しわ対策の化粧品広告!表現可能な効能効果は乾燥による小じわだけ!? ~【薬事広告対策】化粧品編⑪~

 「しわ対策」や「抗しわ効果」の化粧品は、日本に限らず世界的に女性のニーズが高いです。
 ニーズが高いのは昔からですが、最近でも、一般化粧品で「しわ対策」の効能効果が認められたり、薬用化粧品でも新たな効能が承認されたりと行政や企業も着目し続けていることがわかります。

 これら「しわ対策」ですが、化粧品広告で謳う場合には、かなり厳しいルールとなっています。
行政による指導も多いので、「しわ対策」における薬事広告のルールを疎かにしていると、思わぬところでつまずく要因になりかねません。今回は、「しわ対策」で覚えておきたい表現とその注意点について解説していきます。

1 しわ対策表現のルール

  「しわ対策」には、一般化粧品の場合、薬用化粧品の場合、メーキャップ化粧品の場合でそれぞれ基準が異なりますので、商品別に解説していきます。なお、一般化粧品、薬用化粧品、メーキャップ化粧品の違いに関する記事は、こちらです。

1-1 一般化粧品の場合

 まず、「しわ対策」の広告表現については、加齢によるしわ等を含めて、全てのしわに効果があるものと表現はできません。広告可能なのは、化粧品広告で、薬機法上認められた56項目の効能効果で認められた範囲内に限られます。
 56項目の効能効果では次のような記載となっています。

 (56)乾燥による小ジワを目立たなくする。

つまり、

一般化粧品で認められているしわ対策の効能効果は「乾燥による小ジワ」だけ。

これは是非とも覚えておいてください。「乾燥による小ジワ」とは、つまりは保湿効果しか謳うことができず、しわの改善や予防などの効能効果は表現できないことになっています。

 なお、この「乾燥による小ジワを目立たなくする」との表現は、平成23年に新たに追加されたものです。これ以降、現時点では新たに追加された効能効果はないため、数字も(56)となっているのです。

この効能効果を謳う場合、次の要件を守る必要があります。

  1. ①「乾燥による小ジワ」の表現であること
  2. ②適切な試験を行ったものであること

 ①「乾燥による小ジワ」の表現とは、しばり表現となっています。単に「小ジワ」と表記するのは薬事広告として違反となります。「乾燥による」の部分もフォントサイズを小さくするなどの小細工も禁止されており、「効能効果」の表現と同じ大きさや色で記載しなければなりません。

 ②また、「乾燥による小ジワ」の表現する場合、適切な試験を行い、効果を確認することが求められています。具体的には、日本香粧品学会の「化粧品機能評価法ガイドライン」の「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験、又はそれと同等以上の適切な試験となります。

1-2 薬用化粧品の場合

 薬用化粧品の場合には、医薬部外品として個別承認を取得した効能については、承認された効能の範囲でシワに関する表現ができます。

 なお、余談ですが、最近、大手化粧品会社では、「しわの改善」で承認を取ったとして、大々的に広告していますね。「深いしわまで改善する」とは、強いキャッチコピーで、消費者に対する訴求力も強そうです。

1-3 メーキャップ化粧品の場合

 メーキャップ化粧品の場合には、56の効能効果の範囲に関わらず、メーキャップによる効果として事実に反しない限り認められています。このため、メーキャップ効果を表示しながら、「しわ対策」の表現をすることもOKとされています。

2 認めれる表現例

 それでは、次に認められる表現を具体的に見ていきたいと思います。先ほどの粧工連の化粧品等適正広告ガイドラインでは、次のような表現であったら認められるとされています。

2-1 一般化粧品の場合

    ◯認められる表現

  1. ・皮膚の乾燥を防いで小ジワを目立たなくします
  2. ・うるおい効果が小ジワを目立たなくします
  3. ・キメを整えて乾燥による小ジワを目立たなくします

これらの表現は、「乾燥による小ジワ」としっかりしばり表現も入れています。また「肌にうるおいを与える」ことも説明しているので、しっかり56の効能効果の範囲内で認められた表現を使っているので、OKな「しわ対策」の広告となります。

