広告するには根拠が必要! ~不実証広告規制~

「1回の施術でウエストマイナス7センチ」、「痩身効果抜群」、「防菌効果」。広告表現においては、このように商品やサービスの効果を強調して、是非ともお客様に商品購入やサービス提供を受けてもらいたいものです。

しかし、皆さんもご存じのとおり、広告を規制する景品表示法では、実際のものよりも著しく優良であると表示する広告を不当表示(優良誤認)として禁止しています。では、実際にこれまで優良誤認として違反広告と摘発されるのはどのような場合なのでしょうか。

よく、広告で効果を謳う場合には根拠が必要といわれています。本記事では、広告をする際の根拠がなぜ必要なのか、その考え方と実際の注意点について説明していきます。

 

 
 

1 不実証広告規制とは

不当表示であるかどうかを行政(消費者庁)が判断するためには、専門機関による調査等で時間がかかります。このため、法律は広告の事業者に対して表示の裏付けとなる資料を提出するよう求めることができるとしており、その資料が十分でないときは不当表示と判断されてしまうのです。

(景品表示法7条2項)
内閣総理大臣は、前項の規定による命令に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

このように、広告を行うときには表示を裏付ける根拠を持っていないと不当表示とされてしまうおそれがあるのです。これを「不実証広告規制」といいます。

不当表示と公表されている事例は、たいていこの不実証広告規制により摘発されています。このため皆さんも注意が必要です。

 

2 どういった場合に合理的な根拠が必要か

それでは、どのような表示をする場合に合理的な根拠が必要とされているのでしょうか。

消費者庁では、公表しているガイドラインで次のような表示を例として挙げています。

2-1 表示例

以下のように、痩身効果や、身体に対する改善効果を表示する場合には合理的な根拠が必要な場合に該当します。特に効能効果として、具体的な数字を出すと消費者に対する広告としての訴求力が高くなるので、その分根拠の必要性が高くなります。

  1. (痩身効果を標ぼうする美容サービス)
    「81㎏の体重をダイエットで66㎏まで減量。しかし、それ以上は何をしても無理だったという…そんな彼女も○○での58日間でなんと10㎏の減量に成功。3度の食事を欠かさずにこの変化」
  1. (茶)
    「4.5㎏~10㎏減量がラクラク!!!」「食前に○○茶を飲む。すると、その11種類の天然植物の成分が後から入ってくる食物中の脂肪分が体に取り込まれないように胃に薄い保護膜を作る。」
  1. (化粧品)
    「ニキビ等どんな肌のトラブルも、リンゴの皮をむくようにスルリと優しくムキ取ります。」「3週間後には顔中にあったニキビが全部ムキ取れて消滅し、今ではすっきりスベスベ肌!」

2-2 抽象的な表示の場合には

例えば、

  1. 「開運」「金運」等の神秘的内容
  2. 「気分爽快」「スッキリ」等の主観的内容
  3. 特に痩せるという表現はしないが「健康になる」等抽象的内容

の場合はどうでしょうか。

実は、消費者庁はこのような表示であったとしても、一般消費者にとっては当該商品・サービス選択に際しての重要な判断基準となっていて、具体的な効能効果が暗示されている場合もあるから、合理的な根拠が必要な場合もあるとしています。

最近の事例でも

  1. 「ボンヤリ・にごった感じに!!」と記載
  2. 「ようやく出会えたクリアでスッキリ!!」と記載

と表示した健康食品の広告に対して、この不実証広告規制を用いて消費者庁が措置命令を認めた事例があります。

 

3 合理的な根拠の判断基準

それでは、次に合理的な根拠の判断基準を見ていきましょう。

合理的な根拠の資料提出を求められた場合には、提出する資料が次の2つの要件を満たす必要があります。

  1. ➀提出資料が客観的に実証された内容のものであること。
  2. ➁表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。

3-1 ①提出資料が客観的に実証された内容のものであること

提出資料は、表示された具体的な効果、性能が客観的な事実であることを説明できるものでなければなりません。

具体的には、

  1. ・試験、調査によって得られた結果
  2. ・専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

が必要とされています。試験・調査の方法は、その業界で一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法により実施する必要があります。

