1.1 医薬品等適正広告基準の記載

まず、化粧品の広告を規制する薬機法(旧薬事法)の解釈基準である医薬品等適正広告基準には、次のとおりの記載があります。

【医薬品等適正広告基準 10 医薬関係者等の推せん】
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告は行わないものとする。(以下略)

一文が長いので読みにくいですが、分解すると次のとおりになります。

  1. ⅰ 主体:①医薬関係者、②理容師、③美容師、④病院、⑤診療所、⑥その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体
  2. ⅱ 禁止される行為:指定し、公認し、推薦し、指導し、又は選用している等の広告をすること

このように、医師や理容師、美容師などの国家資格者であったり、病院や学校などの団体が禁止の対象となっていることがわかります。
 また、禁止される行為も、指定だったり推薦などとしてます。

1.2 禁止される理由

これら医薬関係者などの推薦行為が一律に禁止される理由は、一般消費者に対して与える影響力が大きいからだとされています。
 このため、推薦されていることが事実であっても禁止されるのです。

なお、推薦の事実が虚偽だった場合には、虚偽広告として薬機法違反や景品表示の優良誤認となり罰則まであるので注意が必要です。

1.3 広告の具体例

具体的には、次のような記載が違反となります。

    【法律に違反する広告例】

  1. ・○○病院が推薦!
  2. ・○○医師も愛用しています。
  3. ・美容師の私からもおすすめです!

もし、どうしても医師等を登場させたい場合には次のような記載にすることが考えられます。

    【法律に違反しない広告例】

  1. ・医師が開発しました(事実であることが前提です)
  2. ・(医師のコメントで)私も○○会社は信頼できると思っています(商品自体は推薦していない)

 

2 白衣を着た人を登場させる場合

このように医薬関係者等の広告に関してはかなり厳しい制限があるのですが、白衣を着た人を登場させる場合はどうでしょうか。

2.1 化粧品等の適正広告ガイドライン

この点については、医薬品等適正広告基準には記載がないのですが、日本化粧品工業連合会が出している「化粧品等の適正広告ガイドライン」では、次のような記載となっています。

【化粧品等の適正広告ガイドライン】
医師等のスタイル(白衣等)の人が、化粧品等の広告中に登場すること自体は直ちに医薬関係者の推せんに該当するわけではないが、医師等のスタイルの人が製品の効能効果や安全性に関して、指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告表現は、その内容が事実であっても原則として行わないこと。

上記のガイドラインに記載しているように、白衣などを着た医師等のスタイルの人を広告で登場させること自体は禁止されていません。
 ですので、先ほど見たように医師等の共同開発に携わった人などを登場させて、その旨の表示をすること自体は問題ありません。

2.2 モデルやタレントの芸能人に白衣を着用させる場合

では、共同開発に携わったわけではなく、モデルやタレントを使う場合はどうでしょうか。
 さすがにここまでは、薬機法や医薬品等適正広告基準にも記載がありません。

ただ、あくまで私見ですが、モデルやタレントに白衣を着させることは、あくまで製品イメージを伝える目的かと思いますし、一般消費者に対して与える影響力が大きいとも言えないので一律に禁止されるものではないかと考えられます。

ただ、推薦行為と受け取られないためにも、推薦している事実などの記載は避ける方が無難といえます。

 

3 まとめ

以上の内容を簡単にまとめますと、医師や美容師、病院といった医薬関係者の広告推薦は、たとえ事実であってもNGということになります。

ただ、禁止の対象となるのは推薦行為ですので、医師などを広告に載せること自体が禁止されているわけではありません。推薦行為と受け取られない方法で事実を伝えることは問題ないので、白衣スタイルの人を使う場合には、表現に気を配りながら作成してください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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