2-2 薬用化粧品の場合

 薬用化粧品の場合には、上で説明した通り、承認された範囲内で記載する必要があります。
例えば、化粧水や日焼け止め剤において、

    ◯認められる表現

  1. ・日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。
  2. ・メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ。

のような効果も広告として認められます。

2-3 メーキャップ効果の表現

    ◯認められる表現

  1. ・しわによる年齢のサインを見えにくくします。
  2. ・みずみずしい肌に見せる

 メーキャップ効果とは、色彩により、覆う、隠す、見えにくくする等の物理的効果をいいます。しわについて「見えにくくする」というメーキャップ効果の範囲をしっかり守っているのでOKな「しわ対策」の広告となります。

2-4 「しわ対策」の置き換え表現

    ◯認められる表現

  1. ・ハリのある毎日に導く
  2. ・ツヤめきハリのある日々に
  3. ・目尻が気になる方へ
  4. ・見た目年齢マイナス5歳へ

 しわ対策の表現はこれまで見てきたように、一般化粧品であっても薬用化粧品であっても条件付けが多く、表現の範囲がかなり狭められています。これらは、「しわ対策」と同じような印象を与える置き換え表現ですので、ご参考にしてください。

3 認められない表現例

 これまでは、認められる表現を見てきましたが、次に認められない表現、つまり薬機法違反となりうる表現を見ていきます。しわ対策の広告については、以前から厚労省の指導が多数出ており、通達も出ています。下では、厚労省からの通達(しわ取り効果を標榜する化粧品の広告等の注意点(厚生省 62.11.25))で注意的に記載されている表現をいくつか抜粋して説明します。

3-1 しわを解消・予防する効果

    ◯認められない表現

  1. ・小ジワ、タルミの悩みを解消、撃退!
  2. ・肌につけるだけ。しっとりしたシワのない若々しい素肌が再びあなたのものに。シワの解消には1日1回。
  3. ・小ジワを消したいというあなたに
  4. ・シワの予防に用いられる○○○配合
  5. ・小ジワを防いで、美しい素肌作りに

 これらは、まず「乾燥による」という表現が抜け落ちてしまっており、あたかもしわの予防・改善ができるかのような印象を与えてしまっています。
 一般化粧品で認められているしわ対策の効能効果は「乾燥による小ジワ」だけ。くどいようですが、この要件はしっかり守るようにしてください。

3-2 素肌の若返り効果、老化防止効果

    ◯認められない表現

  1. ・若返ります。あなたの素肌
  2. ・夢の若返りクリーム
  3. ・若々しい素肌がよみがえる。
  4. ・お肌の老化やトラブルで悩む女性に

 これも肌が若返るとして、「乾燥による小ジワ」の効果を逸脱してしまっていますので、認められない表現となります。

3-3  メーキャップ効果

    ◯認められない表現

  1. ・実感これ1本で小ジワが隠れる。
  2. ・気になる小ジワを6~8時間隠す○○○が発売され、大評判
  3. ・ほんの少しの使用で若々しい目もとをお約束します。

 メーキャップ効果であっても、シワが完全に隠れることを保証する表現はNGとなります。「見えにくくする」、「目立たなくする」などの表現で置き換える必要があります。

4 まとめ

 このように、「しわ対策」の表現は、一般化粧品、薬用化粧品、メーキャップ化粧品でそれぞれ特性があります。「しわ対策」を謳う化粧品は、消費者からのニーズが高いところでもありますが、その反面行政も違反広告がないか特に注視している表現です。
 消費者に自社の商品情報を伝えることができるよう、違反広告をしっかり理解したうえで適切な広告を作っていってください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士茨木 拓矢
美容事業を経営されている事業者様は、薬機法(旧薬事法)や景品表示法規制など経営に絡んだ多くの法的課題を抱えています。これらの問題に対して、経営者目線でお客様とのチームワークを構築しながら、法的問題点を抽出し、最善の解決策を共に見つけ、ご提示致します。

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