特に注意したいのが調査方法として、消費者の体験談やモニターの意見を利用する場合です。この場合、統計的に客観性が十分に確保されている必要があります。自社の従業員や家族であったり、積極的に体験談を送付してくる利用者は、統計的に客観性が確保されているとはみなされません。無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなどの注意が必要です。

また、専門家等による見解又は学術文献を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合は、当該専門分野において一般的に認められている必要があります。このため、医学的効果として医師の意見をもらったとしても、医学的に一般的には認められていない見解は、客観的に実証されたものとは認められません。

3-2 ②表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

提出資料は、上で説明した客観的に実証された内容のものであることに加え、表示された効果、性能が提出資料によって実証された内容と適切に対応していなければなりません。

例えば、痩身効果をうたう場合に、ラットを用いた動物実験のデータは人とは条件が異なるため、合理的な根拠とは認められません。

3-3 販売事業者様の対応策

上で説明した合理的な根拠は、自社で製品を作る製造業者であるならば対応方法もありますが、販売事業者様にとっては費用面等困難です。製造業者から、商品の効能効果について資料提出を受けて、そのまま広告に記載している場合も少なくないかと思います。

合理的な根拠は必ずしも自社で作成する必要はなく、製造業者はたいてい効能効果の根拠となる資料を持っていることが多いです。ですので、販売事業者様は、基本的には製造業者からの情報を基に確認すれば足りることになります。

ただ、製造業者の資料等で今までに聞いたことがない効果が得られるなど、効果に怪しい点がある場合には注意が必要です。このような場合には、製造業者からさらに裏付けとなる根拠資料の提出を求め、場合によってはその効果の表示は諦めたり、当面は差し控えるという対応も考えなければなりません。

 

4 痩身効果(ダイエット)の表示について

ダイエット食品、健康食品、エステティックサロンの痩身サービス、フィットネスクラブの特別コースなど、痩身効果・ダイエットをうたう商品・サービスは多数存在します。美容関連の事業者様も痩身効果がある商品・サービスを持っている方は多いと思いますので、特に注意してもらいたいです。

4-1 痩身(ダイエット)の医学的な考え

ダイエットとは、医学的には、

  1. ・摂取するカロリーを少なくする
  2. ・運動を行うことにより消費カロリーを増やす

ことでしか効果は出ないといわれています。

確かに、人によって効果は様々であり、ある健康食品を食べたことによって体重が落ちる方はいらっしゃると思います。ただ、そのような効果が世の中の人全員に当てはまるわけではないので、消費者庁など広告を取り締まる側としては、上記考えを基に不当表示を判断していくことになります。

このため、特段の食事制限や運動を行うことなく、痩身・ダイエット効果が得られることを広告で表示することは、認められないと考えてください。

4-2 具体例

以下の表示は、特段の食事制限や運動を行うことなく、痩身・ダイエット効果が得られる表示であるので不当表示と判断されることになります。

  1. (健康食品の例)
    「このサプリメントを摂取すれば、胃に粘膜が張るので、食べた物の脂肪分の吸収を抑えることができます。つまり、これまでどおり気にせず食事をしながらダイエットが可能です。」
  1. (エステの例)
    「当サロンのサービスでは、体の脂肪分を排出することができ、無理なく痩身効果が得られます」

4-3 対応策

消費者庁は、特段の食事制限や運動を行うことなく、痩身・ダイエット効果が得られる表示を問題としています。このため、痩身効果をうたう場合には、食事制限や運動など生活習慣の改善も必要との表記が必要です。

例えば、以下のような表記が対応策の一例です。

  1. (健康食品の例)
    このサプリは、脂肪燃焼を助ける効果があります。バランスよい食事や適切な運動とともにサプリを飲んでもらうと理想的なやせボディが手に入ります
  1. (エステの例)
    エステの効果を実感していただくためには、食事・運動などの当サロンのアドバイスを基に生活習慣を改善する事が必要です。
The following two tabs change content below.
弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

関連記事

運営者

ページ上部へ戻る