化粧品広告で記載できる56の効能効果 ~【薬事広告対策】化粧品編③~

化粧品広告には、常に薬機法(旧薬事法)の問題が付きまといます。自社製品の素晴らしさを知っていればいるほど、消費者にそれを使ってもらいたい気持ちが強く、効能効果に関しても、ついつい過剰な表現となってしまいがちです。

消費者に対する訴求力と、薬機法の制限との狭間で頭を悩まされる方も多いかと思いますが、広告に「過剰な表現」を利用しないためには、当然ながら、まずは「薬機法で禁止されている表現」をしっかり理解することが一番重要です。

ということで今回は、化粧品広告において最も問題となる効能効果について解説していきます。

 

1 化粧品で表現できる効能効果

化粧品で表現できる効能効果については、薬機法の解釈基準である「医薬品等適正広告基準」や「通達」等によって厳しく制限されています。

化粧品で認められる効能効果は、以下の3つのみです。

  1. 【Ⅰ】通達で決められた56項目の範囲内の効能効果
  2. 【Ⅱ】メーキャップ効果
  3. 【Ⅲ】使用感

 まずは、この3つを頭に入れてください。具体的な説明は以下をご参照ください。

 

2 【Ⅰ】56項目の化粧品の効能の範囲

化粧品の広告に携わる方なら「56項目の化粧品の効能の範囲」の内容は、一度は耳にしたことがあるでしょう。
まずは、この「56項目」について、注意点も含めて説明させていただきます。

2.1 まずは基本の56項目の効能効果の解説

薬機法の解釈指針である医薬品等適正広告基準では、次のように定められています。

【基準3(3)承認を要しない化粧品についての効能効果の表現の範囲】
承認を要しない化粧品の効能効果についての表現は、昭和36年2月8日薬発第44号都道府県知事あて薬務局長通知「薬事法の施行について」記「第1」の「3」の「(3)」に定める範囲をこえないものとする。

 そして、薬務局長通知「薬事法の施行について」は、何回か更新され、現在は次の56項目とされています。

【基本的な56項目の効能効果】
種類 効能・効果
(1) 頭皮、毛髪を清浄にする。
(2) 香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3) 頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4) 毛髪にはり、こしを与える。
(5) 頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6) 頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7) 毛髪をしなやかにする。
(8) クシどおりをよくする。
(9) 毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
(19)肌を整える。
(20)肌のキメを整える。
(21)皮膚をすこやかに保つ。
(22)肌荒れを防ぐ。
(23)肌をひきしめる。
(24)皮膚にうるおいを与える。
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26)皮膚の柔軟性を保つ。
(27)皮膚を保護する。
(28)皮膚の乾燥を防ぐ。
(29)肌を柔らげる。
(30)肌にはりを与える。
(31)肌にツヤを与える。
(32)肌を滑らかにする。
(33)ひげを剃りやすくする。
(34)ひげそり後の肌を整える。
(35)あせもを防ぐ(打粉)。
(36)日やけを防ぐ。
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
(38)芳香を与える。
(39)爪を保護する。
(40)爪をすこやかに保つ。
(41)爪にうるおいを与える。
(42)口唇の荒れを防ぐ。
(43)口唇のキメを整える。
(44)口唇にうるおいを与える。
(45)口唇をすこやかにする。
(46)口唇を保護する。 口唇の乾燥を防ぐ。
(47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48)口唇を滑らかにする。
(49)ムシ歯を防ぐ(※)。
(50)歯を白くする(※)。
(51)歯垢を除去する(※)。
(52)口中を浄化する(歯みがき類)。
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(54)歯のやにを取る(※)。
(55)歯石の沈着を防ぐ(※)。
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。
1 例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。
2 「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。
3( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するものである。
4 ※は使用時にブラッシングを行う歯みがき類

引用:「化粧品の効能の範囲の改正について

なぜこの56項目に限定されるかというと、化粧品は、本来そのほとんどが「薬理作用によってその効能効果が認められたもの」ではないからです。
 薬理作用による効能効果を広告したい、効果を認めて欲しい場合には、「化粧品」ではなく、承認が必要な医薬部外品である「薬用化粧品」で申請しなければなりません

ちなみに、当然ではありますが、この56項目の中であれば何でも書いていいというわけではなく、事実に基づいていることが前提です。

この表は、化粧品公告を行う際の基本となる表現ですので、疑問に思った際には常に立ち戻ってみて下さい。

2.2 (注意点1)しばり表現に注意

しばり表現とは、「承認された効能効果に一定の条件が付いているもの」のことです。
これに該当するものは、条件であるしばり表現を省略してはならず、条件も含めて正確に記載しなければなりません。

 上の56項目においては、

  1. (37)日焼けによるしみ、そばかすを防ぐ
  2. (56)乾燥による小ジワを目立たなくする

が、しばり表現の典型例です。

 もし、(37)「しみ、そばかすを防ぐ」という効能効果を表現する場合には、「日焼けによる」と明記しなければなりません。同様に、(56)「小ジワを目立たなくする」という効能効果を表現する場合には、「乾燥による」と明記する必要があります。

この「しばり表現」については、しばり部分を明記しなければ薬事広告として違反となります。また、フォントサイズを小さくするなどの小細工も禁止されており、「効能効果」の表現と同じ大きさや色で記載しなければなりません。

小ジワについては、よく「“年齢による”小ジワを目立たなくする」と広告しても大丈夫かと質問されることもしばしばですが、この表現は、前述56項目の1つである「小ジワを目立たなくする」と書いてあるので、確かに効能効果の点は問題ありません。しかし、しばり表現である「乾燥による」が抜けているため、薬事広告としては違反となります。

「しばり表現」とは薬事広告における専門用語で、よく出てくるので覚えておいて下さい。

2.3 (注意点2)乾燥による小ジワについて

「乾燥による小ジワ」の表現は、平成23年に追加で認められた効能効果の表現です(ですので、効能効果の表の最後(56)に記載されています)。
 この「乾燥による小ジワ」は、しばり表現であることに加えて、適切な試験を行い、効果を確認することが求められています。具体的には、日本香粧品学会の「化粧品機能評価法ガイドライン」の「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験、又はそれと同等以上の適切な試験です。

2.4 (注意点3)体験談でもアウト

私が弁護士として企業様からご相談を受ける際、「体験談だから効能効果を書いても大丈夫でしょう?」という質問を多くいただきます。
 しかし、体験談であっても、56項目に書かれていない効能効果の表現は禁止されていますので、皆さまも十分にご配慮ください。

それだけではなく、体験談の場合、効能効果が確実であるかの誤解を与えやすいという理由で、たとえ56項目の範囲に認められた効能効果の範囲内であっても(もちろんそれが事実であっても)、表現できませんので注意して下さい。

2.5 (注意点4)2品目に渡る製品の場合

「オールインワン化粧水」のように、作用が異なる成分を配合して1つの化粧品として製造された化粧品には、独自のルールが存在します。

このような化粧品の場合、

  1. ①使用箇所(部位)が同じで 
  2. ②用法が大きくかけ離れているもの

 
であれば、その広告の中でそれぞれの効能効果を併記できるとされています。

 

3 【Ⅱ】メーキャップ効果

化粧品広告で認められる表現として、メーキャップ効果もその一つです。

メーキャップ効果とは、色彩により、覆う、隠す、見えにくくする等の物理的効果のことをいいます。
 例えば、

  1. 「化粧くずれを防ぐ」
  2. 「小じわを目立たなくみせる」
  3. 「みずみずしい肌に見せる」

などのメーキャップ効果により肌を白くみせるたり、「エイジングケア」を表現する場合です。

これらのメーキャップ効果は、事実の範囲内であれば、広告することが可能です。
仮に、前述の56項目に認められていない効能効果を表現したい場合には、このメーキャップ効果をどのように工夫するかが重要となり、広告担当者の腕の見せ所です。

 

4 【Ⅲ】使用感

使用感も、化粧品広告で認められる表現です。

 例えば、

  1. 「清涼感を与える」
  2. 「爽快にする」

等の表示のことをいいます。

 使用感を利用して広告することは、事実に反しない限り認められます。

ただし、この【Ⅰ】効能効果と【Ⅲ】使用感との区別は曖昧で、広告担当者は「使用感」として利用していても、強い表現の場合には「効能効果」の表現と捉えられる場合があるので、十分な注意と判断が必要です

 

5 違反した場合の制裁について

最後に違反した場合の制裁について、解説していきます。

広告が薬機法違反であった場合、行政の薬務課などの調査、指導が入ることがあります。行政からの指導が入った場合には、製品の出荷停止や再発防止策など速やかに対応しなければなりません。
なお、地方自治体によっては指導の事実を公表される場合もあり得ますので、「行政からの指導が入ったら直せばよい」という考えにはリスクがあると言えるでしょう。

また、違反の程度が悪質と判断されると刑事処分が科される可能性もあり、この場合には、会社の社長が逮捕される事案にまで発展する可能性が考えられます。

【機法85条4号、5号】
2年以下の懲役又は200万円以下の罰金、もしくはその双方が課せられる

過去の事例としては、化粧品ではないですが、がんに効果があるなどと謳った飲料水を販売していた業者が摘発された県があります。さらに、この事例では、会社社長が逮捕されています。

効能効果は、特に「化粧品広告」において取り締まりがなされている分野です。
さすがに逮捕される事例は多いわけではありませんが、行政からの指導を受けてしまうと会社の信用問題に発展し、経営リスクに直結してしまいますので、注意が必要です。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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